その3 「ある1日の始まり」
今、この文章は、夜が明けきらない早朝、とある牧場あとの山に囲まれた草原の真中で書いています。日中は、Tシャツ1枚でも汗がにじむような初夏を思わせる気候だったのが、早朝はまだ、息が白むかのような寒さが残っています。
ジャンパーと、湯気のたつブラックティーが、草原の真中で椅子に腰掛けてじっとしているこの一時を過ごさせてくれています。
まわりはまだ寝静まっていて、小鳥が飛び交う以外は何も動かない、まるで時間が止まっているかのような世界で、ブラックティーから立ち上る湯気だけが静かに揺れ動いています。
ほんの数分前、心地よい騒がしさに目を覚まし、自分がテントの中にいるという現実を思い出しましたが、あまりの心地良さに現実なのか幻想なのか一瞬ためらう時間が有りました。
数十なのか数百なのか頭の中では数えられない多くの小鳥達が、思い思いの鳴き声を競い合っているかのようです。
小鳥たちと同じ世界に入りたくて、寝袋を抜け出し、今、熱い紅茶をすすっています。
33回目の誕生日の始まりです。