9月のある日、カフェ・ノワール横浜駅西口店…
客の「キャー!」という悲鳴に、慌てて駆け付けた店長・棚橋と、チーフマネージャー・江間。
「…!! な、並木さん?!」
思わず震えた声をあげる棚橋。彼等の視線の先には、先程まで確かに客席に座り、にまにまとしていた並木が、変わり果てた姿で床の上に転がっていたのだ。
「きゅ、救急車だ、救急車を呼べ!」
「…いや、ちょい待て」
いつもと変わらぬ表情で、江間は並木の死体へと近付いていく。なぜ彼はこんなに嬉しそうな顔をしているのだろう、血を吐きながらも微笑んだ表情のまま息絶えた並木を、まるで観察するように見つめると、江間は静かにこう言い放った。
「…まずは警察や。もうアカン、手遅れや」
「…江間?」
「こいつ、死んどる。このダイイングメッセージがなによりの証拠やで」

「ダイイング・メッセージか」
棚橋が唸るように呟いた。カッコイイ。あまりにカッコイイ響きだ。どうせなら特急とか温泉とか女子大生とか、そういうのも欲しいがそれは贅沢というものだろう。棚橋はしばし目を瞑り、サスペンスならではのセリフの余韻に浸った。
「しっかしこんなん落ちとったら……今保健所来たらどないしよ」
業者の生ゴミ回収時間を確認する江間。
「けっこう待たなあかんなあ。あー、こんなとこで勝手に死によってから!ほんまけったくそ悪いわ!」
「それだ!江間!」
「それ、て……なんや」
「うむ。やはりこの店に対する嫌がらせだろう」
「なるほど、犬の死体投げ込んだりするタイプのか」
いつのまにか死体の見物に出て来た八神がしたり顔で頷く。
「犬と並木さんを一緒にするほど俺はひどくないぞ!」
「ワンちゃんをゴミと一緒にすんなや!」
「あのー、救急車でも警察でもいいですから、とりあえず呼びましょうよ」
発見者のお客を介抱しながら、至極まともなことを悦子が提案したが、そうそうまともに進んではお話になら──あいや、そうそう世の中スマートに片付くものではないのである。
サスペンスな以上、現場の人間がすべてを支配し、混乱に陥れる手筈である。
やったね。
「しかしこうしていても埒があかん」
「はあ、こんなときに限って、暑ぅてかなんなー。置いといたら腐るんちゃうか」
そこで突然、部屋の電気が消えた。
「おい、誰だ? ブレーカー切ったのは!」
「……何や妙やで」
「何がだ?」
「ごっつ静かやんか。これ、店の電源全部落としたんちゃうか?!」
「何ぃっっ!! 江間! 急いでブレーカーあげろ!」
「わかった」
時刻は午後五時。光を採り入れる大きな窓ガラスからオレンジに染まり始めた夕陽が差し込み始めていた。
「店長、そんなにあせってどうしたんですか?」
「何を言ってる。電気が通らなくては電話もできん。それに……」
「それに?」
「冷凍庫と冷蔵庫の食材がダメになる!!」
きっぱりと言い切る棚橋を苦笑気味に見、落ち着いた客を悦子は席へ案内することにした。
「それにしても、このダイイングメッセージ、どんな意味があるんだ?」
「……。これを見て江間は死んでると言ったな……」
注意深く並木の指の先にある「へのへのもへじ」を見つめる二人の男。
「……江間昇竜会に伝わる……死に方か何かか……?」
棚橋は口の中でつぶやいた。
「江間チーフがきたら聞けばいいですよ」
「そうだね、エッちゃん」
八神は立ち上がるとすぐ近くの椅子に腰掛けた。
「それにしても遅いな……。ブレーカーあげるだけのはずだが……」
「仕方がない…俺が様子を見てくる」
 元来せっかちな棚橋が、苛立った様子でそう応えたその時、奥のドアが乱暴に開いて江間が飛び出して来た。
「大変や!」
「どうした」
「何かあったのか?」
 棚橋と八神が口々に問うが、江間はそれに答える素振りも見せず、崩れるようにして床に膝をついた。
「俺は、どないしたらええんや!」
 頭を抱え、叫ぶ様子は尋常ではない。
 いつもの江間らしくない態度に棚橋と八神は顔を見合わせ、無意識に唾を飲み込んだ。
「おい、江間!どうしたんだ?何があったんだ?」
「…棚橋」
 肩を掴んで乱暴に揺さぶる棚橋を江間はうつろな眸で見つめ返した。
「そうだ。俺だ。しっかりしろ!」
「……ちゃんが」
「え?なんだって?」
 江間が何事かを呟いたが、上手く聞き取れない。
「落ち着いてもう一度云ってみろ」
「ううう…」
「泣いてちゃわからんだろう」
 半泣き状態の江間に焦れた八神も江間の顔を覗き込み、何があったのか問い詰める。
「そうだ。一体幾つだお前は!しっかりしろ!」
「うっさいわ!お前とおんなしやっ!ぼけぇっ!」
「なにぃ!誰がボケだっ!」
「喧嘩するなよ…」
 離れた席では悦子が心配そうにもめる三人の姿を見つめていた。

江間は怒りを逸らすように大きく溜息をついて、それからもう一度、ためらいながらも例のセリフを続行した。
「……ちゃんが……」
棚橋は思った。
(……サバチャン?)
