自分で現像してみよう
写真を撮影して、その後は全て写真屋まかせ。大部分の方がそうだと思う。カラーになってから、現像の工程が複雑になり、かつ温度管理や現像液の問題もあって、個人では低価格でできなくなっているから。しかし、昔は(と言っても30年もたたない)写真は白黒の時代である。工程が簡単であるので、
個人でも簡単に出来た。しかし、写真屋は、カラーが通常で、モノクロ写真は特注で、時間もお金もかかる。前には、使い捨てカメラでもモノクロがあったが、最近は見ない。もう止めたのかな。
そこで、自分でやってみようではないか。ただ、引き延ばしと違って、目に見える楽しみが無いのがちょっと不満ではあるが。
まずFILMの現像から
これは、簡単である。明るいところでもフィルムが出せるダークバッグさえあれば出来るのである。
必要な器具
1.現像タンク(必ず必要)
プラスチックとステンレスがある。私は当初はプラスチックを使っていた。ステンレスも持っているが中心はプラスチック。温度管理はステンレスの方がやりやすいが、室温等に左右されやすい。プラスチックは温度を途中で変えることは難しいが、ちゃんとセットしておくと、そのまま一本終わるまでいける。ステンレスの方が、全体を撹拌できるので、現像ムラが出来にくいようだ。私は、主にキングのノンベルトとパターソンを回転撹拌して使っている。
フィルムをタンクに収納するときに、溝が切ってあるので、片溝か両溝か、ベルトに巻き付ける方法と3種類ある。主流は両溝か。大きなものを求めると、同時に何本も可能である。特にステンレス製品には、大きいものがある。
2.温度計(20度から50度が計れれば代用は可)
液温が計れる棒状のものがいい。カラーをやるなら、1/5度の目盛りのついた精密なものが良いが、モノクロではそれほどのものは必要ない。
3.ダークバッグ
夜、押入等にもぐって光のないところで行うときには必要ない。昼間、明るいところで行うときには必要である。ただ一回。それは、フィルムをパトロネからだして、現像タンクのリングに巻き付ける間だけである。その後は全く明るいところで可能であるから。
4.現像液を溶かす計量カップ(料理の200ccカップで代用計量できるが、写真屋で1000cc程度のものを求めるとよい)
当然定着液等も。撹拌棒もあると楽である。
量を計るだけならば、台所の計量カップで可。洗面器の中で、薬品を溶かせばよい。
5.現像液等を入れておく瓶
現像液は使い捨てでいきたいので、保管することはほとんどないが、途中タンクの薬品を入れ替える瓶が何本か必要である。保存するのでなければペットボトルと漏斗で十分。
定着液は何回か使えるので、あるとよい。
6.バット
これがあれば、床が汚れない。当然ビニール等のシートは敷いておくのであるが、こぼれた時にはこの薬品はにおいがきついのでやっかいである。温度調節に、お湯や冷水をはっておく時に必要なので、洗面器でもよい。
7.時計(秒針があればどんなものでも可・・・現像は明るいところなので)
8.フィルムの乾燥用のおもり等
洗濯ばさみがあれば事足りるが、あれば便利。
以上である。全部買ってもそんなに高価なものではない。ダークバッグはこれ以外にもカメラのフィルムの不都合時によく使うので持っている人も多いのではないか。バットは引伸しの時の現像液等の処理に必ず必要であるので、先々必要である。
現像に必要な薬品
1.現像液
粉末をお湯で溶かすものと、液体で薄めて使うものとがある。撮影の状態で、増感とか、微粒子とかフィルムによって使い分ける。
2.氷酢酸(停止液)
現像液がアルカリで、反応を止めるため、中和するのに必要。これがないと、定着液の負担が掛かる。
3.定着液(いわゆるチオ硫酸ナトリウム)
氷酢酸と定着液は、特に問題なく選べる。種類も少ないし、迷うこともない。問題は現像液である。
入門書を見ると、まずコダックの現像液D−76が載っている。昔からのTRY−XやPLUS−X等のフィルムからT−MAXまでのものをお使いの時には参考にされるといい。
私は、コニパンSSやネオパンSSをよく使っていた。この時には、富士のミクロファインで微粒子現像をした。SSSのフィルムには、増感できるパンドールを使った。この薬品はまだ市販している。これ以外のフィルムでは、フジドール等も使った。ただ、フィルムが進歩しているので、最新のデータでまとめてみる。
私もこれからは、最新のフィルムと現像液で再出発しようと思っているので、試行錯誤で温度と現像時間、撹拌回数等をチェックし、ここに記載していきたい。
現在手に入る薬品類での整理
一昨年まで、東京での勤務地だったので、新宿のヨドバシ等で購入していたが、自分の家の近くでは、どうも手に入らない。
ちょっとショックであるが。そんな関係で、東京に用事があったときには、あらかじめ、欲しいものをメモしておいて購入することにしている。
その後、2000年、近くにカメラのキタムラが開店し、現像液が手に入るようになった。
現像液は、ヨドバシに行った時に在庫があったものをここに、表示していきたい。たまにしか行かないから、最新情報とは限らないかも知れないが。
微粒子現像(対象のFILM T−MAX、プラスX、トライX、ネオパンSS、ネオパン400プレスト)
