研究者にとっては異例ずくめの大型研究費だろう。配分先選びが進められている「最先端研究開発支援プログラム」だ。
経済危機対策の一環として、政府が補正予算に組み込んだ。「総理が配分先を最終決定する」がうたい文句で、自民党のマニフェストにも科学技術創造立国の実現方策として盛り込まれた。今月中にも配分先を決める予定という。
問題意識は悪くない。「予算が単年度決算で使いにくい」「雑用が多く研究に専念できない」という研究者の悩みに応えようとした点だ。
しかし、プログラムの設計には首をかしげる部分がある。まず、驚くのはその金額だ。2700億円を約30人の中心研究者(30課題)に配る。研究期間は今年度から3年以上5年以内。1件あたりの研究費は30億〜150億円に上る。
文部科学省が拠出するもっとも基本的な研究費である「科学研究費補助金(科研費)」の今年度の予算総額は1970億円で、これを5万件以上に分配する。性質の異なる研究費とはいえ、今回の研究費がいかに高額かがわかる。
しかも、1カ月で交付先を決定する「スピード審査」だ。「3〜5年間で世界をリードする」という目的に沿えば、短期間では成果の出ない独創的な研究ははじかれてしまう。実績のある研究者だけが選ばれるとすれば、本来進めるべき若手研究者育成にはつながりにくい。
これだけの研究費を少数の人に投じる一方で、研究を幅広く支える国立大学の運営費交付金、私立大学の助成金が毎年削減されていることも気にかかる。これでは、研究費格差が開き、基礎研究が立ち行かなくなる恐れが強い。
ここ数年の科学技術政策は、「選択と集中」のかけ声の下に、トップダウンで成果の見える研究に研究費が重点配分されてきた。支援プログラムもその一環で、自民党にこの路線を変更する様子はない。
一方、民主党は国立大学法人などの改善、研究者奨励金制度の創設などを掲げる。国の科学技術政策を決定している総合科学技術会議の改組も提案している。しかし、どのように日本の科学者や技術者を育てていくのか、具体像は見えない。
日本の科学技術は今、欧米先進国のみならず、中国やインドなど新興国との競争にもさらされている。そこで大事なのは、近視眼的な成果主義に陥らないことだ。長い目で研究の土台を築いていくことの大切さに政治は目を向けてほしい。(0時12分)
先端研究に、どーんと、巨額の資金が投じられることになった。経済危機対策の補正予算15兆円のうち3千億円で、最先端研究のための基金を作る。異例の大盤振る舞いである。
日本の将来を切り開くためには、科学技術への投資が重要であることはいうまでもない。投資が真に生きる使い方をしてもらわなければならない。国の借金で投じるのだからなおさらだ。
であればこそ、いくつか気になることがある。
30人の中心研究者とテーマを選んで平均90億円の研究費を支給し、3〜5年で世界をリードする成果を上げてもらうという。対象は、基礎研究から、出口を見据えた研究開発まで幅広い。
だが、こんな短期間で、画期的な成果はそう簡単に生まれるものではない。本当に新しい成果を生むには、長い目で育てていくことが大切だ。
集中投資にも疑問がある。このところ「選択と集中」のかけ声のもと、研究費が旧帝国大学、とりわけ東大に集中する傾向が強まっている。
東大は規模が大きいこともあるが、10位の神戸大の研究費はその15%しかない。英米の10位は1位の35%程度。20位だと、米国の25%、英国の17%に比べて日本はわずかに6%だ。英米ではすそ野がしっかり支えられている。
さらに集中が進むと、研究者の移動の妨げになり、研究にとって大切な人材の多様性が失われる恐れもある。
何より心配なのは、目的とは裏腹に若い研究者の才能をつぶしかねないことだ。多額の研究費で甘やかされたり、逆に短期的な成果をめざす大プロジェクトの歯車になって自由な発想を奪われたりしないだろうか。
せっかくの資金だ。研究のすそ野を広げ、多様な研究を育むとともに、細胞や遺伝子などの研究材料を集めたバンクや装置開発など、将来を見すえた研究を支える基盤作りに生かしたい。
