「アンドロイドが真夜中に降ってきたら」 第26話










“何?”


 緊急時以外は掛けるなと言われていた携帯に電話をすると、ワンコールで宇佐美先生が
出た。


「KANAは、元気ですか?」


“ええ、元気よ。まさか、用件はそれだけじゃないでしょうね”


「あの……学校の友だちをKANAに会わせたいんですけど……日曜日、会いに行っても
いいですか?」


“……”


「先生?」


“あなたね……まったく、余計なことばかりしてくれるわ。いつ誰にどこまで話したの?
 多川と白貫と、他には?”


「……二院ですけど」


“二院って、あの二院? 学校一の秀才と伊月が友だちだったなんて、初耳よ”


「1年のとき、一緒のクラスでしたから」


“ふむ。まーいいわ、そのことは。で、その3人にどう話したの?”


「難病の手術を控えてる親戚の女の子がいるって……」


“その難病の子が居るの、私の家なんだけど”


「そ、そこはあれですよ。先生の巧みな話術で誤魔化してください。KANAの家ってこ
とにするとか」


“……多少は後先考えて行動なさい”


「駄目ですか?」


“うーん”


「……」


“いいわよ、連れて来ても。今更、KANAちゃんのことが知れたところで、計画に影響
ないし”


「計画、ですか?」


“そーよ。どれだけ時間がかかるか判らないけれど……”


「……?」


“じゃー、切るわよ。やらなきゃいけないことが、山積みだから”


「待ってください」


“何?”


「KANAは、本当に元気なんですよね?」


“ぼちぼちね”


「……さっきと言ってることが違いますけど」


“あらそう?”


「声、聞けませんか?」


“残念だけど、無理”


「一言でいいですから」


“んー”


「先生」


“……進さま”


「……」


“これでいい?”


「冗談は止めてください。ぜんぜん似てないですし」


“……チッ”


 今、舌打ちしたよな、この人……。


「そんな子どもだましに引っかかるヤツいませんよ。もしかして、KANAに……」


“あーうるさいうるさい。忙しいんだから、切るわよ”


「なにか隠してませんか?」


“山ほどね。当たり前じゃない”


「……」


“KANAちゃんは近くにいないの。だから取り次げないの”


「……そう、ですか」


“何度も言ってるでしょう、私を信じなさい、って。ぜんっぜん役に立たなかった伊月の
代わりに、私は頑張ってるんだから”


「……う」


 それを言われると、何も言い返せない。


“じゃ、週末ね”


「……わかりましたよ」


“不服そうね”


「……」


“あ、そうだ。ねえ、伊月”


「……なんですか」


“動物園で、KANAちゃんの体に変なことしなかった?”


「してません!」


“白状なさい。何かあったんでしょう?”


 ふと、KANAを抱きしめたことを思い出し、


「し、て、ま、せ、んっ!」


“ムキになってるところが怪しい”


「どこがですか。KANA相手に、オレが何するって言うんです?」


“……あ。そーいうことじゃないんだけど”


「……」


“KANAちゃんの体質に急激な変異が見られたの。物質交代って言葉、知って……るわ
けないわよね”


「……ブッシツコウタイ?」


“説明する時間がもったいないから、今のは忘れて”


「オレはまた、ベンチ外ですか」


“スタメンに入れると、勝てる試合も勝てなくなるからね”


「……あんまりです、それ」










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