八神は思った。
(……ユカちゃん?)
まあそれは置いといて。
「だから何なんだ、江間」
棚橋に急かされても、もう江間は怒らなかった。語るべき衝撃の事実の前に、あまりにも小さいからである。
「実は、その……これなんやけど……」
江間は固く握り締めていた右手を開き、掌中の紙切れを広げた。
「ブレーカーのシールドに貼ってあったんや……」
デコデコと飾り立てた単車の傍らに、木刀を携えた女性が立っている写真が印刷された紙だ。
単車の装備にふさわしく、女性の特攻服とメイクもなかなか壮絶なものがある。あおり角度のポージングはあまりにキマっていて、彼女がタダモノではないことをひしひしと感じさせてくれる。
「ま、まさかこれって……」
八神の言葉に無言で頷く江間。
三人は思いをひとつにして、悦子のほうを見た。
振り向き加減にばっちり写った、特攻服の背中には、勘亭流でこう刺繍されていたからだ。
"ETUKO"
──えちゅこ。
まあそれはどうでもいい。多分。
「え、エッちゃん……!」
さておき、はたして食材は大丈夫なのか。
他のお客は大丈夫なのか。
腐りそうな死体は大丈夫なのか。
そもそもこの展開で大丈夫か!?
ありあまる不安とときめきで胸いっぱいになりながら、次のかたへ轟スロー。
「とりあえず」
 突然、まぁいつものコトではあるが、江間がその場を仕切り始めた。
「オレとしてはエッちゃんが怪しい思うねん。こんだけ状況証拠揃ってるやんか」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ、江間チーフ! 大体これ…私じゃないですし、どうして突然私だってコトになるんですか?!」
 彼女がそう言うのも無理はないだろう。
「そうだ、江間! エッちゃんに並木さんを殺す動機なんてないじゃないか! …というより、むしろ並木さんを殺すという動機だけで言うなら、その…お前の方が怪しいぞ! 本当なんだ!」
 珍しく正論を吐く棚橋を、江間はぎろりと睨み付ける。そして勢い良く口を開き、いまにも殴り掛からんばかりの勢いで棚橋に噛み付いた。
「なーんでオレがあんなアホ殺さなアカンねん! あんなん殺してワッパ掛けられるんやったら、いっそオレが死ぬわ!」
「そ、そんなコトを言ったって、冷静に考えればお前の方が状況的には…その、怪しいじゃないか!」
「何やてー!」
「きっとそうだ、オレはこう思うんだ! お前は前々から…いや、子供の頃から並木さんに一方的に恨みを抱いていてだな…」
 棚橋が長い長い講釈を垂れている傍ら、それを冷静に見つめる者がいた。左目の横に泣きぼくろを付けた、どうにもこうにも影の薄い男、八神圭太。
「…ていうか、結局今は何の話で盛り上がってんだ? とりあえず警察呼ぶのが先なんじゃねぇのか?」
 だが、そんな正論が彼等に通用するハズもない。
「こんな時に一番落ち着いとる八神が一番怪しいわーー!!」
「いや、ちっ、違うんだ! 江間、お前が一番怪しいんだ!!」
 八神はそんなどうしようもない2人を交互に見てから、長い長いため息をつく。
「…いいかテメェら、一旦落ち着け。まず、なんで並木さんが殺されなきゃいけねぇんだよ。この…写真はともかくとしてだなぁ…誰がブレーカー落としたんだよ。しかも何の為に。そっから考えようぜ」
 決まった。八神はハッキリと心の中でそう呟いた。その次の瞬間。
「えっ、江間だったらきっと今迄にその持ち前の暗殺術で何人も殺して来ているはずだ!!」
「何やねん、持ち前の暗殺術て! そんな技あったら、まっ先にお前と並木ブッ殺しとるわー!」
「今自供した、自供したぞ!! エッちゃん、八神、ちゃんと聞いてたか?! これは法廷で(以下云々)」
 全くの蚊屋の外であった自らの存在に気付いてしまった八神は、少し目眩すら感じて、そこにある壁に背中を預けてがっくりと項垂れた。
「…フ、フフ…どうせオレは………。しかし…ヘンだな。最初の騒動以外、客席は静かなもんだ…どうして誰も何とも思わないんだ? これは殺人事件なんじゃないのか? …ま、あの死体だから、誰も恐くねぇのかもしれないが……」
 八神は考えた。考えに考えた、たった一人で、主役クラスの棚橋、江間を差し置いて。しかし、主役じゃない八神に何ができると言うのだろうか?
