★2004年3月★

☆3/3(木)
 朝からヘリコプターがうるさいなー。と思っていたら、コクド前会長・堤義明容疑者、逮捕。

☆3/5(土)
 中野順一の『セカンド・サイト』(第20回サントリーミステリー大賞受賞作)、予知能力を持つキャバクラ嬢(キャストという)を軸に物語が展開して、わりとおもしろかった。

☆3/7(月)
 飛浩隆(とび・ひろたか)の『象(かたど)られた力』、おもしろかった。
 「自分のまわりにどのような力が作用しているか、計測も数量化もできなかった時代の人間は、かたち(かたち:傍点)として外部世界を把握し、認識したんです」。
 失われた感覚を呼び覚まそうとする。
 こういう作品を読むと、日本SFの世界は、ほんとに豊饒だと思うし、こういった作品を楽しみ評価するジャンルSFの読者は懐深いと思う。

☆3/9(水)
 このところ、買うものがないユニクロですが、メンズのリングデニムの生地がいいなと思った。ウーメンも作ってくだされ。

 ユニクロには1年半、ヤフーオークションには4年半ほどハマッたが、いったん少し考察しておきたい。

 個人的には、エルメスを最後に、ついに、絶対に欲しいモノがなくなった――という状況が前提としてある。

 ユニクロは、自主企画(プライベートブランド)製品を製造から小売りまで一貫し、製造を主に中国で行うことによって、そこそこ良いカジュアルウエアをぐんと低価格化。
 さらに、週末のセールや、見切り品の値下げ、不必要な接客をしない(人件費の削減にもなる)など、スーパーマーケット方式ともいえる販売方法を、アパレル業界で確立。

 ヤフーオークションは、文字どおりオークション方式だが、ゲーム性が徹底して、見る目と根気と運があれば、最上に良いものを最安値で買うこともできる。ダマされたかも…どんなのが来るのやら…とヒヤヒヤ感を味わうのも、おもしろい。

 この2つの方式は、欲しいモノがない状態の人々の消費行動を後押しする。

 そして、最後まで残るのはヤフオクだろう。
 一つのモノに何度も値段が付いて、何人もの人たちの間を渡り歩いてゆく。
 古着屋、中古屋の、個人レベルでの遂行。モノを製造する側としては儲からなくて困るのだけど、これは実は環境にやさしい(モノという名のゴミに埋もれないための合理)。

☆3/13(日)
 うちの部屋で紛失していることがわかっているもの――1キャラット強のアップルグリーンのキャッツアイのルース。不透明だが、そのかわりシャトヤンシーくっきりのもの。それから、アナスイの新品のカードケースと財布。
 おーい、でてこーい。

☆3/23(木)
 水間碧(みずま・みどり)の『陰喩としての少年愛 −女性の少年愛嗜好という現象』(創元社)読了。

 女性の少年愛嗜好が、母からの分離の過程で現れる現象であること、近代の母(特に日本の母)が、とっくに崩壊していたこと、さらに、近年、父性原理もぐずぐずに崩れていること――こういった事態が諸々の作品群の分析と共に一気に了解されて、とてもおもしろかった。

 中で触れられていた、ユルスナールを初めて読んだ。『東方綺譚』(白水Uブックス)。すごくいい!
 とくに「老絵師の行方」がすごい。芸術家と芸術がどういうものか、よくわかる。

 帝に捕らわれ、愛弟子が斬首されるのだが、老絵師は、「弟子の血が緑の甃(いしだたみ)につけた美しい真紅の汚点(しみ)を感嘆して眺め」るのである。その後、老絵師の筆によって愛弟子は蘇り、絵の舟に乗り、「この蒼い翡翠の海に、永久に姿を消したのであった。」

☆3/25(金)
 楽天市場で、商品はいいんだけど、対応がダメなお店に初めて当たってしまった。でもこういう店のオークションって、信じられないぐらい安く落札できたりする・・・。やっぱり商売って才能なんだなぁと思う。