「桑崎」
ここで名前を呼ばれると思っておらず、動揺を表してしまう。
「はい」
視線を向ければシュウは手招きをしている。
リョウジの肩を借りて歩み寄ると、
「楽しませてもらおうか」
シュウの言葉に反応したのはリョウジだった。
「でも!」
怪我が……と言おうとしたが桑崎が了承したために押し黙る。
「リョウジ、服を脱がせろ」
「でも…でも……」
桑崎は一人で歩けない状態なのだ。
太田の屋敷にいた時、桑崎は見えないところで優しく接してくれた。そしてリョウジが知る限り、桑崎が誰かと性的な関係をもったことがあると聞いたことがなかったのだ。
もし初めてなら……そう思い至った時、
「自分が、自分がお相手させて頂きます。下手じゃないと思います。お願いします」
シュウが怖いという気持ちを抑え込んで口にする。
だがシュウは鼻先で笑い、
「ガキは相手にしない主義なんだ」
そう言うがリョウジは来年には二十歳になる。
ガキという年齢ではなかった。
「それに俺は適当に肉がついてる方が好みなんだ。さっさと脱がせろ」
「リョウジ」
桑崎に促されて手伝う。
背中の傷はまだ痛々しく、出来るだけ触れないように服を脱がせたが、それでも苦痛の声は漏れてしまった。
「心配するな。痛みに気を失うようでは俺が楽しめないからな。それに見た目通り俺は優しい男なんだ」
脱ぎ捨ててあった服のポケットからチューブを取り出す。
「太田のところから頂いてきた。俺がやってもいいがその傷だ。自分のペースでやる方がいいだろう?」
「…………」
「リョウジに手伝ってもらってもいい。せいぜい官能的に解してくれ」
言い終えるとチューブを投げる。
リョウジが受け取り桑崎に手渡す。
「……桑崎…さん」
桑崎は少し躊躇って後、シュウに双丘を向けて這った。
チューブのキャップを外し液体をすくい取る。
「桑崎」
シュウの声が響く。
「こっちに顔を向けろ」
無言で身体の位置を反対にすると、シュウは桑崎の肩を自分の膝の上に乗せ、顎を取って上向かせた。
「始めろ」
液体が床に落ちてしまった為にもう一度すくい取ろうとするがシュウに頭を固定されてしまい、手元を見ることが出来ず上手くゆかない。
「リョウジ、手伝ってやれ」
側に立っているがリョウジは動けない。
だが先に進まなければシュウに不快感が生まれてしまうだろう。
「リョウジ」
名を呼んで桑崎はチューブをリョウジに差し出す。
震える手で受け取り、ほとんど目を向けずに桑崎の双丘の上にチューブを掲げて絞り出した。
いきなり冷たい液体が落ちてきて、桑崎の身体が震える。
零れ落ちる前に後に回した指で絡め取り、シュウのものを受け入れる場所に塗り込めてゆく。
「充分だと思ったら言え」
そう言ってからシュウは屈み込んで桑崎の耳元で、
「半端にやれば身体の内側も傷つくことになるぞ」
心が震える言葉に桑崎は指を差し入れただけでなく少しずつ拡げてゆく。
足元にはリョウジが動けずに立ち尽くしていて、しかし見てはいけないと思っているのか目をしっかり閉じていた。
それが、シュウには不愉快だった。
「リョウジ、目を開けろ」
「…………」
「開けてよく見ろ。お前がガキだってことがよく分かるはずだ。大人がどうやって快感を得るか知るといい。そうだよな?」
「……はい」
「そら、目を開けろ。あとでたっぷり感想を聞かせてもらうからな」
それきりシュウはリョウジに何も言わなくなった。
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