内閣府は今回、研究者にとっての使いやすさを最優先にするとしている。省の縦割りや予算の単年度主義などの弊害と、研究者が研究費の申請や評価に忙殺されて研究どころではないという現状を踏まえてのことという。
そうした問題意識があるなら、いまの制度や運用も並行して改革してほしい。その方が全体の底上げになる。
また、配分の決定には透明性が欠かせない。科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議で、麻生首相は「最終的に私が決める」と発言した。意気込みは結構だが、ここは、目利きを集めて知恵を絞ったほうがいい。
新しい治療法につながると期待されるiPS細胞の研究では、先んじたはずの日本の優位が米国の急追で揺らいでいる。研究基盤の分厚さの違いだ。
巨額の資金は、日本全体の研究基盤の強化につなげてこそ生きる。
26日に公表された、文部科学省の国立大学法人評価委員会による評価結果で、教育内容などに「不十分」「水準を下回る」と評定された各大学から不満の声が出ている。結果は、大学の財政基盤となる国からの運営費交付金の額に反映されるだけに、評価委に意見申し立てをした大学は22に上った。(杉本潔、葉山梢、編集委員・山上浩二郎)
◇
香川大は、医学系研究科が教育方法、学業の成果、進路・就職の状況の3項目で「期待される水準を下回る」とされた。評価の根拠となる資料が足りなかったからだという。角田直人副学長は「訪問調査の時、資料を要求してくれれば対応したのに、要求がなかった」と憤る。
意見申し立ての場で不足資料を出そうとしたが、許されなかったという。「国家試験の合格率は常にベストテンに入るレベルで、自己評価では問題はないと考えている」と強調した。
三重大は業務運営で「達成状況が不十分」とされた。「外国人教員を増やす」という目標が未達成だったことと、07年度の大学院博士課程が定員の90%に満たなかったことが理由だ。
豊田長康学長によると、33の目標のうち達成できなかったのは、外国人教員数のみという。「達成率は97%なのに不十分とは納得いかない」と意見申し立てをしたが却下された。大学院の定員は08年度は93%となり、外国人教員も09年度に6人採用するという。「全体の予算削減のため傾斜配分するのは格差拡大にならないか心配だ。しゃくし定規のやり方は逆効果ではないか」と指摘する。
福岡教育大も申し立てをしたが却下された。
業務運営と自己点検・評価等の項目で「不十分」だった。業務運営の面では、外国人と女性の教職員数を増やす目標を立てた。女性教職員は順調に増えて全体の3割近くになったが、外国人は増えなかった。女性の増加分が十分に評価結果に反映されなかったことには納得がいかない。担当者は「高い目標を設定すると、どうしても達成が難しくなる」と話した。
財務内容が「不十分」とされたのは鳴門教育大(徳島県)だ。判断項目として外部研究資金などを増やすことが盛り込まれている。同大は、科学研究費補助金を40件に増やすことを目指した。しかし、実際は04年度こそ44件だったが07年度は33件にとどまった。これが響いたという。担当者は「目標設定の時、数字を書くことに議論はあった。結果的にクリアしなかったので仕方ない」と話した。
東京大と京都大はどうだったか。
東大は社会連携・国際交流等について「達成状況が非常に優れている」とされた半面、「その他の業務運営」については「不十分」だった。付属農場で使用禁止の農薬を使っていた問題や大学院入試での問題漏洩が影響した。高橋宏志副学長は「再発防止策の実行を進めるとともに信頼の回復に努めたい」という。一方で「中期目標は社会に対する約束であり、その達成状況を反映して資源(運営費交付金)の配分がなされるのは当然のこと」としている。
京大は教育研究について、学業の成果で「期待される水準を下回る」とされた学部・研究科が7つ、進路・就職の状況でも4つ。江崎信芳副学長は「根拠を示したつもりだが、こういう結果になった以上、真摯に受け止めて改善に努めたい。進路・就職では主に大学院で学位認定に時間がかかることが問題とされたので、学位への考え方を検討していきたい」と話した。
