『ハンドメイドハピネス』




「海○館の入場券付き、大人三枚お願いしまっす」
 満面の笑顔で万札を出した客に、中年の駅員は愛想良く話しかけた。
「おっ、兄ちゃん上機嫌だね。デートかい」
 駅員の軽口にも陽気に答える若い客は、今にも歌い出しそうな表情である。
「おうよ。それもとびきりの美人と♪」
「そりゃあ羨ましいこった。はい、大人三枚と釣りね」
 去っていく客を見送り、ふと駅員は首を傾げた。
「・・・ん?デートなのに、三枚?」
 駅員の小さな疑問をよそに、サンジは改札前に佇んでいたロビンにいそいそと乗車チケットを手渡した。
「こいつで今日の市内交通は乗り放題なんだ。けっこう乗り継ぐからこのほうが楽だと思って。昼はひと通り見てから見晴らしのいいとこで食べよう」
「準備がいいのね。楽しみにしてるわ」
 花がほころぶような微笑を返されれば、休日に早起きした甲斐があったというものだ。
「いえいえこんなもの、お安い御用です。おいゾロ、行くぞ」
「・・・ん」
 立ったままうつらうつらと船を漕いでいたもうひとりを小突くと、ふたつ並んだ肩の水筒がぶつかって重い音をたてた。
 そしてサンジの手には若者らしいブランドバッグ、の代わりにランチバスケットが提げられている。
 本日の行き先は港湾エリアに位置するそこそこ大きなショッピングモールなのだが、食事どころは家族向けのレストランかさもなければファストフードばかり。金を払っておざなりな食事をするよりはと、サンジは朝五時に起きてせっせと弁当をこしらえてきたのである。
 本業からしてコックである彼だが、休日くらい料理から離れよう、とは思わないらしい。
 乗り放題チケットに、手作りの弁当。
 年上の美女をエスコートするには少々どころか全面的に頼りない取り合わせだが、今日はドレスアップしてタクシーを呼びつけ、小洒落た店でワイングラスを傾ける日ではないから一向に構わない。彼らのいでたちもそれぞれ、ラフなものだ。
 サンジとゾロはTシャツにジーンズという休日の若者らしい服装だが、ロビンも普段の隙のない着こなしとはまた違った軽やかな装いでサンジの目を喜ばせた。華奢なレースのキャミソールとヒップハングのサブリナパンツからはしみひとつない長い手足が伸びていて、控えめなアクセサリーが持ち主の美貌に花を添えている。
 すれ違う人々の興味と嫉妬の視線に気づかないはずはないが、まったく意に介さないのは過不足なく備わった自信のゆえか。
「それじゃ、行きましょうか。案内よろしくね」
「はい、つつしんでっ」
 張り切るサンジの隣で、ゾロが盛大にあくびをした。


 到着してみると、なるほど目的地周辺は休日ならではの混み具合だが、目当ての建物の中はそう混雑していないようだ。通常の入り口は閉鎖され、その脇に設えられた小さなゲートに係員が立っている。
 係員にサンジが持参の青いカードを見せるとすんなりと中に通された。冷房の効いた通路を歩きながら、彼はカードをひらひらと振ってみせる。
「今日の午前中はここの会員だけのご優待サービスで、これ会員証ね。だから待たずに入れるってワケ」
「このために、わざわざ作ってくれたの?」
「や、おれ、ここのファンなんだ。年に二回以上行くなら会員のがお得だからさ。気にしないで」
 そんな会話を交わしながら通路を突き当たりまで進むと、今度は上りのエスカレーターが伸びている。ビルにして七、八階分の高さまで昇りつめると、ようやく本館の入り口までたどり着いた。
 トンネル型ゲートの透明アクリル板越しに、色とりどりの熱帯魚の群れが彼らを出迎える。これ自体はそう珍しいものでもないが、ほとんど貸し切りのような状態でゆっくり眺めてみるとなかなかに趣深い。
