「桜夜」 - sakuya -





 第20話 - Youko Kurokawa -






 痛い。



 体中が痛い。



 でも私は走る。



 学校に向かって。



 このまま走って行けば、なんとかホームルームに間に合いそうだったから。



 私はそれだけの理由で一生懸命になって走っていた。



 学校に何かがあるわけではないけれど。



 私は、走っていた。



 地面を蹴るたびに、体のあちこちから激痛が生まれてくる。



 絶え間なく。



 この痛みは、私の一部であり、決して取り外すことができない、枷。



 痛い。



 痛い、と叫びたい。



 いっそのこと、このまま全身が砕けてバラバラになってしまえばいいのに。



 私は、さらに走る速度を上げる。



 壊れてしまえと心の中で叫びながら、痛みに耐えながら、ひたすら走りつづける。



 だんだんと体の感覚が失われてくる。



 そして。



 走れなくなって、私は立ち止まる。



 下を向き、肩で息をする。



 いよいよ死んでしまいそうな痛みが全身を駆け巡るが、徐々に呼吸は整ってきて、冷た
い空気によって汗も引いてくる。



 痛みだけが、そのまま残っていた。



 貧血に似た、血の気の引く感覚が沸き起こってくる。



 しかし、死なずにまだ生きている。



 いつ死んでもおかしくない体だと、医者に言われた。



 それなのに。



 これだけ走っても死なないのは、何故なのだろう。



 こんなに痛いのに。



 苦しいのに。



 私はどうせ死んでしまうのに。



 視界が歪む。



 倒れてしまっても、楽になるわけでもない。



 薬が痛みを和らげてくれるわけでもない。



 私は歯を食いしばる。



 こんな痛みに私は負けたくない。



 絶対に負けたくない。



 でも……この先に、何かが待っているのだろうか。



 私の我慢は、いつか報われるのだろうか。



 世界のどこかに、この痛みを忘れさせてくれる『何か』が在って、私がそれを見つける、
そんな可能性が僅かでもあるのだろうか。



 それとも。



 私は、ただ、このまま消えて無くなってしまうだけの存在なのだろうか。



 ……。



 私は、また走り出す。



 学校に行きたいわけじゃないけど、二度と病院に戻るのは嫌だから。



 しばらく走ると、



 私は、見覚えのあるクラスメイトの背中を見つけた。










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