◇
評価方法 法人化で各大学などに義務づけられた中期目標のうち、04〜07年度分について行われた。業務運営、財務内容など運営分野は、国立大学法人評価委員会が達成状況を、▽非常に優れている▽良好である▽おおむね良好である▽不十分である▽重大な改善事項がある、の5段階で評価。
教育・研究分野は、大学評価・学位授与機構が、まず学部・研究科ごとに、期待される水準を、▽大きく上回る▽上回る▽水準にある▽下回る、の4段階で評価後、評価委が大学全体の達成状況を5段階で評定した。
大学関係者の間では、「評価疲れ」という言葉が飛び交うほど、教職員が評価のための資料作成に追われる状態だという。
国を担う人材の育成には、教育への十分な投資が欠かせない。特に、各先進国が力を入れている高等教育分野は、資源の乏しい日本が国際競争を勝ち抜くために重要である。
政府の教育再生懇談会が第3次報告で強調したのもこの点だ。
「大学全入時代」の教育のあり方について、高等教育への公的支援に納税者の理解を得るためには、「教育の質の担保に努力しない大学は淘汰(とうた)もやむを得ない」としている。その上で、評価できる大学への支援拡充を求めた。
高等教育の質が低下すれば、大学卒業者らに与えられる学位が海外で通用しなくなったり、優秀な留学生を呼び込めなくなったりして、日本の高等教育全体の評価を下げかねない。
各大学の優れた事業などについて、競争原理を導入した公的資金の配分が徐々に始まっている。これらを、さらに充実させていく必要があろう。
経済協力開発機構(OECD)が昨年発表した国内総生産(GDP)に対する公的教育支出の割合(2005年)をみると、日本は04年より0.1ポイント下がり、過去最低の3.4%になった。比較可能な28か国で最下位だった。
最近公表された民間の国際大学ランキングでは、日本は他の先進国に比べて低迷している。
企業や卒業生からの寄付が潤沢な米国の大学などと、単純な比較はできない。だが、教育学者からは「寄付に対する文化の違い」だけでなく、米国の大学では基金運用に多数の専門職員を配置し、努力しているとの指摘もある。
日本の大学でも、自助努力の一環として検討に値するだろう。
昨年策定された国の教育振興基本計画では、教育への投資充実を求めている。
基本計画は決定直前になって、文部科学省が急遽、今後10年間に投入する教育投資の目標額を盛り込もうとした。しかし、十分な準備もなく粗雑な算定だったため、目標額を明記できなかった。
基本計画を受け、中央教育審議会も中長期的な大学教育のあり方を審議している。教育専門家らだけではなく、経済学者なども交えて議論すべきではないか。
どの分野でどういう成果を上げるために、どれだけの公的な資金をつぎ込むのか。
教育の分野では、数値目標を掲げるのが難しい面もある。だが、可能な限り数字で指標を示し、メリハリを付けた現実的な施策を打ち出してもらいたい。(01時41分)
政府の教育再生懇談会(安西祐一郎座長)は9日、大学改革、子供の携帯電話利用、教育委員会改革を柱とする第3次報告を麻生首相に提出した。
報告では、大学が私費に大きく依存していることから、経営安定のため、「学力不問」の安易な学生確保に走り、学生や教育の質が低下していると分析。国立大学法人運営費交付金や私学助成金などの公的負担の大幅増額の必要性を強調した。
ただ、公費の投入に当たっては、納税者の支持が必要だとして、大学の教育・研究の評価の実績に応じて公費に差をつけることを提言した。入試を厳格化し、大学の設置認可の審査基準に入試方式を加えることや、高校生の基礎学力を測る「高大接続テスト」の導入も求めている。
携帯電話では、子供の所持について保護者の責任を明記し、家庭内ルールの創設を提案。小中学校への持ち込みを原則禁止するなどの方針の明確化を求め、電話会社にも協力を促した。