 通路のなかばに立ち止まり、ゆらゆらと頭上に遊ぶ魚を観察しているロビンを、男達は関心と無関心の二色の視線で見つめた。
 ゲートを通過すると、湿った土の匂いが鼻をつく。視界のひらけた先は温帯雨林を模した巨大な温室になっており、岩と木々の間を縫うように通路が伸びている。
 ふと、サンジはその場に立ち止まった。数歩遅れて無表情についてくるゾロをちょいちょい、と手招きする。
「なんだ」
 追いついてきたゾロに、小さな滝が岩場の脇を流れ落ちる一角を指し示す。
「見てみろよ、あっこにカワウソがいるぜ」
 しかしタイミング悪く、ゾロの視線に捉えられる前にカワウソ達はさっと岩の後ろに隠れてしまった。
「いねェぞ」
 ぼそりと呟いたゾロの声は寝起きそのままの愛想のなさで、彼はそれきり興味を失くしたように視線を戻してしまう。
「まあ待て、すぐまた顔出すと思うからよ」
 その言葉通り、一匹がひょいとまた水際に走り出てきた。きょろきょろと周囲を見渡し、水に飛び込むと気持ち良さそうに泳ぎ始める。
「な?」
「・・・意外に小せェんだな」
 それだけ言うと、ゾロはすたすたと先に歩き出した。
 取り残されて肩をすくめたサンジと、こちらを見ていたロビンの目が合った。ふたりは同時に苦笑して、ゾロの後を追う。
 温室を抜けて順路を進むと次第に照明が抑えられていき、あたりは青みを帯びた薄闇に覆われた。前方に、ライトアップされた水槽が嵌め込まれた壁が見えてくる。
 彼らの前にはすでに何人かの先客がいたが、サンジと同様この水族館のファンなのであろうか、誰もはしゃいだり大声を出したりすることなく静かなものだ。どうやら引き続き、貸し切り気分は味わえそうな様子である。
 ひとつひとつの水槽を丹念に見て回るロビンに歩調を合わせ、サンジはゆっくりと歩いた。
 と、ゾロの後ろ姿を暗がりの向こうに確認する。彼らより十数歩ほど先を、いたってマイペースに進んでいるようだ。
 大きさも形もとりどりの魚に加え、ラッコにアシカ、アザラシにペンギン、イルカなどのスタンダードな海の生き物達。それに交じってリスザルやナマケモノやイグアナなど、この水族館が擁する生物は実に種類が豊富だった。サンジなどもう五、六回は来ているが、何度訪れても楽しめる場所である。
 緩いスロープを下ってゆく作りになっている施設内の照明は観客の歩みを妨げない程度にとどめられており、水槽からの反射だけが頼りである。その視界が急に明るさを増した。
 ロビンが立ち止まるのを見て、サンジは傍にあった休憩用の椅子に腰を下ろした。無意識にポケットから取り出した煙草に火をつけそうになったところで、いけね、ここ禁煙だったと慌てて引っ込める。
 施設の中央に位置する巨大な水槽が、天頂から採り込んだ光を増幅してひときわ輝きを放っていた。この水族館の目玉展示物を集めたメイン水槽である。
 ゆうに三階建て住宅ほどの体積を有するその水の中をゆったりと泳いでいるのは、一頭の巨大なサメだった。サメといっても獰猛で知られるホオジロザメではなく、比較的おとなしいとされるジンベエザメである。ブルーグレイの身体に白い斑点が浮いているほかは一見すると普通のサメのようだが、正面から頭部を見ると冗談のように横に大きい。そのお蔭で恐ろしさよりも愛嬌を感じさせるこの生き物が、ここの看板娘なのだ。その圧倒的な存在感の前にはやや霞むが、オニイトマキエイ・通称マンタや体長約数十センチから二メートル程度の小柄なサメ達が、温和な巨大生物にあるものは付き従い、あるものはまるで意に介さないようにして泳ぎ回っている。
「隣、いいかしら」
 降ってきた声に慌ててバスケットを脇へどけると、ロビンはそこへ優雅に腰を下ろした。
