本当は、アマゾンのレビューにアップしようかと思ったのだけれど、どうやら廃盤のようなので、こちらに書くことに。
確かこのCD、かつてピーター・バラカン氏が新潮文庫から出ていたソウル・ミュージックへのガイドブック『魂(ソウル)のゆくえ』で、ソウル・ミュージックの入門用CDとして挙げていたような気がする。
個人的な事情を明かせば、このCDを購入した89年当時、正直言ってここに収められた楽曲の良さをちゃんと理解することができなかった。本当に恥ずかしい。が、それから十数年を経た今になって、上に挙げたピーター・バラカン氏の真意が百パーセント理解できる。
廃盤になっているものをお薦めしたところで、何の意味も無いのは百も承知だけれど、今から古いソウルやブルース、R&Bなんかを聞いてみ たいと思っている人は、ぜひこのCDを聞いて欲しい。本当に手に入れたいと思えば、ネットでこのCDを持っている人を捜して、CD−Rで焼いてもらうこと だってできるはず。それくらいしてもおつりが出るくらいにこのアルバムがもたらす意味は大きい。
おそらくビートルズやストーンズその他ブリティッシュ・ビート系の音楽になじんできた人にとって、そこから彼らがカバーした曲のオリジナルを聞くのは、一つの試練になると思う。
はっきり言って、今の耳で聞くと、オリジナルのほうがかなりもったりして、野暮ったく聞こえてくるのだ。そしてご多分にもれず僕もそうだった。し かし、このアルバムを聞き込むにつれ、その認識がやがて覆される。このアルバムに収められている楽曲──その多くが確かに泥臭く、もったりして野暮ったく 聞こえる──の全てにある、音と音の絶妙な隙間に、何とも言えない魅力を覚えるようになる(仮に、そこに魅力を覚えないならば、あなたは黒人音楽とは縁の 無い人かもしれない)。
特にすごいのが、チャック・ベリー、ボ・ディドリー、マディー・ウオーターズなどのチェス系の人達。彼らがおりなす強靭なリズムには唸らされるものがある。
比較的軽いと思われるチャック・ベリーにしたって、よくよく聞いてみると、非常に骨太だ。ビートルズが四人の演奏で出していたグルーブを、チャッ ク・ベリーは自分のギターとボーカルで出していたとさえ思われる。ジョン・レノンが彼を自分にとっての神だと言った意味が今になって理解できる気がする。
後、個人的に一番好きなのはボブ&アールの「ハーレム・シャッフル」か。今ちまたにあふれる凡百のクズみたいな楽曲が束になってもかなわないほど のグルーブと格好良さ。おそらくこの曲と同レベルの何百という曲が、当時は毎日のようにレコード屋の店頭に並び、ラジオでもガンガンかかっていたのではな いだろうか?そう考えると今のこの惨憺たる状況といったら・・・