教育委員会改革では、教員人事が身内意識で行われないよう、人事担当者を民間や一般行政経験者から登用するよう提案している。自治体の首長と教育長の十分な連携も求めた。
第3次報告の提出で、同懇談会は福田内閣から引き継いだ課題に区切りをつけ、次回から新委員を加えて新テーマの検討を開始する。
麻生首相は9日夕に首相官邸で開かれた同懇談会で、新テーマとして〈1〉不況下の教育のあり方〈2〉理数系の基礎教育の充実〈3〉スポーツの再評価――などを挙げた。新委員としてノーベル物理学賞受賞者の小林誠氏(64)ら5人を加え、15人体制とする見通しだ。
首相は、直属機関の同懇談会で「麻生カラー」を発揮し、政権浮揚につなげたい考えだ。(22時51分)
全国の国立大学長に朝日新聞がアンケートしたところ、9割以上が04年度の法人化以降、大学間の格差が「広がった」と感じていることが分かった。東京大、京都大などの有力大とそれ以外の大学の間で、特に財政面の格差拡大を指摘する意見が多かった。国から配分される運営費交付金の削減が、教育内容にも影響するようになっているという。 アンケートは、全国の86大学に送り、84大学から回答があった。
法人化は、国立大を国の組織から切り離し、自立性を高めることが目的。アンケートでは、主に法人化後、4年間の変化について質問した。
「法人化により、国立大間の格差は広がったと思うか」という問いには、92%の77大学が「広がった」と回答。同じ国立大でも、東大、京大などの旧帝国大、理工系、教員養成系(教育)大学などの違いで、法人化当初から、「体力差」への懸念があった。室蘭工業大の松岡健一学長は「過去の資産のある大規模大に資金が集中している」と指摘。岩手大の藤井克己学長は「旧帝大は余裕があるため、新たな展開を可能にしている。格差拡大は『地力の差』にあると思う」との意見を寄せた。
法人化後の問題点では、73大学が「運営費交付金など国からの予算配分の仕組み」を挙げた。国立大の主要財源となる交付金は08年度予算で1兆1813億円。法人化した04年度より600億円余り減った。各大学とも毎年1%を目安に教育研究経費の効率化を求められ、交付金もそれに応じて減らされている。広島大の浅原利正学長は「一律削減により、もともと財政基盤の異なる旧帝大と地方大(特に教育系単科大)の格差が広がった」とした。
交付金の削減分は、外部の研究資金や寄付金などで補うことが期待されるが、鹿屋体育大の福永哲夫学長は「外部資金獲得は大規模有名大学あるいは医理工系分野に有利に働く」と指摘した。
教育そのものへの影響も出始めている。交付金削減で、37大学が「資金が足りなくなり、教育研究や学生サービスに悪影響が出た」と回答。愛知教育大学のように、「教職員の定年退職後不補充により、特に卒業研究指導など教育への悪影響(が出ている)」などの状況がみられる。一方で、旧帝大の7大学でこの回答を選んだところはなかった。
格差拡大や交付金の在り方について、文部科学省次官だった山形大の結城章夫学長は「大学の改革努力を前提に、交付金の削減をやめ、増大に転じること」、熊本大の崎元達郎学長は「高等教育の公財政投資を欧米並みに、現在の国内総生産(GDP)比0.5%から1%に増加させること」を提案している。(大西史晃、葉山梢)
◇アンケートは、8月から9月にかけて郵送で実施。徳島大と上越教育大を除く84大学の回答を集計した。文中の数字は、84大学に対する割合を表す。(8時34分)
こんなに多くの大学が必要なのか。そう思わせるような結果である。
日本私立学校振興・共済事業団が発表した今年度の私立大学入学者の動向で、全国の私大の47%が定員割れを起こしたことが判明した。
募集停止などを除く565校のうち266校にも上る。定員の50%未満だった私大も29校ある。
延べ受験者数はわずかながら増えている。大手私大を中心に、1回の入試で複数の学部を受験できる制度や地方会場での入試を増やしたためだ。定員3000人以上の大規模校は全体の4%しかないが、受験者数の半分を集めた。