 そして水槽がよく見えるように、少し身体を捻る。いつもと違うフレグランスの香りが、ふわりとサンジの鼻先をかすめた。
「素敵なところね。時間を忘れそうだわ」
「そう言ってもらえると、わざわざ来てもらった甲斐があったかな」
「つかえてたものもどこかに行ってしまいそう。ふふ、気を遣わせてしまったわね」
 その言葉に、サンジは悪戯を見つかった子供のように首をすくめた。
「・・・・・ばれてたの」
「ええ」
 ばれた、というのはこの際適切ではないけれど。ここ数日の間、ロビンがどこか気落ちしていたようだったのを気づかない振りをして連れ出した、つもりだった。
「うまくないなあ、おれ」
 しゅん、と俯いてしまう。
「そんな顔しないで」
 その声におずおずと上げた視線の先、穏やかな微笑がまぶしい。
「ここ、気に入ったわ。またご一緒していただけるかしら、会員さん?」
「あ、はい、もちろん・・・」
 女性相手には滑らかに動くはずの舌が、こんな時にはてんで役に立たない。ロビンの深い色の瞳を見て答えるのがやっとである。
 微妙にいたたまれない気分に陥ったサンジがあらぬ方に視線を泳がせると、ゾロが水中をじっと見つめているのが見えた。
 ジンベエザメが水槽内を周回するスピードは見る者を退屈させるほどには遅すぎず、追いかける視線を疲れさせるほどには速すぎない。飽きることなく眺めていられる動きはさすがに女王の貫禄である。
 はじめてサンジがこの生き物に出会ったとき、見入っているうちに一時間あまりが経過していたことを思い出す。少々大柄だが、彼女もまたサンジの愛しいレディのひとりだ。
「やっぱり彼、サメが好きなのかしら」
 ぽつりとロビンが呟いた言葉が指すものに気づいて、サンジは思わず吹き出した。彼ら三人の共通の友人が何かの折りに、ゾロのことをサメに喩えていたのを思い出したのである。ちなみにサンジはアヒルだと言われた。どうでもいいことだが。
「サメ同士、なんか通じ合うもんがあるのかな。つーかあいつに寝ないでじっと何かを見てるなんて真似ができるとは」
「分からないわよ。立ったまま寝てるのかも」
「はは、有り得る」
 サンジはバスケット片手に立ち上がり、ゾロの隣に歩み寄った。半分同意を求めるニュアンスで話しかける。
「チャーミングだろ?」
「何が」
「・・・何でもね」
 サンジはちょっと悲しくなった。
 ロビンがこちらへやって来るのを見て、ゾロはサンジを置いてさっさと歩き出した。
 その後ものんびりと見て回り、出口手前の商魂たくましい土産物コーナーは素通りして屋外へと出る。
 時計を見れば、おあつらえむきに食事どきであった。そろそろ、バスケットの中身の出番だ。
 サンジはかねてからの案通り、移動を提案した。
「ちょっと歩くけど、この付近を見下ろせる気持ちのいい場所があるんだ。そこでお昼にしよう」
 バスケットと水筒と日傘の三人組は、午後から水族館を楽しむのだろう人々とすれ違い、人工の小高い丘の上に造られた公園に向かった。
 そこはさすがにご優待でゆったりとはいかず、はしゃぐ子供やスポーツに興じる人々などでそれなりに騒々しい。だが木陰に座って弁当を広げれば食欲をそそる匂いが空腹を刺激し、周囲の喧騒など気にならなかった。
「あんまスマートじゃないけどね。ここでロビンちゃんと、ゾロと、メシ食ってみたかったんだ」
 そう言って食器を並べ、料理を取り分けるサンジの心底嬉しそうな横顔をロビンとゾロは黙って見つめた。
 箱いっぱいに詰まったサンジお手製の惣菜を囲んでサンドイッチとおにぎり、紅茶と麦茶が行き渡る。三人はおもむろに手を合わせた。
「いただきます」
 空は高く青く、ここちよい風が頬を撫でる。ビルとビルの間から、海上を行くフェリーが見えた。
