ずきんの「極私的『another sky』」
 遅くなり(なり過ぎ)ましたが、っつーか今更感すら漂う”ザースカ”感想文ですがやっぱり書かないと気が済まないので。
 
 このアルバムのイメージを一言で表すなら、”キレイ”だなと。透明でとても澄んでいて純粋でほんの少し冷たくて。そんな凛とした空気をこのアルバムは纏っているようなそんな気がします。
 Hereと同じ座標の上にあるのかな?Hereが、”ここ”ならそこから見上げた空が、”日常”をイメージするならほんの少しいつもと違う景色、それこそ映画の中の風景、それがこのanother skyの世界のように思います。
 
 とにかく初めっからラストまで聴きどころ満載の素晴らしいアルバムです。前作Circulatorで画期的とも言える変化を見せその後の活動においてもこれまでにない前向きさが見られ、『これはバイン、いよいよ熱血ド真ん中ロックンロール街道を進み出すのか!?』と思いきやのまたまたのこの路線変更には当初は違和感も無くはなかったのですが。
 今になってみればどっちかというとCirculatorが異端で逆にザースカが本来の路線??むしろこれこそが一番初めにバインに求めていたものなのかもしれません。うん、ザースカは私にとって間違いなく現時点での最高傑作です。
 
 以下いくつかの曲についての感想(全曲じゃなくてゴメンね)。
 
■マリーのサウンドトラック
 こういう世界観の曲すっげー好きですね。得体の知れない世界に有無を言わさず巻き込まれていくような。”壁の星”と対を成すところがありますね。あっちが混沌としたカオス的世界ならこっちは神聖な不可侵の”聖域”。踏み込んではいけない世界に導かれるようなそんなイメージ。another skyという物語のまさに序章。何ともドラマチックです。
 
■マダカレークッテナイデショー
 初めの内は今一つピンと来なかったんですよね。それがずっと聴いてる内にある日突然、『え、ちょっとこれこの曲、めちゃめちゃエエやん!』とゾクゾクゾクっっと来まして。間奏のとこの「♪チャイルド」に被せて駆け上がってくるギターのスケールがもう鳥肌モノ。2コーラス目のAメロの裏でこっそり鳴ってるトリッキーなギターもポイント高いです。そういえば西川さんってこういうファンキー系のフレーズってあんま弾かないですよね。守備範囲外なのかな。
 
■Colors
 素晴らしいっ!!!(> <) 甘美でロマンチックで官能的。”未成年”っつーモチーフが秀逸ですよね。未成年。嗚呼何という魅惑的な響き!(・・・)。そして何が凄いってこういう曲をギターロックバンドで成立させてしまえるってところですよ。バイン恐るべし。
 
■Tinydogs
 イントロ&Aメロが絶品。冷気漂う枯木立を縫って高速で駆け抜けるイメージ。スリリング!それに比べてサビがどうもに安っぽい気がするんですよねー。そこだけが勿体ない。サビで「〜ればいい、〜もいい」と歌っておいて「イライラするぜ」とバッサリ容赦なく切り落としてくる冷徹さが堪らん。
 
■Let me in〜おれがおれが〜
 でそのTiny〜のアウトロからこのイントロへの流れ。うっわヤベー、バリかっちょエエ・・・。鳥肌立ちました。曲自体も今までになく攻撃性全開で。いや、攻撃属性の曲はこれまでもあったけど、どっちかって言うとクールに突き放す感じのが多かったので、こういう真正面から力技で突っ込んでいくのって新鮮。
 
■ナツノヒカリ
 曲そのものについてってのはもう散々語り倒してきましたので割愛します。ここで言いたいのは、この曲がアルバムのこの位置にあるのが納得いかないんですよ(泣)。Tiny〜・おれがおれがと来たらその勢いでSundownに突っ込んで欲しかった。う〜ん、ちょっと悔しい。
 
■Sundown and hightide
 歌詞ももちろんその一因なのですが、とにかく曲全体から滲み出てくる”色香”みたいなものに撃沈。オカズも少なめにひたすらクールにビートを刻むドラム、ベースもまた然り。ストイックな中にも仄暗い熱情を帯びた西川ギター、何気にサディスティックな詞、もう何から何までがかっちょ良過ぎます。シビれます。
 
■アナザーワールド
 まさにバインの真骨頂。手加減無し全開亀井節にスライドギター、生ピ、そしてこの歌詞!ここまで手加減無しの直球ど真ん中な曲があったでしょうか!?(泣)。久々に素で泣けました。私この曲聴いた時「バインはこのアルバムで終わってもおかしくない」って思ったんですよ。全て出し尽くした感じ、集大成感をすごい感じるんですよね・・・。
 
■ふたり
 でアナザーワールドで切なムードをグググッと高めておいてのこの曲。―― 何ていい曲なんだー(TДT) 何て言うんだろう、優しくて、でもちょっと切なくて、そして懐かしい。泣いた後にあったかいお茶飲んだり甘い物食べたりしたら落ち着きません?ちょうどそんな感じ。沁みるなぁ・・・。
 
 細かいポイントはもっといっぱいあるんですけどね。ドラムの音がすごいイイ感じだとか(前のドラムの音ってあんま好きじゃなかったんだ。スネアとかシンバルの音がすごい耳障りだったんだよね・・・)根岸さんが弾いてるベースなのにどことなくリーダーっぽさを感じるとか(前半のレコーディング時に既に根岸さんとリーダーとで”どう弾くか”みたいな話をしていたというのは後で聞いた話)。
 あとアルバムの構成がまさに映画か何かのサントラ盤っぽいですよね。『一体何が始まるんだろう』という期待感を煽る一曲目。Sundown〜でクライマックスを迎えアナザーワールドで壮大なエンディング。”ふたり”はさしずめエンドロール??
 とにかく素晴らしいの一言に尽きるアルバムです。余りにもマトモに素晴らしいので何かあるんじゃないかと勘繰らずにはいられないくらい(爆)。でもほんとに何かあってもいいです。こんな作品が聴けたらもう思い残すことは無いです。―― 結局何も無かったですけど。
 
 なんかもうバインには色んな意味で裏切られっぱなしです。こう来るかと思えばああ来る、ああ来るかと思えばこう来る、常にこちらの予測の斜め上斜め上を行って下さる(涙)。でもそれでもその全てがきっちりツボを突いてくる。だからバインファンは止められないんですよねー(*^-^*)
(2003/5/18)