SPレコードコレクター千一夜物語
〜全国のSPレコードコレクターのコレクションルーム探訪〜

日本全国に散らばるSPレコードコレクター。集めるジャンルは純邦楽から世紀の名演奏まで多種多様で、集めるスタンスも管理方法も各々違い、またその蔵盤量も驚くべき量です。
ここでは管理人がコレクター宅に潜入、あちこち探検してきた結果をご報告。


も く じ

●第一夜 岡田則夫氏 第二夜 M氏  

★第一夜 岡田則夫氏(大衆芸能研究家・埼玉県)

SPレコードを蒐集しているコレクターの中で、ミュージックマガジン社刊の「レコードコレクターズ」連載『蒐集奇談』に目を通したことが無い人は居ないのではないでしょうか。

岡田さんは寄席演芸関連のレコード、特に落語を主力に集めておられるコレクターですが、その蒐集範囲はいつしか漫才から色物・舞台演劇・書生節・大道芸・民謡・流行歌・コミックソング・社歌・演説と、所謂「日本物いろいろ」コレクターと言っても過言ではありません。

 
●玄関すぐの流行歌のストック   ●目を転じると演芸関係の稀刊本がズラリ

岡田さんの御宅は埼玉県のとある郊外、チョット前に開発されたと思われる住宅街の中にたたずんでいます。一見してコレクター宅とは思えない、奥さんが丹精込めたガーデニングに目を癒されるその御宅に一歩入るとまず目に入るのが「レコードラック」。ここに何が入っているかは存じません(笑)引き出しの中は敢えて開けた事は無いですが、長年集めているコレクターの御宅の玄関には大概ひと棹はあるんです。

すぐ脇のコレクションルーム兼書斎への入り口から入ると、まずスチールラックにひしめき合っている流行歌のレコード。
レコードコレクターズでご自身が書かれているように、特別に誂えた紙箱に会社別や年代別、番号別などにキチンと分けられている。

さて、正面へ進むと寄席演芸関連の珍本・稀刊本・貴重な資料等が本棚にひしめき合い、これも岡田さんのコレクションの目玉でもあります。

 
●上記の本棚から撮影。PR盤と演芸周辺   ●「エノケンP」「二村・ワシ印」「ロッパ」等のインデックスが

さて、こっから先が岡田さんの本筋のコレクションとなるわけですが、まず画像の通りに社歌・PR盤関係だけで棚が一杯。長年集めたこれらのレコードは今となっては集めるのに苦労する物ばかりです。

そして「エノケン」「古川ロッパ」「二村定一」と人気のレコードから、寄席演芸コレクションの始まりです。

 
●その先へ進むと寄席演芸のレコードが   ●反対側から撮影

スチールラックに囲まれたメインルームには、演芸関係のレコードだけで埋め尽くされていて、とてもひと箱づつ確認するのも苦労するほど数があり、その奥深さに驚かされます。

 
●書生節の一部   ●落語に至っては全て画像に収めるのは不可能でした

連載を読まれている方はご存知だと思いますが、岡田さんはレコードを集め始めて約40年弱。日本全国自分の足でレコードを探し求め、ついに先年全ての都道府県にてレコードを手に入れるという自身の記録を達成されたとか。「あの頃はねぇ」といつも昔の武勇伝を聞かせてくれる岡田さんには、これからも記録を塗り替えてもらいたい物です。

今回カメラに収めたのは1階にあるコレクションルーム兼書斎のみで、他にも居間の箪笥や2階の部屋、はたまた先年増築した屋外の納戸にもレコードその他の資料がひしめき合っている状況。徳山lの遺品も岡田さんの収蔵品です。

岡田さんのコレクションは寄席・演芸物のレコードを中心に、CD等の復刻盤に資料提供されています。是非店頭で復刻盤を手に取られたら名前を探してみてくださいね。


★第二夜 M氏(楠木繁夫、藤山一郎研究家・埼玉県)

人気のある流行歌レコード。これらをコレクションしている人は全国沢山いますが、今回は楠木繁夫・藤山一郎を注目して集めてらっしゃるMさんのコレクションルームを拝見してみましょう。