「…オレにできることはただ一つ。…とりあえず110番通報しとこう…」
 変に哀愁漂ってしまった男は、ひとり事務室へと消えて行った。背後では相変わらず根拠なき犯罪の擦りあいが繰り広げられていた。
しょぼくれつつも受話器をあげる八神。
しかし、彼の取り上げた受話器からは何の音も聞こえてこない。
「まさか、で・・・電話線が切れてる!?」
何者かが外部との連絡を遮断するために切ったのか?
それにしても、これだけ賑わっている駅前で、
店の電話をひとつ封じただけでは意味がないことは棚橋でもわかるだろう。
やはり嫌がらせなのか? それとも・・・
不気味に迫る恐怖と、やっと回ってきたソロパートへの緊張に八神は震えた。
「だから、エツコなんて同名の方は私の他にもいますから!
この写真は・・・あれ?」
写真をかざした悦子は、裏に何かが書かれているのに気が付いた。
「これ・・・並木さんのダイイングメッセージと同じ・・・」
裏には、ハッキリと『へのへのもへじ』が記されていた。
「こ、これは大変な手がかりだ! 犯人は俺が必ず突き止めてやる!」
がぜん張り切る棚橋。鼻息も荒く、いっそう空回りする勢いだ。
「確かにエッちゃんの字やなさそうや。エッちゃん、ホンマ違うんかいな・・・
けど、こないな特攻服見たことないわ、ウチとも関係なさそうやし・・・
なんやようわからんなってきたわ!」
頭を抱える江間。果たして事件は解決に向かうのか!?
一枚の写真によって忘れ去られたブレーカーをあげるため、
シビレを切らした纐纈が仕方なくキッチンから出てきた。
・・・またも取り残された八神だけがひそかに悲しみにくれていた。
次のアナタにつづく。
棚橋が自信満々に言った。
「よし、わかったぞ! この『へのへのもへじ』はアナグラムなんだ! 並べかえると犯人の名前になるんだ!」
「アホ、なるわけないやろ! へが三つもあって、誰の名前になるんや!」
「だったら江間は、この『へのへのもへじ』はどういうメッセージだと思うんだ!?」
せっかく思いついた解決の糸口を否定されて、棚橋はやけくそで怒鳴った。
「おい、テメェら、一旦落ち着けよ! 電話線が切られてるぞ!」
悲しみにくれていた八神が、気を取り直して、棚橋に負けじと大声をはりあげた。
さらに、ブレーカーを上げに行っていた纐纈がホールに慌てて戻って来て叫んだ。
「ブレーカーをあげたのに電気がつきません!」
「……なあ、その前に、おっちゃん本当に死んでるん?」
さらに混乱を深めた従業員たちに、冷静かつものすごく根本的な質問を投げかけた者がいた。
並木の連れの長田だった。
「おっちゃんアホやろ? ふざけとるんちゃう?」

「お〜いオッちゃ〜ん。」
そういえば『お〜いお茶』なんていう商品があったな、などと、
ますます激戦化するであろうペットボトル飲料業界の生き残り戦略に
思いを馳せられる程の余裕が出現可能な混乱した頭で棚橋は、
この不可解な状況をいかにして一刻も早く解決すべきか目下思案していた。
しかし、どう考えても結局、同期の彼が一番疑わしいという結論に達するのであった。
「やはり俺は江間が一番あ、あー、怪しいと思うぞ。」
「ハー・・。お前、分からんヤッちゃなぁー。俺が並木ゴトキを自分の手ぇ使こて殺す思うかあ?」
先程からかなり際どい発言を繰り返しているという自覚が無いのか江間は、
それこそ至極当然と言わんばかりに反論した。
「やっぱり!自分で手を下さないでやったんじゃないか!」
「なっ…」
「計画犯罪だ。実行犯は他に居るんだな!!そうなんだな!江間!!」
「アホ!んなワケ無いやろ!!」
「白状しろ!江間!!」
「あの…」
放って置かれた遺体には目も暮れず
半分中身の無い様なやり取りを続けている二人の隣で、
