明日に向かって・讃岐の島々から △3▼ 伝統の“ニンニク卵”特産に 「若者少ないし働かな」

/掲載日:1998年1月6日/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:24ページ/

健康食品で島おこし 亀山守江さん(70)=丸亀市広島町

 「年寄りが『若いときゃ一生懸命働いた』とのけぞる時代は終わっとる。今の世の中は若いモンが少ないきん、年食っても働かな。その点、ヒロニンダは年寄りでも作れるし、食べりゃあパワーが出て、働く意欲も増してくるんよ」

 広島産のニンニクとヨード卵を原料とするアイデア健康食品「ヒロニンダ」。考案した亀山さんは「さぬき広島フォーラム推進委員会・ヒロニンダ部会」の代表。同部会の主婦ら十人と日々、ヒロニンダづくりで島おこしを夢見ている。

 青みを帯びた良質の花こう岩・青木石を産出、採石業とともに栄えた広島。近年、市場には中国や韓国の安い輸入石が出回り、青木石の需要は低下。採石の事業所数は、戦前のピーク時の約八十軒に比べほぼ半減。島の地盤沈下は深刻さの度合いを深めている。

 島の危機を救え! 平成四年一月、若い島民が中心となって同フォーラム推進委を結成した。島名物・トライアスロン大会の魅力アップのほか、鮮魚を販売する祭り、島の野菜を並べた市などを新たに開催。過疎化、高齢化の波が押し寄せる広島の再生に向け活発な動きを見せた。

 この活動の中で、推進委メンバーの亀山さんが着目したのが、島の伝統食の一つ、通称ニンニク卵だ。皮をむいたニンニクを包丁で細かく刻み、自然野菜を豊富に食べたニワトリの卵の黄身と交ぜ、七輪で炒(い)る。ミキサーで粉末状に砕けば出来上がり。

 ニンニク一キロに対し、卵黄六個の割合。みそ汁やカレーなど日常の料理に混ぜて食べるだけで、動脈硬化や脳卒中の原因となるコレステロールを除去。血圧を下げたり、疲労回復の効果もある、と亀山さんは自信たっぷりだ。

 「広島」「ニンニク」に強調の「ダ」を加えてヒロニンダと命名した。五年三月、東京・池袋で開かれた離島振興イベント・アイランダー’95(国土庁など主催)に出品、好評を博した。以来、口コミでうわさが広まり、注文は関東や近畿からも舞い込むようになった。

 最近では、あめなどヒロニンダ入りの加工品づくりにも着手。昨年冬の日本海での重油流出事故では、現地にヒロニンダ入りミルクキャラメル二千個を贈り、重油回収に当たるボランティアを激励、一躍「広島」の名をとどろかせた。

 「ほんま力がわくんや。頭の回転もようなるし、日本を動かすセンセイにも飲んでもろうて厳しい地域の現状を考えてほしいわ」。キレのあるジョークも″ヒロニンダ効果″の一つ。島の活性化に尽くす亀山さんの意気込みがにじむ。

 かつて、至る所から石を掘削するつち音が響いた石の島。人口は、大正時代に三千人を超えたが、今では五分の一以下の五百五十人程度となった。亀山さんらの努力もむなしく、平成八年春に市立広島西小学校が廃校、昨年春からは市立広島中学校が休校となった。

 「島はつぶれる、いう人もおる。でもな、島のために知恵を絞った、努力したという歴史は後世に残る。百年でも、二百年でも…。自分が生まれ育った島のために何かしらの歴史を残したいんや」

 島おこしにかける亀山さんの情熱。その炎が、ヒロニンダパワーと相まってさらに燃え上がろうとしている。

【写真説明】「歴史を残したい」とヒロニンダづくりに精を出す亀山さん

/分類:連載企画/写図:有/著作権:山陽/面版名:香川/面名:香川/配置位置:TOP/見出し段数:3段/版:16版/ (1998年‖1月‖6日)