今からあらん限りの筆力を尽くして、あなたをその時その場所へ誘います。
さてあなたは今、夜の阿真ビーチにやってきました。宿から借りた懐中電灯を頼りにビーチへおり、砂浜に腰を下ろします。立て膝をしそれを腕で抱えてから、灯を消しました。
あたりがすっと闇に沈みます。 すると……
足下にはぼんやり白くかすむ砂浜、少し先から黒い海が始まっています。そのまま視線を起こし先を眺めると、遠くには、深い藍色の空をバックに、黒々とした島影が横たわっていました。嘉比島です。
あ、島の右側の岬で一瞬、何か光りました。じっと目を凝らしていると、また光が現れて消えました……灯台です。「ロマンティックだなぁ」思わずあなたは呟きます。そしてさらに右へ視線を転じると、ええっ?
真っ黒な海に、まるでスポットライトを照らしたように、光の筋が広がっていました。「あ!」と思って空を見上げると、そこには眩しすぎるほど明るい半月が浮かび、神々しく海を照らしているのでした。
三角に切り取られたように浮かび上がる海面。そこで揺れるさざ波のてっぺんからは、まるで魚がシャボン玉
を吹いているかのように、真珠のような白い粒がポッと飛び出ては、すぐにきらめいて消えていきます。
無数の真珠が現れては消えていく波間……月光がさすところだけの魔法です。「ますますロマンティックだなぁ」あなたの頭の中には松田聖子の「秘密の花園」が流れてきたことでしょう。はっきり言ってブチ壊しです。
しばらく魅せられたように月と真珠を眺めていたあなたは、ふと、ここに何をしに来たのかを思い出します。そうです、星空を見に来たのでした。「どれどれ」と、あなたは空を見上げました。
……と、ちょっとわざとらしかったですね。当然、嘉比島のシルエットを見た時から気づいていたことと思います。少しでも空が目に入ったら無視できないほど満天なのですから。
まるで天球儀をすっぽりかぶったみたいなのです。今にも星がぱらぱらと降ってきそうな、手を伸ばせばつかみ取れそうな、すぐ、すぐそこに数え切れないほどの星があるのです。よくドラマなどで「嘘くせ〜」というような電飾の星空
がありますが、いえいえ、あれは嘘くさいのではなく、実にリアル。ただ皆がリアルを知らないだけ。リアルな満天は、星が大きく密で嘘みたいに輝いているのです。
あなたは突然、わけもなく涙がこみ上げてくるのを感じます。そんな自分に軽く驚きつつも、おさえられない涙。「星空を見て泣いたなんて、恥ずかしくてホームページには書けないな」ちょっと照れながらも、その後、あなたはしっかり泣き続けるのです。
と、その時! くいっと星が流れました。細くて小さいフープ・ピアスがきらりと光るように小さく短く。え? と思ってますます目を凝らすと、もっともっと星が見えてきました。黒い空間にしか見えなかったところもどんどん星が増えます。そして流れ星もまた。あと3個見たら腰を上げよう、あと3個見たら……。
そして数えること17個目、なんと星は夜空を走りました。くいっと小さくではなく、つつーっと尾を長く引き、一直線に右から左へと。
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