「美味しいわ」
「それは良かった。歩き回ったあとだから尚更だろ?」
「茶」
「はいはい」
 丹精込めて作った料理が見る間に無くなっていくのを自分もしっかり胃に収めつつ、サンジは嬉しく眺めた。
 こういうのって、何年ぶりかな。
 しみじみとした思いが胸をよぎる。家の外で食べるために自分で作って持参する、そんな機会は一人前に料理の腕前を身につけてからも案外、なかったように思う。まあ、職業柄外での食事といえばほとんどが賄いだったということもあるが。
 いつしか箱は空になり、茶を啜りながらサンジは周囲を見渡した。彼ら同様、木陰のそこここに家族連れが弁当持参で食事を摂っている様子がぽつぽつと窺える。
 ふと、ハタチ前の男ふたりと年上の女ひとりが黙々と弁当を平らげる姿は、他人の目にはどういう間柄に見えるのだろう、という疑問が浮かんだ。
 ごちそうさま、おそまつさまです、という遣り取りのあと。てきぱきと空箱を片付けながら、サンジはショッピングモールまで戻って買い物でもしないかとゾロに尋ねた。ロビンは五時に来客があるので、一足先に帰宅することになっている。邪魔をしては悪いということで、サンジはゾロを伴い適当にそこいらで時間を潰し、遅れて戻るつもりだった。
 しかしゾロは。
「眠いから寝る」
「寝るって、ここで?」
「ああ」
 彼らしい選択だ。だが、たまの外出くらい買い物でもしたらいいのにと思う。口には出さないけれど。
「わかった。けど、こっから動くなよ。おれひとりで行ってくるから」
 ん、と返答すると、ゾロはそのまま眠ってしまった。いつもながら呆れるほどの寝つきの良さだ。
「それじゃ、私はお先に失礼するわ」
「駅まで送るよ。どうせ途中まで道同じだしさ」
 眠るゾロを残し、ふたりはショッピングモールから出てくる人々の波を避けて裏道を歩いた。
 いくつめかの角を曲がって駅が見えてきたとき、サンジの口からぽつりと呟きがこぼれた。
「・・・あいつ連れてきたの、失敗だったかなあ」
「あら、どうして?」
 不思議そうにロビンが囁く。
「なんか、全然愉しそうじゃなかったし」
 ロビンのためにと企画した遠出だったが、もしかしたらゾロも愉しんでくれるかもしれないと思った。だが、引っ張り回して疲れさせただけなら、連れてくるべきではなかったかもしれない。もともと、休日という休日を寝て過ごすような男であるし。
 溜め息をつくサンジを横目でちらりと見て、ロビンは日傘の柄をくるりと回した。
「私は、そうは思わないけど」
「え?」
 サンジは思わず、ロビンの横顔を見つめ直した。
「それじゃ、また後でね」
 会話を断ち切るようにそう言って、ロビンは振り向きもせず駅の階段を上っていってしまう。その後ろ姿を、サンジはなかば呆然と見送った。


 ロビンと別れてからきっかり二時間が経った頃、サンジはショッピングモールから公園へと戻ってきた。結局買うものがなかったので、手ぶらのままである。
 ゾロは、置いてきたときと同じ体勢で眠っていた。
 熟睡しているゾロはたとえ蹴り飛ばしても起きない。もっとも、実際に試したことはないが。
 いっそ引きずっていくかと思案を始めたところで。
「うー・・・・・」
 低く唸って、ゾロが目を開けた。すかさずサンジはその肩に手をかけて揺さぶる。
「おい、起きたか?日も暮れるし、もう帰んぞ」
「ん」
 くあぁ、と伸びをしてゾロは身を起こし、ジーンズの汚れを払って立ち上がる。空になった水筒とバスケットを手にし、ふたりは夕陽に染まる公園を後にした。
 さっきロビンと通った裏道を抜ける。先ほど彼女と会話を交わした地点まで来たとき、ふと不安を感じて背後を振り向くと、案の定連れの姿がない。
