その10 「大物」


中学生の時、ライギョ釣りが流行りました。
そんな時は日曜日になるのが待ち遠しいものです。
ある日、近所で、粗大ゴミとして小さな風呂桶が捨ててありました。
その前を通りすぎようとした時、ピカッとひらめいてしまいました。
そうです。 ライギョを釣ってきてこの風呂桶で飼ってやろう!
とりあえずその風呂桶を家の玄関前まで引きずって帰り、水を張ってセット完了。
大型水槽の出来あがりです。
こうなると、いてもたってもいられなくなり、日曜日を待ちきれず土曜日の午後からライギョ釣りに出かけました。
こんな時にはなかなか釣れないというのが人生の難しいところなんですが、この時には何と簡単に釣れてしまったのです。
しかも70cmの“大物”が。
こんなでっかいのが釣れなくてもいいのに。
やっぱり人生は難しい。
この日はこの大物1匹しか釣れなかったので、仕方無しに少々窮屈な思いをさせてしまうなあと思いつつ、ゴミ袋に入れて持ち帰りました。
風呂桶、いやいや立派な大型水槽に入れてみると思ったよりも窮屈さを感じない。
ウンウンいい感じ。
日が暮れてライギョが見えなくなるまで風呂桶の前にしゃがみこんでいました。
数日後・・・。
この日は家庭訪問の日です。
私の担任の先生は60歳近い小柄な女性教師です。
地図を見ながらきょろきょろと歩き回り、やっと私の家を見つけました。
見ると、玄関前に風呂桶が横たわったいる。
なんだこれ?とのぞきこむと、巨大なライギョと目が合ったのか合わないのか。
ヒャッ! ドテッ。 こけてしまいました。
ピンポ〜ン 「ハ〜イ」
「そのお風呂に入っている魚はどうしたんですか?」
これが家庭訪問の記念すべき第一声です。
「息子が釣ってきたんですが・・・。」
「息子さんは将来絶対“大物”になりますよ!」
(あとがき)
たまに母親に会うと、今だにこの話しを聞かされます。
「あんたはいつになったら大物になるんやろねえ。」
親子で先生の予言が当たる日を心待ちにしております。
〜おわり〜