人気が集中する都市部の大規模校と地方の小規模校の「二極化」が、一段と鮮明になった。
国公立大志向が強まっていることもあろう。しかし、大きな要因は少子化にもかかわらず、規制緩和で大学設置基準が弾力化され、大学が増えている点にある。
18歳人口は10年前の約160万人より40万人近く減ったのに、大学は国公立も含め約600校だったのが750校以上になった。多様な大学、学部が登場する一方、「大学」の名に値するのか疑わしいところもある。
規制緩和は、新しい大学の参入によって競争を促し、教育の質を高めるのが狙いだったはずだ。だが、AO(アドミッション・オフィス)入試などで安易な入学者確保に走るところも少なくない。
中央教育審議会は7月にまとめた答申案で、「社会の負託に応えられない大学は、淘汰を避けられない」との認識を示した。
設置を認めるかどうか審査する大学設置・学校法人審議会は、事前チェックを厳格化すべきだ。文部科学省も、私大の破綻に備え、学生の受け皿など処理策を練っておく必要がある。
私大は学部ごとの定員割れの割合に応じて私学補助金を減額され、定員の50%以下ならゼロになる。定員を満たせないと、経営は一層苦しくなる。
破綻すれば影響を受けるのは在学生だ。私学には建学理念や経営方針があるが、早めに思い切った対策を打ち出さねばならない。
人気の低い学部は廃止し、特色のある学部に特化する。地域が求める人材の育成・輩出に絞った学部などに改組する。こうした措置が考えられよう。
国立大学は法人化を前に再編が進み、私大でも一部に合併の動きが見られる。合併・再編も一つの手だ。破綻に追い込まれる前に、大胆な経営判断が必要である。(02時13分)
国立大の主な経費を支える運営費交付金について、文部科学省は個々の大学の「努力」をより反映するよう配分のルールを見直す方針を固めた。現在は、大部分が学生数などをもとに自動的に決まるが、10年度からは各大学の教育・研究や運営の改善ぶりについての外部評価の結果を反映させて配分額を決める。
文科省はこの方針を、14日午後に開かれる国立大の学長会議で説明する。
04年度に法人化された国立大は、学生が納める授業料や付属病院収入などの自己収入だけでは、必要経費の半分程度しかまかなえない。運営費交付金は、この収入不足を補うために国が出している補助金だ。主に教員の人件費や光熱費など大学の「基盤的経費」に使われており、08年度予算では約1兆1800億円を計上している。
配分額の決定にあたっては、学生数などに連動して自動的に決まる割合が大きい。各大学の努力や成果が反映される「特別教育研究経費」は徐々に増えているが、それでも08年度で全体の6.7%の790億円に過ぎない。
新ルールで配分に反映させるのは、文科省の国立大学法人評価委員会による、学部ごとの「教育や研究の水準」や大学全体の「業務運営の改善」についての評価結果。具体的な配分方法が決まるのは09年度だが、大学の努力が現在より配分額の増減につながるようになる。地方や文系単科という理由だけで不利になる配分にはしない見込みだ。
国立大は04年度から09年度までの6年間を第1期中期目標期間とし、中期計画に基づいて運営している。10年度に始まる第2期期間の交付金の配分額は、新ルールに基づき、07年度までの4年間の達成状況を判定した評価委の「暫定評価結果」をもとに決めるとしている。
運営費交付金の配分ルールについては、政府の経済財政諮問会議の民間議員が昨年2月、全面的な競争原理の導入を提案。だが、「地方や文系単科など半数の国立大が破綻する」などとして、与党や知事会などが反対。最終的に「骨太の方針07」では、「各大学の努力と成果を踏まえたものとなるよう、07年度内をめどに新たな配分のあり方への見直しの方向性を明らかにする」とトーンが弱まった。(増谷文生)
東北大学が新年度から、優れた業績をあげた現役教授を「抜群教授」に選び、月給を最高20万円上乗せする。国立大では初めての制度といい、学外から優秀な「頭脳」を獲得するとともにその流出を防ぎ、世界最高水準の大学を目指す。