「あんにゃろ」
 悪態をつきつつ、戻る。と、最初の角を曲がったところでゾロがぼんやりと立ち尽くしているのが見えた。
「おい、こっちだ迷子」
 その声にゾロは悪い、と呟いて首をかしげたが。歩き出す前にもう一度、さっき見ていた方角を振り向いた。
 彼の視線の先には、あの水族館の特徴的なフォルム。
 そうして、後は黙ってサンジについてくる。サンジもあえて何も言わなかったが。
 次に来るときも、やっぱり三人揃って弁当持参だな。
 そう思って少しだけ、胸が温まった。


「おかえりなさい」
「ただいま!ごめんね遅くなって」
 慌ただしくスニーカーを脱ぐサンジの後ろで、ゾロはくん、と鼻を鳴らした。
「もうメシできてんのか」
「えぇ!?」
 愕然とするサンジに、ロビンはくすりと笑った。
「勝手だったかしら」
「いや、とんでもないっ」
 ぶんぶんと首を振る。その横をゾロはシャツを脱ぎながら通り過ぎ、無造作に洗濯機に放り込んだ。
「ああ、でも嬉しいな。ロビンちゃんの手料理をご馳走になれるなんて」
 ふふ、とロビンは苦笑した。
「メインディッシュはもう仕込んであったから、二品ほど足しただけなの。久しぶりだからお口に合うかどうか分からないけど」
 口のほうを合わせますよとサンジは応じ、頬を緩めてキッチンに向かった。
 シンクに立って、バスケットから取り出した空の弁当箱を手早く洗う。
 テーブルの上ではロビンによる夕食の用意が調いつつある。手伝おうかと声をかけたサンジに、彼女はさりげなく頼んだ。
「リビングの照明、つけてもらえるかしら」
「はい」
 薄暗い隣の部屋に明かりをつけると。
「・・・うわっ?」
 視界に飛び込んだ違和感が、サンジを驚かせた。
 ベランダとリビングを隔てるガラスを覆っているはずのカーテン。それが、見慣れた無地のペールブルーから淡いブラウンの花柄に変わっていた。
 支度を終えたロビンが尋ねてくる。
「センタークロスに変えてみたの。いかが?」
 こざっぱりしたシェードスタイルから、中央で分けるベーシックなカーテンに変えたようだ。ということは、夕方の客とは取り付け業者のことだったのか。
 温かみのある色に、シンプルな花模様が織りこまれている。プリントではなく織りなのは彼女らしいと言うべきだろうか。外側に白いレースを従える、特に珍しいということもないカーテンだが、サンジは不思議と懐かしいような思いにとらわれた。
「いいと思うよ。うん、とってもいい」
 本心から、彼はそう繰り返した。


 食後の紅茶をリビングのソファーで味わうのは、三人揃う夜には定番の過ごし方である。ただしソファーは二人掛けなので、いつもサンジは遠慮してダイニングのテーブルに腰かけていた。そこから見えるリビングの風景は、昨日までとは少し、色合いが違う。
 ロビンのカップに紅茶が残り少ないのを見て、サンジはティーポット片手に立ち上がった。恭しい動作でお代わりを注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
 熱を持つカップをソーサーに戻して、ロビンは定位置に戻ろうとするサンジを軽く制した。
「あなたが来てから、こうして食後にお茶を淹れて寛ぐようになったでしょう。今まではほとんどリビングを使わなかったから、あまり気にならなかったのだけど」
 そこで一旦言葉を切る。隣に座るゾロと突っ立ったままのサンジを順番に視線で撫でて、彼女は続けた。
「ここで過ごすようになったら、なんだかちょっと明るい色が欲しくなったの。不思議ね」
 それは。つまり。
「次は三人掛けのソファーを買おうかしら?」
 笑みを含んだロビンの言葉に、サンジは物慣れぬ少年のように赤面した。