桜夜 - sakuya - 花びらが舞っていた。 桜色の空。 青年は草むらに寝転んで、空を見上げる。 桜の花びら、 それと、雪。 冷たく白い結晶が、空から落ちてくる。 春。 なのに、雪が降っていた。 青年は目を閉じる。 身体は動かない。 苦い、血の味がする。 死はゆっくりと近づいてくる。 恐れはない。 ただ、最後に会いたい人がいた。 会って、伝えたい言葉があった。 だが、それは叶わない願いだと知っていた。 寒い。 血が凍っていく感じがする。 眠い。 雪が青年の姿を隠し始めていた。 声が聞こえた。 聞き覚えのない、声。 けれど、とても懐かしい気がした。 灰色の空。 黒髪の少女── 戻る |