ゲンズブールの全キャリアを網羅した九枚組がかなり昔出たが、それもやがてバラで売られるようになった。
そしてこれはそのアンソロジーの一枚目であり、当然のことながらゲンズブールの最初期の録音が収められている。
 バルバラのアルバムを紹介したときにも、述べたように、どうもフランスのポップ・ミュージックには、手放しでほめることができるものが少ないように思えるが、僕にとってのゲンズブールとはそのギリギリの線に立っているきわめて微妙な位置にいるミュージシャンである。
 実際このアルバムに収められた楽曲はどれもどこかB級の匂いがする・・・・例えて言うなら、『シャボンダマ・ホリデー』で安っぽいセットをバックに坂本九がアロハ・シャツを着て歌う曲(もちろん画面は白黒である)のフランス語版という趣。
 しかし、後にロックやレゲエをも自らに取り込む雑食性はここでも如実に現れていることに注目せねばならない。ラテンやマンボを自分流にきわめて胡散臭くパクってみせて、それを一つの芸に仕立て上げるのは、この人ならではだろう。
 そうした雑食性の反面、この人のあまりにもの強烈な個性がゆえに、かえってどこか一本調子になりがちなところもあるが、しばらく聞き込んでいくうちに、そこがこの人の魅力として映ってくるのだから、本当に一筋縄ではいかない。
 何とはなしに買ったこのアルバムで、久しぶりにゲンスブールの世界に触れることになったが、この人もある意味ルースターズの大江慎也と同じように、勝れて実存の人だったんだなとふと思い当たった。
         (2001年5月13日)