金ヶ崎町の西方に駒ケ岳と経塚山に抱かれるようにひっそりとたたずむ沼がある、「八郎沼」である。海抜約870m、周囲900mの小さい沼である。沼まで行くには登山道が不備なことと、周辺は、「熊」の生息地なので、春先と、「熊」の冬眠前の秋など特に注意が必要な場所で、人がなかなか立ち入ることが出来ない場所にあることから、沼の淵に立った人は地元の人でも数少ない。標高1372mの経塚山,駒ヶ岳が頭上にそびえ、周囲の切り立った断崖、その奥に焼石岳、横岳が連なっている。ブナの森に囲まれ、秋になると紅葉が湖面に映し出され見事なコントラストを作りだす。沼を見下ろせる断崖に一等三角点がある。周囲の景観は、神秘的、荘厳で自然と手を合わせて拝みたくなる心境になるほどである。「八郎沼」にはいくつかの昔話の伝説がある。昔、八郎太郎と言う者が住んでいた。水を飲もうと谷川に降りて見ると、川に鯉がいたので、つかまえて焼いてたべたところ、急に喉が乾き、水瓶の水を飲む、あげくのはてには川の水まで飲み干してしまい、やをたまらなくなって、駒形湖に入って湖の水を泳ぎながら飲む、と言う有り様、やがて、八郎太郎の体は大蛇となって湖に没し、その沼の主になった。それからその沼は「八郎沼」と呼ばれるようになった。