誰でもわかる連続照明講座〜蛍光ランプ編
「第三回 用途によって異なるランプの種類」
ここまでランプの種類やスペックを解説してきたわけですが、ここからは用途別に要求される光やランプの種類について解説していきたいと思います。
水草育成や魚の鑑賞、海水魚飼育など用途によって必要なランプは異なり、さらには個人的な好みといった要素も加わりややこしいのですが、分野ごとに解説していきたいと思います。
水草に最適なランプとは?
まず最初は水草育成に適した光とランプの種類を解説しますが、その前に理解して欲しいのは、ここで解説するのは植物を育成するために”効率の良い光について”であることです。ぶっちゃけた話、緑のダイオードなどという極端な光でも十分に強く照射すれば育つことは育つようで、おそらくブラックライトのような特殊なシロモノ以外ならそれなりに植物は育つと思います。けして育つ・育たないという極端な話ではないので、いま使っているランプが高効率でないからといって嘆く必要はありません。植物の光合成
ご存じのことと思いますが、植物は光を浴びて光合成を行い、育成に必要な栄養を得ています。条件を満たすランプ
光合成は葉緑体で行うわけですが、光を受け止めるのは葉緑体の中に含まれる色素の役目です。
陸上植物や多くの水草など、高等植物はクロロフィルa、b、カロチノイド(βカロチン)という色素を使って光合成を行っています。
光合成は光であればなんでも行えるわけではなく、光合成の中心であるクロロフィルは、第一に650nmを頂点とする600〜700nmの赤い光を、第二に450nmを頂点とする400〜500nmの青い光を利用します。
人間が明るく感じる500〜600nmの緑色の光は、ほとんど利用されません。
これらは葉緑体の性質なので、陸上植物でも水草でも変わることはありません。
実際、光合成色素の研究にクロモなど水草が利用されることも多いので、水草だからと特別に考える必要はないでしょう。
さて、この性質を見る限り、単純に植物に光合成を行わせ、ひたすら効率よく育てたい場合は、赤と青の光を当ててやればいいということになります。
赤と青の光をどの程度の比率で当ててやれば良いかについては、農産物工場などの分野で研究が進んでおり、ダイオードを使った実験によって赤:青が10:1がもっとも効率の良い比率という研究結果が出ているようです*1。
この研究では単純な光合成の効率だけでなく、光の波長と植物の成長の関係も追求されているようです。
それによれば、赤い光は草体を大きくする働きがあり、青い光は茎や葉をがっしりと丈夫にする働きが、緑の光には開花を促進する効果があるということです。
また、緑の光を当てて開花したのち、赤い光を当てると開花期間が実に四倍にも伸びるという結果も出ているそうです。
植物は思いの外さまざまな光を利用しているようですね。
それでは、植物を効率よく育成するための条件を満たすランプとは何でしょう?効率と鑑賞と
前述の研究では発光ダイオードが利用されていましたが、これは必要な波長をスポット的に得られるなどメリットも多い反面、明るさが不足ぎみな上に非常に高価ということもあって、現状では現実的とはいえないでしょう(個人レベルでは)。
では現在もっとも普及している三波長型ランプはどうでしょう?
このランプは、青の光については400〜500nmを十分にフォローしているのですが、赤い光は610nm前後に集中していて、肝心の650nm前後はほとんど含まれていません。光合成に必要な赤い光は600nm〜700nmとはいえ、有効な光は650nmを頂点として山形のカーブを描き、600nmや700nmに近い光はあまり役立ちません。
ということで、三波長型は効率の面ではイマイチということになります。
植物育成用はどうでしょうか?
