No125 田島秀男『夫婦馬』 423手 詰棋めいと31号


 本作は詰棋めいとで発表された。詰棋めいとが休刊状態になったので、看寿
賞選考時はまだ、結果発表がされていなかった。しかし、埋もれてしまうには
あまりに惜しい素晴らしい作品であった。選考委員から推挙、候補になり晴れ
て受賞となった。

【解図】
解説の便宜上、以下のように手順をまとめる。
『A1』左側の馬が5筋から9筋まで遠ざかる手順。
54馬、31玉、64馬、21玉、65馬、31玉、75馬、21玉、76馬、31玉、86馬、21玉、
87馬、31玉、97馬、21玉
『A2』左側の馬が9筋から5筋まで近づく手順。
87馬、31玉、86馬、21玉、76馬、31玉、75馬、21玉、65馬、31玉、64馬、21玉、
54馬、31玉、53馬、21玉、
『B1』右側の馬が3筋から8筋まで遠ざかり、13歩を打って、また、33に
    戻る手順。
43馬、22玉、44馬、21玉、54馬、22玉、55馬、21玉、65馬、22玉、66馬、21玉、
76馬、22玉、77馬、21玉、87馬右、12玉、13歩、22玉、77馬、21玉、76馬、
22玉、66馬、21玉、65馬、22玉、55馬、21玉、54馬、22玉、44馬、21玉、43馬、
22玉、33馬、21玉、

本作は馬鋸による歩剥がしである。その構成は緻密さを極める。手順を並べる
だけではその意味は把握しづらい。しかし、極めて論理的に出来ている。

73香成、87歩、同馬、22玉、77馬、21玉、76馬、22玉、66馬、21玉、
65馬、22玉、55馬、21玉、54馬行、22玉、44馬寄、21玉、43馬行、22玉、
33馬、21玉、(A図)
     (A図)


開き王手に歩を中合する。銀を取られないための応手である。そして、33まで
近づく。33に馬を置かないと左の馬鋸での変化42銀が詰まなくなる。
『A1』、(B図)
     (B図)


途中、左の馬の応手42銀は次のように詰む。
変化:42銀は同馬左、同金、22銀、41玉、42馬、同玉、33銀成、53玉、54金、
   52玉、43金、41玉、42成銀まで
左の馬を97まで移動した。詰方は99銀に狙いをつけているのだが、それには
二枚の馬で取りに行く必要がある。この次は右の馬を呼び出す。
43馬、22玉、44馬、21玉、54馬、22玉、55馬、21玉、65馬、22玉、66馬、21玉、
76馬、22玉、77馬、21玉、87馬右、12玉、(C図)
     (C図)


銀を取りに行く目的ではあるが、真の狙いは玉を
12に移動させる事であった。
いままで通り22玉なら次の手順で詰む。
変化:22玉は88馬右、同銀成、同馬、31玉、22銀、42玉、97馬、43玉、
   87馬、52玉、53歩、同玉、54馬、42玉、33成香、52玉、43成香まで
上の変化で重要な事がある。それは持駒に歩がないと詰まないという事だ。
銀を取りに行く時は必ず1歩を持駒にしていなければならない。

13歩、(イ)22玉、77馬、21玉、76馬、22玉、66馬、21玉、65馬、22玉、
55馬、21玉、54馬、22玉、44馬、21玉、43馬、22玉、33馬、21玉、(D図)
(イ)同飛は同成香、同玉、25桂、14玉、12飛、24玉、13飛成、35玉、
  24銀、25玉、43馬まで
     (D図)


13歩を決める事ができた。56歩を剥がす準備のため、馬を33に戻す。右の馬が
33にあって左の馬を53に呼び戻す事ができる。
『A2』、(E図)
     (E図)


左の馬が53まで戻ってきた。次は56歩のハガシだ。
43馬右、22玉、44馬右、21玉、54馬寄、22玉、55馬、21玉、65馬、22玉、
12歩成、(F図)
     (F図)


右の馬を65まで運べば、ハガシが可能となる。
(ロ)同玉、56馬、21玉、65馬、22玉、55馬、21玉、54馬行、22玉、44馬寄、
21玉、43馬行、22玉、33馬、21玉、(G図)
(ロ)同飛は33成香、同玉、25桂、23玉、56馬、14玉、15歩、同玉、26銀、同金、
  同馬、24玉、35金、14玉、19飛まで
     (G図)


56歩を剥がし、また、馬は33まで戻った。これだけの手順をつくさないと、
56歩は剥がせないのだ。同様の手順で次の67歩を剥がす。
『A1』『B1』『A2』43馬右、22玉、44馬右、21玉、54馬寄、22玉、
55馬、21玉、65馬、22玉、66馬、21玉、76馬、22玉、12歩成、同玉、
67馬、21玉、76馬、22玉、66馬、21玉、65馬、22玉、55馬、21玉、
54馬行、22玉、44馬寄、21玉、43馬行、22玉、33馬、21玉、(H図)
     (H図)


67歩を剥がした。次はいよいよ78歩だが、少し、注意が必要だ。
『A1』43馬、22玉、44馬、21玉、54馬、22玉、55馬、21玉、65馬、22玉、
66馬、21玉、76馬、12玉、(I図)
     (I図)


今までのように87馬を許すといきなり78歩を剥がされて早くなる。よって、
76馬の時に12へ逃げる。
13歩、22玉、66馬、21玉、65馬、22玉、55馬、21玉、54馬、22玉、44馬、21玉、
43馬、22玉、33馬、21玉、『A2』43馬右、22玉、44馬右、21玉、
54馬寄、22玉、55馬、21玉、65馬、22玉、66馬、21玉、76馬、22玉、
77馬、21玉、87馬、22玉、12歩成、同玉、78馬、21玉、87馬、22玉、
77馬、21玉、76馬、22玉、66馬、21玉、65馬、22玉、55馬、21玉、
54馬行、22玉、44馬寄、21玉、43馬行、22玉、33馬、21玉、(J図)
     (J図)


78歩を剥がした。33に戻れば、収束になりそうだが、その前に13歩を決めて
置かねばならない。まだまだ、一仕事あるのだ。
『A1』『B1』『A2』(K図)
     (K図)


ようやく、収束が始まる。易しい手順で紛れるところはない。
43馬右、22玉、33成香、13玉、25桂、14玉、13桂成、同玉、22銀、14玉、
25馬、同玉、36金、同玉、26金、46玉、57銀、45玉、35金、55玉、
44馬、65玉、66銀、同飛、57桂、64玉、74成香、まで423手
    詰上がり


詰みまで長い道程であった。本作の構成を振り返って見ると微妙な綾がある事
に感心する。13歩を決めた後、銀を取りに行く紛れがあるのだが、これは持歩
がないので、詰まない。一歩の有無で詰みと不詰を分けてあり、精妙な構成で
ある。作者の卓越した作品構成力を本作で改めて示した。

                       【解説:近藤真一】