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将棊誥手書

 これは、福田稔氏が神田の古書店で入手された詰将棋百番本で、『将棊誥手書』と記されている。 作者は「紀州九度山 観音寺寛道」とある(棊は棋の異体文字、誥は詰と同義でツメと発音する)。 本作品集は「詰棋めいと」第9号(平成元年7月30日発行)で福田稔氏より発表された。

 古今先生の誥手書を見るになにがしの囲いを破る事なれば手に持駒多くその後誥手となるここに我今作るにいたる。 最早乱切たる事なれば手駒さらに少なし。ただ我術をもって駒を逆さに〆誥の手立てこれなしといえども手をこしらえるは考文なりと心得るべし。

誥手百番のうち逃れ手拾八番あり。また口伝なり。

ときに明治二巳己年 ここに作るにたる者なり

紀州九度山 観音寺寛道

傳に曰く六百六拾一手先生の作あり
我また 六百六十三作るなり 第百番誥手なり

 さて世に将棊誥手のいちじるしく多しといえどもこれまた名人先生の作にて妙をあらわすこと限りなし
ここに我九牛が一毛に及ぼす役に候えども愚意もって是をかんがえる。ただ方立を構えず我流手を作することなれば争てかその場限りのかざり駒いたりて理少にして勿論味方の持駒少なし。 不用成駒は用いずただ誥手逃れ手の争いのみかんがえ工夫をめぐらし取りちがい手第一としてその場のはたらきにて誥手になる。また合の仕方にて逃方数多し、これを撰び出し今新たに百番誥手といたす。 ただ誤りは数多くあることなれば、ここもって誥手逃れ手といたる復の慰にもあらん。


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