メーカーによっても違うのですが、さすがに育成をメインにしているだけあって光合成に必要な赤と青の光はしっかりサポートされています。また、開花を意識してか若干の緑色光もサポートしているようです。
効率の面では問題ないでしょう。
アクアリウム用としては普及していませんが、高演色形ランプはどうでしょう。
正確な色を表現するという目的から太陽に近い分光分布を持つランプですが、このランプは650nm前後をピークにほぼあらゆる波長の光をまんべんなく含んでいます。
育成の効率の面でも問題はないでしょう。電球色の製品ならば、赤・青の比率も10:1に近く理想的といえます。
このほかにも食肉用などのランプでは、赤のピークが650nm前後で非常に効率的な分光分布を持つ製品もあるので、要チェックです。
結論として植物育成の効率が良いランプは植物育成用や高演色形ということになりそうですが、水槽でもこれらを使えばいいのでしょうか?鑑賞と個人の好み
実のところ、そう単純ではありません。
農産物工場ならいざしらず、水槽は人間が鑑賞するためにあるものですから、魚や水草が美しく映える照明で無いと困ります。
光合成に最適な赤・青 10:1の光は確かに効率の面では良いかもしれませんが、これを水槽に照射しても、大半の光は植物に吸収され、非常に暗く不自然な色合いになってしまいます。
これでは水草に癒されるどころか、陰鬱な気分になるのが関の山でしょう。
これは植物育成用ランプにもいえることで、鑑賞面を考慮していないランプだけに、水草の緑は非常に不自然に見えます。
また、非常に暗いというのも欠点でしょう。
それでは鑑賞面と育成効率の双方を狙えるランプは無いのでしょうか?
各ランプの特性を見る限り、この条件を満たしているのは高演色形ランプということになりそうです。
このランプは色が正しく見えることを狙っているだけに、少なくとも不自然な色彩に見えることはありません。
また、赤い光のピークは650nm前後にあり、明るさも三波長形と植物育成用の中間程度と十分実用範囲になります。太陽光に近いスペクトルを持つというのも、ナチュラル指向のアクアリストにとってはメリットでしょう。
現時点では、この高演色形ランプが鑑賞と育成効率のバランスがもっとも良いランプと考えられます(もっと良い製品があれば情報提供お願いいたします)。
さらに育成効率を求めるならば、高演色形ランプの電球色や、食肉用ランプを混ぜるのも良いかもしれません。
若干水景が赤くなるのが欠点ではありますが・・。
ここまでの説明で鑑賞面と育成効率のバランスが良いのは高演色形ランプであるという説明をしてきました。追加
しかし、最初に説明したようにこれは”効率”を考えたもので、他のランプでも水草は十分に育成できます。
従って、より個人の好みを優先したランプ選びをしてもまったく問題はありません。
実際、高演色形ランプは”色が正しく見える”ランプではありますが、正しい色が美しいとは限りません。
たとえば、三波長形ランプのように緑の光を多く含んだランプを使うと、水草は非常に鮮やかな緑に見え、水草水槽は非常に美しく見えます。
また、三波長形の場合は電球色(暖かみのある色)、昼白色(日中の光)、昼光色(さわやかな光)など色温度の違う製品が用意されており、好みに応じて選択することもできます。
一般家庭用よりさらに青白い水景が好みという場合は、アクアリウム用に販売されている高色温度ランプを選択してもよいでしょう。
効率と鑑賞、そして自分の好みを考え、さまざまなランプを選択、あるいは組み合わせて使っていくことが大切ということです。
今回は植物育成の効率について解説しましたが、このように効率を追求する必要性のある水草は、一般に陽性水草といわれるものです。
パンタナルの湿原地帯など強烈な太陽光を朝から夕までタップリ浴びる環境に育つ植物で、こうした水草は強い照明が無くては育ちません。
一方、あるメーカーが宣伝で紹介しているような、一日のうちほんの数時間しか光が当たらない、あるいは終日直射光が当たらないようなところに生える水草は陰性水草といって、照明を意識しなくても十分育ちます。
アヌビアスやクリプトコリネ、シダ類などがこの陰性水草に分類されます。
*1
NHK教育 サイエンスアイより
東海大学・開発工学部教授 高辻 正基氏の研究