「桜夜」 - sakuya - 第31話 宏則「体は大丈夫なのか?」 彩「驚かしちゃってごめんなさい。大丈夫だよ。いつもは倒れた後、何日も動けないんだ けど今朝は調子がいいの」 その言葉を裏付けるように、顔色も良く表情に疲れも出ていない。 本当に無理をしているわけじゃないらしい。 宏則「あれが、呪いなのか」 彩「そんな大げさなものじゃないけどね。ただの病気だよ。一生、治らないけど」 宏則「そういう言い方するなよ…」 彩「桜居さん、あたしは病気で、この病気は一生治らないの。事実は事実として受け止め ているから、あたしはこうしていられるんだよ」 宏則「…そうか」 彩「そんな顔しないで。あたしが一番つらいのは…同情されることなんだからね。あたし はあたしなんだから。病気だってことを知っただけで、桜居さんが変わっちゃうのは おかしいよ」 返す言葉が見つからなかった。 彩は慣れた手つきで味噌汁をお椀に注いでいく。 俺はお椀を受け取って、テーブルに置く。数は2つ。 宏則「沙夜、起こして来ようか」 彩「ううん。もう少し寝かせてあげて。お姉ちゃん、桜居さんが先に寝ちゃったって怒っ てたよ」 宏則「…起きる前に散歩にでも行ってくるかな」 彩「朝ご飯を食べたらね」 笑顔でそう言ってから俺を見て、 彩「あ、それより先に…」 宏則「うん?」 彩「お風呂を沸かしてあるから、入ってきたほうがいいよ。服、汚れちゃってるし」 服一面に彩の血がついている。 これは洗濯しても落ちないかもしれない。 そんなことを考える一方で、俺は昨日のことを思い出していた。 倒れている彩。 床に広がる血。 真っ赤な鮮血は床を伝い、玄関にまで零れ落ちていた。 彩の頬は蒼白で、 表情は苦痛に歪み、 手足は小刻みに震えていた。 彩「どうしたの、桜居さん?」 宏則「……」 彩「お味噌汁は戻してまた温めるから平気だよ」 宏則「先に食べていていいぞ」 彩「ううん、待ってる」 宏則「じゃあ急いで風呂に入ってくる。彩も昨日の昼から何も食べてないんだしな」 彩「うん。でも、急がなくていいよ」 彩「あっ、ゴーちゃんとシロちゃんにもご飯あげないと」 俺は着替えを持って風呂場に向かう。 そう言えば、 二人が村を出ることになったら、500円やシロシロはどうするのだろうか。 連れて行く? 彩と沙夜はどこまで考えているのだろうか。村を出た後、さらにその後のこと── ……。 宏則「とりあえず…」 風呂に入るか。 廊下を歩き、洗面所(兼脱衣所)に向かう。 服を脱いで風呂場のドアを開けると──瞬間、この状況は、漫画やドラマとかの創作じ ゃなくて実際にあることなんだ──と思った。 その直後、 甲高い沙夜の悲鳴とともに、 お湯を浴びせられ、 風呂桶や石鹸とか色々なものを投げつけられ、 殴られ、 蹴り転がされ、 最後に「死ね痴漢」と言われ、俺は全裸で廊下に放り出された。 【戻る】 |