 
●藤山一郎グッズの数々   ●古関祐而のサインと藤山出演のポスター

Mさんのコレクター歴は約40余年と前回の岡田さんよりも長く、またその蔵盤の充実ぶりも日本屈指の研究家です。Mさんのコレクションの柱は「楠木・藤山のみ」でして、これからご覧いただくレコードラックの全てがこの二人のレコードで埋め尽くされています。

 
●実筆サインと珍しい戦前のレコード広告   ●月報類等のほんの一部

近年新築された御宅にお邪魔すると、階段脇の小さなお部屋に通されました。ここが専用ルーム。

広さ約4〜4畳半程度のスペースを活用した実に簡素で有効的なコレクションルームです。まず部屋に入ると藤山一郎グッズが散見でき、しかも非常に整頓された室内に脱帽してしまいます。

 
●楠木繁夫の変名盤コレクションラック   ●マイナーを網羅しています

さて、まず壁面にあるクローゼットを開けて見ると、ご覧のようなラックにびっしりのレコード。
これらは楠木繁夫の変名盤ばかりで、テイチクやコロムビア・ビクター以外のレコードが収蔵されています。楠木繁夫は変名のデパートでして、その数も相当数あり未だ解明されていない物もあるかもしれません。

 
●藤山一郎と楠木繁夫名義のコレクションラック   ●楠木繁夫最後の吹込みとされているレコード

楠木繁夫のレコードで何か珍しい物を撮影させてくださいとお願いした所、最後の吹き込みとされる「ダイハツ音頭」NHRレコードをを拝見させていただきました。

 
●藤山一郎の充実振り   ●「燃ゆる大空」のレーベルアラカルト

さて、藤山一郎のコレクションを見せていただきましょう。「燃ゆる大空」のレーベルには5種あるそうで、その全てをカメラに収めてみました。ラックにはコレクター垂涎のテイチクN盤もぎっしり。。。

 
●藤山一郎幼少時の録音「春の野・山の祭」増永丈夫   ●歌詞カードを整理してあるファイルの数々

何か珍しい物をとお願いした所、一番上に仕舞ってあったレコードをと引き出してみると、スタークトンの旧吹込み盤。ご存知藤山一郎が幼少時に吹き込んだ童謡のレコードが。Mさんのコレクションはこの旧吹き込み盤から後年のシングル盤(CD復刻盤も)まで全ての録音物に至ります。

 
●特殊盤「二引社歌」藤山一郎   ●ご存知「人生劇場」と「愛の子守唄」の歌詞カード

Mさんのコレクションはレコードだけに留まらず、歌詞カードから藤山一郎・楠木繁夫と記名のある印刷物は全てが対象物で、その筋の研究家では第一人者と言っても過言ではありません。

Mさんのお兄さんは、三橋美智也の研究家として著名でして(近年物故なされました)、かくいうMさんがこの道に入られたのも「兄が三橋を研究しているから自分も」と言うことで、まず楠木繁夫に注目して集め始めたそうです。ちなみに藤山一郎を集めるきっかけは「楠木繁夫と類似のニュアンスの歌手」「楠木の片面に藤山一郎が多い」という事からだそうです。
(灰田勝彦コレクターの中にも、片面に渡辺はま子のカップリングが多いとの事から集めている人もいます)

Mさんに昔の話を聞いてみました。

「昔はこんなレコード集めている人は自分以外居ないと思ってね。まだ高校生時分だったけど集める場所は浅草のイサミ堂と宮田レコードくらいしかなくて。確か東京オリムピックの開会式の日にイサミ堂にレコード買いに行って、帰りに空に花火が上がっていたのを記憶しているよ」

当時は骨董市も少なく、また古物商でレコードを手に入れるという事も大分後になってから知ったそうで、その時分に手を広げていればもっと充実していただろうと。
関西のレコード交換会(音盤倶楽部とは別)のグループの初期メンバーで、現在精力的に活動されている全国のコレクターの中でも古参の部類に数えられるそうで、所謂流行歌SPレコードコレクターの端緒に位置する存在です。

かつてナツメロブームの頃には復刻盤製作で音源提供もなさっていたMさん。昨今の下火になったブームをよそに、研究熱は冷めるどころか益々好調に。

(第二夜おわり。第三夜準備中)


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