その17 「IT革命バンザイ!」

失業率、倒産件数、本当に厳しい経済環境が続いています。
そんな中、一時のバブル的なIT関連株の高騰は落ち着いてきているものの、IT関連産業への投資、期待感は依然として大きなものがあるようです。
政治家までIT産業は「日本経済の救世主」というような意味合いの発言をしています。
IT産業が今後どんどん発展していけば、日本はどんな社会になるのでしょうか?
「流通」という観点から、ここに一つの仮説を立ててみましょう。
IT産業が発展していくと、既存の流通形態が最も大きな影響を受けるでしょう。
インターネットショッピングを始めとし、メーカーから消費者への直販システムがどんどん普及、一般化すると、ムダな流通経費がかからなくなり、その結果物の価格が安くなります。
特に、CDや出版物など、物理媒体が必要であった“情報”を扱う商品などはその顕著な例でしょう。
ざわざお店まで足を運ばなくても、24時間いつでも自宅に居ながら買い物が出きるようにもなります。
オンラインのタイムリーな情報管理が個人レベルまで徹底されていくと、ムダな流通在庫が減り、販売機会の損失も防げます。
これも価格を安くする要因となります。
消費者にとっては良い事づくめです。
企業の仕入れ形態も、メーカーから小売点などへの直販体制が一般化するでしょう。
IT産業の発展による影響は、雇用と設備投資の増大にもつながります。
IT産業という新しい産業形態が生まれるということは、当然そこに新たな雇用が生まれ、設備投資が増大します。
新たな雇用が生まれ、設備投資が増大すると、他の産業を含めて失業率が低下します。
物の値段が安くなり、場所や時間に縛られること無く商品を購入できるようになると、消費が活発化する。
雇用,設備投資の増大により失業率が低下する。
IT産業発展の結果として、ムダを無くした、非常にスリムで効率的な経済構造が出来あがります。
IT革命バンザイ!
世の中が注目、期待するのもわかります。
しかし、ちょっと待ってください。
日本という国は、ムダの固まりで成り立っているような国ではなかったでしょうか?
物流が変わり、企業レベル,消費者レベルでの直販体制が一般化することにより、間にいる物流業者はどうなるのでしょうか?
商品はデッドストックとして処分される流通在庫を見越した価格で販売されています。
それら処分されるムダな流通在庫にも“生産〜物流〜処分”という流れで経済活動が行われています。
そこでの雇用,生産,消費はどうなるのでしょうか?
CDや出版物など、情報を扱う商品が物理媒体から分離すると、物理媒体の生産、物流、販売に携わる企業等の雇用,生産,消費はどうなるのでしょうか?
これらのような雇用が無くなったとしたら、それと同等の消費も無くなってしまいます。
生産者は生産活動の対価を手に入れれば、消費者になるのです。
ムダが無くなり、スリムで効率の良い経済構造というのはなるほど理想でしょう。
しかし、ムダの中から生まれてくるものは非常に大きなものです。
ムダが無くなることによるGNPへの影響は無視できるほど小さなものではないという事を理解しておく必要があるのではないでしょうか。
ムダの増大と人間の欲望の増大は常に正比例しているように思います。
今後ますます人間の欲望は増大しつづけるでしょう。
増大する欲望を野放しにしたまま、ムダだけを無くしてしまうとどのような世の中になるのでしょう?
ムダを無くしたスリムな経済構造が形成され、それでも笑顔の絶えない日々を送れるような社会というのは実現不可能なただの幻想なのでしょうか?
経済成長というお題目を一度白紙に戻してみると、今まで見えなかった何かを目にする事が出きるかもしれません。
〜あとがき〜
IT産業が発展したその先に何があるのか。
一人のどこにでもいる普通のおっちゃんの妄想を文章にしてみました。
この妄想がただの妄想であるようにと願いながら、今日もキーボードをたたきつづけています。

〜おわり〜