La Creazione


あんたは知らないのか
まだ地表が冷えて固まらずに
火の玉みたいに燃えていた頃のことを
記憶もない
肉体もない
存在だって
あるかないかわからないぐらい 何ものかに融けていたよ


それでもどこかに
あんたを感じている
熱く脈打つような波が来る
誰かがどこかで泣いている
躯の底から疼いて震え
もがくように腕を伸ばす
寄せては返す波に融けて包み込まれて
そのまま消えてしまってもいい
あんたの中に 融けるのなら
欲しがるものは 全部あげよう
もしも俺の中に あんたの望む何かがあるのなら


瞼の裏で 地表が燃える
海が煙を吐いている
太陽は他人のように遠く霞んで
夜毎に切って落とされる
終わりの始まり
かつて知っていたはずの創造を
あんたはもう 思い出すこともできないのか


記憶のない頃から 傍に
形のない意識のうちから寄り添っていたよ
忘れちゃ嫌だ…
ずっと傍にいる


記憶の底に 燃える海を抱いて
今夜も
あんたの知らないあんたが
どこかで泣いている




(2002.11.17up)

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