<水中における光透過率実験>
アクアでまことしやかに語られている事がいろいろありますが、そのひとつに光の水中における透過率の問題があります。それは、おおよそ次のような事柄です。
1.水槽の底に効率良く届く光は、主に緑〜青である。
2.水中に届きやすい緑〜青の光を強くしてやれば水槽内を明るくでき、水草も良く育つ。
(ランプの高色温度化の理由)
3.赤い光は水に多く吸収され、水槽の底まで余り届かないので水草育成には重要でない。
しかし、私kasimaruはこの事に非常に疑問に思いました。
- もし、赤い光が届きにくいのなら水底の赤い魚やCRSは色が変わって見えるのではないのか?
- 高々30cmやそこらの水深で、本当に光の減衰(透過率の低下)が著しく起こるのか?
- 水草も植物なのにクロロフィルa、bが光合成に利用する赤い光(波長600〜700nm)があまり重要でないというのは本当か?
そこで、光が水の中をどの程度透過しているのか調査する実験を、余っていた30cm水槽を利用して行うことを思いつき実施しましたのでご報告致します。
<実験方法>
- 外乱光の影響を極力排除する為に、黒塗装をしたダンボール箱の中に水槽を置き、水槽の長辺(30cm)または、短辺(20cm)方向に蛍光ランプを置いて点灯し、水槽の反対側からスポットメータ露出計(輝度計機能)を使用して光源の輝度を測定し、水の有無による測定値の変化を測定する。
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- 光の色(波長)の違いによる透過率の違いを明らかにするため、バンドパスフィルター(分光フィルター)を通して同様の輝度差測定をして、色別(波長別)透過率を測定する。
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左から420nm、450nm、500nm、550nm、600nmBPフィルター。
- フィルター自体を売っていない波長660nmの光を調査する為に、赤色LED(発光ピーク波長660nm、半値幅20nm)を蛍光ランプの代わりに置き、同様の輝度測定を行う。
スポットメータは測定範囲が視直径1度のもので測定距離に関係無く被測定物の輝度を遠隔測定できるすぐれもので、途中の障害物による透過率の変化を輝度変化としてとらえる事が出来るうえ、輝度(Cd/m2)にも1対1で換算できるものです。
測定値は、EV(Exposure Value)値として出てきますが、絶対値測定の必要は無く、障害物無し(空気のみ)に対する相対比較が重要なので凾dVのみを考えれば良いことになります。
EV値が±1異なると200%、50%と言うことになります。(2^凾dVで算出)
使用蛍光ランプは、各波長の光を万遍なく含むJIS高演色性AAAのリアルルクス昼白色を使用しました。
測定する対象は、次の3種類です。
- 基準値(空気)
- 水槽ガラス(3mmガラスx2枚)
- 水槽ガラス+水道水
- 水槽ガラス+飼育水(1ヶ月以上無換水の水槽水)
(ア)のデータとの差凾dVを%に換算します。
<測定結果>
|
測定物 |
3mmガラスx2枚 |
水道水 |
飼育水 |
||||
|
フィルターNo. /波長 |
水深 (cm) |
凾dV |
透過率 (%) |
凾dV |
透過率 (%) |
凾dV |
透過率 (%) |
|
フィルター無 (FL20S N-EDL) |
20 |
−0.4 |
75.8 |
−0.3 |
81.2 |
−0.4 |
75.8 |
|
30 |
−0.4 |
75.8 |
−0.6 |
66.0 |
|||
|
BPB42 (420nm:紫) |
20 |
−0.4 |
75.8 |
−0.3 |
81.2 |
−0.7 |
61.6 |
|
30 |
−0.4 |
75.8 |
−1.0 |
50.0 |
|||
|
BPB45 (450nm:青) |
20 |
−0.4 |
75.8 |
−0.2 |
87.1 |
−0.6 |
66.0 |
|
30 |
−0.3 |
81.2 |
−0.8 |
57.4 |
|||
|
BPB50 (500nm:青緑) |
20 |
−0.4 |
75.8 |
−0.3 |
81.2 |
−0.4 |
75.8 |
|
30 |
−0.4 |
75.8 |
−0.6 |
66.0 |
|||
|
BPB55 (550nm:黄緑) |
20 |
−0.4 |
75.8 |
−0.3 |
81.2 |
−0.4 |
75.8 |
|
30 |
−0.4 |
75.8 |
−0.4 |
75.8 |
|||
|
BPB60 (600nm:赤) |
20 |
−0.4 |
75.8 |
−0.3 |
81.2 |
−0.4 |
75.8 |
|
30 |
−0.4 |
75.8 |
−0.4 |
75.8 |
|||
|
赤色LED (660nm) |
20 |
−0.4 |
75.8 |
−0.4 |
75.8 |
−0.4 |
75.8 |
|
30 |
−0.5 |
70.7 |
−0.5 |
70.7 |
|||
<データ分析>
まず、最初に測定値について説明します。
データ自体は分解能0.1EV単位で表示されますので、透過率の測定最小単位は約7%と比較的大きくなります。細かい%単位の測定は出来ませんが、傾向はつかめたと考えております。
- ガラス1枚あたりの透過率は−0.2EV=87.1%になる。
- 水道水の透過率は、光の色(波長)にほとんど影響を受けず、水深20cm、30cmともにガラスの透過率込みでも75%以上ある。
唯一、660nmLED、30cmデータのみ70.7%に低下しているが、波長が赤外域に近くなればなるほど光は吸収されやすくなる、透過率が低下する傾向が現れているものである。
ここで、ガラス2枚の透過率より水を入れた場合の透過率の方が高くなっているという現象が現れていますが、これはガラスのみの時は光学的界面(空気とガラス、水のような屈折率が高い高密度物質との境目)が4ヶ所あったのに比べ、水をいれた場合は2ヶ所に減るので、光の反射による減衰が減るからである。
- 1ヶ月以上飼育水の飼育水では、波長による透過率の違いがハッキリと現れた。波長500nmより短い光(青緑〜青〜紫)では、透過率が低くなっており、相対的に波長550nmより長い光(黄緑〜赤)では透過率の減少が少ないので、黄色、赤系の光が水底によく届くことになる。
これは、短い波長の光が散乱しやすく、透過しにくいという空や海が青く見える原因、逆に夕焼けが赤い原因によるものです。
<結論>
水深30cm程度では特定の波長の光が著しく減衰するということは無いが、こなれた水槽水では波長の短い緑〜青の光は散乱によって減衰しやすいので、逆に水底では波長の長い黄緑〜赤の光が主になることがわかった。ただし、こまめに換水をする水槽では波長の差異に無関係に届くものと考えて良い。
また、クロロフィルa、bが利用できる600〜700nmの光はほとんど減衰なしに水底に届くことがわかった。
つまり、アクアで囁かれる一般論とは正反対の結果となった。
<使用機器>
- 光源蛍光管:JIS高演色性AAA 20W管x2本
FL20S N−EDL:松下リアルルクス
- 赤色LED:φ5mm超高輝度LEDx18個 (LN289CUQ−45:松下)
ピーク発光波長660nm、半値幅20nm
- スポットメータ:ミノルタ スポットメータF
- 分光用フィルター:富士フィルム 特定波長透過フィルター(BPフィルター)
- BPB42 :透過ピーク波長420nm(紫)
- BPB45 :透過ピーク波長450nm(青)
- BPB50 :透過ピーク波長500nm(青緑)
- BPB55 :透過ピーク波長550nm(黄緑)
- BPB60 :透過ピーク波長600nm(赤)
- 30cm規格水槽 12L (NISSO)