ある重大な事実に気付いた女性が一人。
「やから俺はやってないって!何べん言うたらー云々々」
「あのー」
「だから普段の状況から考えても俺の推理はー云々々」
「あの!!」
「何なん?エッちゃん!」
江間は彼女の方を振り返った。少々、棚橋との口論に熱意を傾けながらではあったが。
その棚橋もこちらを向くと、彼女は一点を指差して言う。
「あの、これ」
「『これ』って、並木?」
幾らなんでもヒトを指して「これ」は無いだろうと思いながら棚橋は聞いていた。
「あ、へのへのもへじイチゴ味やん。」
並木の近くに居た長田は、何を思ったのか、ダイイングメッセージと推察される
例の落書きの一部を指に付けていた。おそらく舐めたのだろう。
が、そんな事はお構い無しとばかりに悦子は意を決して言う
「これって」
「え…?」
「これって、蝋人形なんじゃないですか?」
「は?」「マジで!?」
この事実、女の勘の類で判ったとは言い難い。
彼等は今の今迄、人間と人形を見間違うという人間としての資質を問われ兼ねない
低い所で争っていたに過ぎなかったのであった。
「な〜んや、人形やったんかぁ〜。おっちゃんも凝ったことすんなあ。」
その証拠かどうか、その人形を叩きながら一言二言、能天気な発言も飛び出す始末。
後方では、自信たっぷりに男が一言二言。
「なるほど。これで何故ブレーカーが落ちたのかは解ったな。」
「人形やってバレたらアカンかったって事か。」
「でも、やっぱり気味悪いです。」
「せやなぁ。まだ本モンやったほうがおもr」
「う゛わあ!!!」
予測していなかった急な悲鳴で、
死者が消え幾らか空気が柔らかくなっていた部屋に、また緊張が走った。
「なんや?今の」
「あれは、八神か!?」
叫び声のする方を見ると、八神がドアに凭れ掛かるようにして現われた。
ほぼ力尽き、何か、幽霊でも見たかの形相で。
「八神!」「どうした!」
問い掛けると搾り出すように一言、
「な、、なみ、並木・・・」
それだけ言って、彼はその場に崩れ落ちた。
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サスノワ至上怒涛の急展開!さあ、これから一体どうなるのか!
棚橋の頭は大丈夫か?江間は本当に何もしていないのか?
八神は何を見たのか?並木は生きているのか、それとも…!?
次回、乞う御期待!!

「う¨わあ!!!」
死体と思われた並木が実は蝋人形だったという某所蝋人形館館長もびっくりな事実。
しかし、その時そんな安堵感を吹き飛ばす八神の悲鳴が!!
「八神さん!!」
「どないしたんや!?」
「ぅぅ・・・」」
新たな緊迫感の中、倒れる八神を一時捨て置き棚橋は考えていた。
『死体が無いと言う事は、殺人事件ではないのか?それならばお客さんをこのまま引き止めておく訳にはいかない・・・。』
「しっかりしぃや!!」
「・・・ぅ・・・」
八神は意識を失った。
棚橋は考え続けた。
『しかも電気が不通のままでは空調も効かん。材料の事も心配だ。冷凍庫の食材は電気が止まってからどれくらい持つんだ?』
「大事なとこで気ぃ失うなや、アホ!そんなことやからサナエにほかされるんやんか!」
「チ、チーフ・・・それは・・・(微苦笑)」
事の発端以来時計の針は刻みつづける、日も沈もうかという頃合。
『しかし・・・今は何時なんだ?』
棚橋が時計を見ようと顔を動かした時、扉の奥で影のような物が動いたように思われた。
「しゃぁない、その辺に転がして・・・エッちゃん、水持ってきてくれへん?」
「あ、はい。これで良いですか?」
エツコはそう言って手近に有った氷入りの水差しとコップを差し出した。
「あ、コップはいらへんねん。あんがとな。」
「え?」
バシャァ!!