コダックD−76(*)
フジドール
イルフォード
標準現像
T−MAXデベロッパー(*)
スーパープロドール
イルフォテックLC29
増感現像
パンドール(*)
コニカドールスーパー
超微粒子現像
ミクロファイン(*)
マイクロドールX
パーセプトール
現像時間の調整
第一に温度である。さらに、原液をそのまま使うか、薄めて一回限りの使い捨てにするか(通常薬液は指定の本数があるが、液が疲れてくると若干現像時間を延ばした方がよい)。撹拌頻度と方法等が微妙に現像時間を左右する。経験ではあるので、条件を整理し、自分データーベースにしておくと良い。とにかく液の温度と現像時間の管理、そして撹拌頻度である。
取りあえず最初は、薬品メーカーの指定の指定フィルム、薬液の指定濃度、温度、撹拌回数、で挑戦する。
そして、その結果を必ず記録しておく。次の現像の時には、その成果で微調整する。温度を下げると、現像時間は当然長くなる。温度を上げると現像時間は短くなるが、粒子が荒れてくるようだ。
時間は、現像液を入れ始めてから、液を捨て、停止液を入れた時まである。停止液を入れなければ、現像液はなくても、現像は進むのである。厳格に時間を記録する事を勧める。感では上達していかない。化学反応であるので使用環境でいくらでも異なってしまう。
次に、撹拌である。ステンレスのタンクでは、上下にひっくり返して、カクテルのシェイクの様に撹拌するが、私の使っているキングのプラスチックタンクでは、心棒を回転させる方式である。静かに指定の回数と頻度で行う必要がある。少ないと、気泡が抜けずに、現像ムラがよく起こる。やりすぎると、粒子が荒れる様である。つまり、現像ムラを起こさない程度に静かに、やり過ぎて粒子を荒らさない程度である。
途中の液温の管理であるが、ステンレスは熱伝導が大きいので、バットの中にはった液温で、温度調節可能であるが、プラスチックでは保温性が高いので、短い時間での温度調節は難しい。液を注ぐ時の温度をしっかり管理しておくことだけである。
(私は、バットに冬はお湯をはり、タンクの液温が20度を切らない様に、夏は、気温の方が高いので、氷水で20度以下にした水をはっておき、プラスチックタンクの液温を変化させないようにしている。タンクの温度やフィルムの温度も気温に左右されており、入れた液温を変化させるので、結構気を遣う。ステンレスタンクは、最近、不要になった方から手に入れたが、使用実績がすくない。最近は使っている方が多いのではないか。今後トライしてみたい。)
これらのことは、全て、明るいところで出来るので、暗室仕事ではない。工夫ができる領域はいくらでありそうである。フィルム現像は失敗が許されないこともあるが(引き延ばしはいくらでもやり直しが利く)、気楽に考えて自分の固有の方法を確立していけば、後は、心配なくできるようである。
停止(酢酸液)
現像時間が来たら、速やかに現像液を排出し、停止液を入れる。これは、現像液を中和して、定着液の劣化を防ぐ目的であるので、1分以内で可である。
定着
定着液は、写真屋さんへいっても、種類が限られているので、迷うことはないと思われる。私は、FUJI FIXを、使っているが。ただ、長期保存はしない方がよい。規定の処理能力を守ることと、気温の上昇する所に保存しないことだ。また、この液は酸性であるので、処理するときに注意が必要である。そのまま、下水道に流すようなことは止めたい。
あらかじめ、瓶に溶いて置いた定着液を、酢酸液を出したあとに、入れる。やはり、現像と同じで、気泡等が抜けずにムラを作らないように注意することと、指定の時間を超えないことである。どうも、経験では、うっかりして長時間定着をすると、粒子が荒れる様である。
定着液は、引き延ばしの定着と同じ液で問題ないが、FILMと兼ねることは出来ないので、明確に区別しておく必要がある。
定着がある程度出来れば、明るいところでFILMを確認する事も出来る。定着時間が少ないと後で、黄変色することがある。
水洗
定着液を排出し、タンクのままで流水で洗う。そうでないと、フィルムにきずがつくことが多い。チオ硫酸ナトリウムは、重いので、水循環を考慮して行いたい。時間が不足するのは良くないが、多すぎるとやはり、粒子が荒れるようである。
ステンレスタンクだと、逆さまにしてやっている方も多いと思うが、プラスチック容器では、ホースを中心に入れて、外側から排水するが、チオ硫酸ナトリウムが底にたまるので、注意が必要である。
乾燥
水洗が完了したら、乾燥促進剤を溶いておき、フィルムをくぐらせてから、そのまま干す。36枚撮りで、やく1.5Mあるので、それなりの高さは必要である。フィルムの下にバット等で、水受けを置き、フィルム面の水滴をスポンジで拭き取る。これをやらないと、あとで、水滴のムラがでる。当然、ほこりは禁物であるので、それなりの場所を選定したい。これで、乾燥したら、完了である。重し付きのクリップが市販されているが、無ければ洗濯ばさみを使い、何か下に重しを縛り付けて置けばよい。
ネガの整理
乾燥したら、ネガファイルにタイトルを付けて、しまう。タイトル、記事、撮影の日時等は、すぐ忘れるので、なるべく早く記入することが賢明である。