「アンドロイドが真夜中に降ってきたら」 〜 Past 06 〜










 ──。



 ──に、行ってみたいです



 は?



 それだけ?



 はい



 あ、あと



 ご飯が食べてみたいです



 ……。



 ……あのねぇ、KANAちゃん



 はい?



 このままだと、あなたはもうすぐ死ぬの



 わかってる?



 はい



 死ぬってことは



 この世界から消えてしまうこと



 そして、同時に、あなたが見ているこの世界が、消えてしまうってことなのよ



 理解しているつもりです



 あなたは全然生きてない



 これっぽちも、ね



 そうやって本心を隠して



 人の反応を伺いながら喋るのやめなさい



 私はね、



 あなたを生かしたいの



 ……わたしは



 生きるということが、どういうことか、まだわかりません



 ただ、



 待って、



 また倒れられたら困るから



 ……。



 残したかったのよね、あなたは



 違う?



 ……どうして



 どうしてかしらねー



 私にはわかっちゃうのよね



 ……。



 生きたいのか、死にたいのか



 考えなさい



 頭が割れそうになるくらい、懸命に考えなさい



 あなたには、今まで何一つ楽しいと思えることなんてなかったかもしれない



 この先も、つらい目に遭うかもしれない



 でもね、



 生きていれば、いいこともあるわ



 絶対に



 なぜなら、あなたは、私に巡り会えた



 他の誰でもなく、



 この私にね



 それがまず何よりの幸運よ



 ……ですが、わたしは、



 宇佐美さまに会いに来たのでは……



 でも、結果、ここにいる



 そうよね?



 ……それは、そうですけど



 私は、あなたが頼った伊月に頼られて、ここにいるの



 その『私』という可能性を



 無駄にしないで



 あとは手繰り寄せるだけじゃない



 何を迷うの?



 枷を外して、



 伊月に打ち明けたいんでしょう?



 フられて玉砕したら、私が一緒に泣いてあげる



 ……宇佐美さま



 伊月って、今はあんな感じだけど、



 小学生のころ、妹みたいに仲良かった子が死んじゃって……



 何年も友達のいない暗ーい子だったそうよ



 でもね



 歳月が癒してくれた



 時間は偉大よ



 必ず、あなたのことも癒してくれる



 あなたに関わった人たちは、



 みんな、あなたのことを好きみたいだし



 ……嘘、です



 嘘じゃないわ



 わたし、



 なにもできません



 みなさんに、なにもしてあげられません



 なーんにもいらないわ



 私が望むのは



 あなたの幸せ



 他の人たちもきっとそう



 あなたが元気でいてくれたら



 みんな、幸せなの



 ……。



 でしたら、



 やはりわたしは、手術を受けたくありません



 みなさんを悲しませてしまうのなら



 早いほうがいいと思います



 ……。



 ……うーん



 Post-Traumatic Stress Disorder かしら



 ……?



 その頑なさは、病的ですらあるわね



 私はね、あなたを手術することで生じる『時間』が欲しいの



 時間……ですか



 そうよ



 そのために、手術を受けて欲しい



 ……。



 ……怖い、です



 きっと、失敗します



 言ってなさい



 あなたを創った人が、どれほどの天才か知らないけど



 わたしは、



 あなたをそんな身体にした人に負けやしない



 ……。



 ……わたしを創った人は、その人生を犠牲にして、



 わたしを救おうとしてくれました



 たとえそれが、



 間違ったやり方だったのだとしても、



 わたしを苦しめただけだったのだとしても、



 最後まで、



 わたしのことを想ってくれました



 だからよ



 だから、許せないの、私は



 あなたを創った人物は、



 あなたのことを手放すことができなかった



 あなたのことを想うあまり、



 最後まで、決断できなかった



 ……宇佐美さま、



 あなたは……どこまで……?



 多分、あなたが想像している以上のことを知ってるわ



 そう……ですか



 これでも、任せられないのかしら



 ……。



 ……申し訳ありません



 わたしは、



 進さまのところに、帰りたいです……










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