江間は勢い良く仰向けに寝かせた八神の顔にそれを浴びせた。
「ぶう¨ぅあぁ!!ゲホッ、ゲホッ!!」
「よし、目ぇ覚めたか?」
二度目の叫び声に我に返る棚橋。
「騒がしいぞ!八神!!お客様がいらっしゃるというのに!!」
「騒がしぃて今更何言うてんねん。もう散々騒いどるやんか。」
「エホッ!エホッ!」
「だから、落ち着けと言ってるんだ!!江間!!こういう時こそ店の人間が冷静に行動しなくてはいかんのだ!!」
「ツバ飛ばすなや!おまえの声が一番騒々しいねん!!」
「あ、あの、二人とも・・・」
ドスンッ!!ガラガラガラン!!
店の奥から何か重いモノがぶつかる音がした。
「!?」
「今度はなんやっ!?」
殆ど全員の目がそちらに向けられた時、数回の明滅と共に店中の明かりが灯った。
微かなエアコンの音が静寂の中に流れ出す。どうやら空調も回り始めたようだ。
『これで何とか食材は救われたな。』
棚橋も一安心である。
「な、並木・・・さん・・・」
店の奥に目を向けたまま八神は一人呟いた。
電気が通い始めた店内に静かなBGMが流れ始めた・・・。
従業員が店の奥に向かうたび何かが発見され、そして今また店の奥から不信な物音が!!
物語はまだ続けられるのか?
蝋人形だった死体、ダイイングメッセージと思われた「へのへのもへじ」、写真、停電、八神は何を見たのか?
この多くの謎を解くのは・・・あなたかもしれない?

店の奥から現れたのは──ナマの並木であった。陽気に微笑んでいるところを見るに、蝋ではないようだ。とりあえず。
「並木さん」
「並木さん」
「おっちゃん」
名前を呼ばなかった人物に向かって、並木は嬉しそうに語り出した。……白く乾いた店内の空気をまったく察することなく。
「ええですやろ〜これ。いやあ、最近のインターネットはいろんなモン注文できて便利ですなあ」
「……お前……こんなアホなモン、わざわざオーダーしたんか……」
「いやもう、今年はタイガースも優勝しましたやろ?(遅いよ…) ボンの店にも要りますて、こう……モニュメントが」
「はあ? モニュメント?」
「ありますやろー。ほら、いざというときに投げるためのサンダースはんやら」
それはそういうものではない、と客も総員突っ込んだに違いない。
もっとも、能天気にしゃべっている男はどう見てもヤの字である。がたがたと展開する意味不明の異変を、大人しいお客の皆さんはただ見守るばかりであった。
床には蝋人形、客を放置したスタッフ、いちごジャム、掴み所のないボケの応酬、東大卒、その他もろもろ、関係者各位。
異様。まさしく異様すぎる光景であった。
ここで唐突に銃撃戦が起きたとしても、もはや違和感はないであろう。(そうなのか?)
「そろそろクリスマスらしい飾りなんかもこー…。ああ、ペコちゃんみたいに季節ごとにお着替えするのもよろしいですなあ」
並木はしみじみと想像を噛み締めているようだ。
普段ならすでに並木を滅殺しているはずの江間は、並木のあとから飛び出してきた坂田に縋られていた。
「ボン、オヤジを止められんかったんは俺の不始末ですねん! 落とし前はこの坂田の腕一本で──!」
「お前の腕なんぞ棚橋のペナント以下や! 誰が欲しいかドアホ! あーもー、ええから離さんかい!」
ここで棚橋が何か抗議をしたが、(書くのが面倒なので)内容は割愛する。
「なんやあれ、事務所の前に置くゆわはるんで、『それだけは』って止めたんは俺です!」
「したらわざわざココか?」
「いや、あの、オヤジはボンのためを思って! ボンを驚かせたいて言いはって! ボンのためですねん!」
「坂田ぁ! お前落とし前つけるゆうたな! 腕なんか要らんわ! 腎臓寄越せ! 腎臓!」
「江間マネージャーやめてください……お店のイメージが……イメージが……」
悦子のツッコミは虚しく空に散った。
「じゃ、じゃああの停電も写真も並木さんが?」
疲労しきった表情で八神が言ったとき、店の入り口に人影が差した。
「ふふふ……おかしな邪魔は入ったが、ついに気付いてもらえたようですね」
ライバル店、カフェキアーロ店長・副島の(読者記憶が)怪しく(憶えられていないという意味で)不敵な微笑みがそこにあった。

★ この話を続けるのは、そこにいるアナタですよっ!  サスペンス掲示板で、適当にキャラたちを動かしてみませんか。

参加者順:白根春直→べんとうやさん→chi-p@ さん→砂希さん→べんとうやさん→白根春直→ナギヌマ(笑)さん→つつじさん→よしさん→HiUMAさん→べんとうやさん