正式な称号は「ディスティングイッシュトプロフェッサー」。教育や研究、社会貢献などの業績がきわめて顕著で、将来も中心的な役割を果たすことが期待される教授を任命する。学内から推薦を受けた教授の中から、学外の有識者も含む選考委員会が選ぶ。
初年度は学内の約800人の教授から3%にあたる25人を選び、月額10万円を基本に最高20万円の特別手当を支給する。東北大教授の年間の平均給与は1101万円(06年度)なので約1割(最高で約2割)の上乗せになる。任期は3年で再任も可能。
優れた研究成果は所属大学の評価向上につながるため、法人化後の国立大では優秀な研究者の獲得競争が本格化している。東京大は1月、世界的物理学者である村山斉(ひとし)・米カリフォルニア大教授を総長より高給で招き、京都大は昨春、アポトーシス(細胞が自死する現象)の権威、長田重一・大阪大教授を引き抜いた。
2年目以降の「抜群教授」の人数や給料の上乗せ額は1年目の結果をふまえて決める。東北大の北村幸久副学長は「世界最高水準の大学になるために、称号だけでなく給与という具体的な形を示して、質の高い教員を確保したい」と話している。(15時01分)
東京、京都、早稲田、慶応義塾の4大学は25日、大学院生が相互の大学院で研究したり学んだりできるようにする協定を結んだ。国内の院生の1割強を占める有力大学の連合で、他大学での「武者修行」で院生を鍛え、大学間の国際競争を勝ち抜く狙いだ。
政府の教育再生会議は、大学院で自校の学部出身者の比率を抑えることで武者修行を促そうとしているが、東大の小宮山宏総長は「強制的ではなく、ボトムアップで学生を動かさないといい形にはならない」と述べ、対抗意識をにじませた。
4大学の院生は約3万6000人。来年度から、例えば早大の院生が東大の研究室に一時的に移って学べるようになる。期間は最長1年(博士課程で1年延長も可)で、所属大学の授業料以外は払う必要がない。参加する大学をさらに広げたい意向だ。
早大の白井克彦総長は「国内の(大学の)交流は十分ではなかった。ぜひ実のあるものに」。慶大の安西祐一郎塾長は「他の大学と交わることで独立心を磨ける」。京大の尾池和夫総長は「自由でのんびりした京都と生き馬の目を抜く東京の両方を味わうのは大事」などと期待を語った。(20時19分)
◇「非日本的環境」に人材吸収
「世界トップレベル研究拠点」として、文部科学省は東京大など5カ所を選定した。日本の科学技術研究の「顔」として、年間で最高20億円の資金を10〜15年継続して投入する。同省はこれまでも、国際的競争力のある大学院づくりなどを支援してきたが、1件につき年間数億円程度で、トップ拠点への投入金額はこれを1ケタ上回る大型プロジェクトになる。
世界的な業績をあげている「拠点長」の下に優秀な研究者が集い、うち3割以上は外国人が占める。総勢は200人ほどで、研究者が研究に専念できるよう事務や管理スタッフを充実させ、使用言語は英語を基本とする−−これが、欧米の研究拠点を手本に、国が描くトップ拠点像だ。
トップ拠点の構想は、06年3月に閣議決定された政府の「第3期科学技術基本計画」に基づく。人材の獲得競争が世界的に激化する中で、日本の科学技術水準を向上させるには、優秀な人材が集まる研究環境を整備する必要があるとされた。「人が集まれば研究成果はついてくる。人工的に日本でない環境を作り出し、世界の人材が流動する場としてどれだけ人を呼び込めるか、壮大な実験だ」(文科省幹部)という。
しかし、資金を投入するだけでは構想は実現できない。実績ある海外の研究者に定住してもらうには、魅力ある研究環境に加え、生活面での支援が欠かせない。研究の実務に通じ、英語を操れる事務・管理スタッフの確保も大変だ。拠点が、投入した資金に見合った成果をあげているかを、さまざまな観点から評価する仕組みも必要だ。
応募は33件あり、内訳は国立11大学から19件▽2私立大から2件▽9研究機関から12件−−だった。外国人が4割を占める審査委員会が、書類審査を通過した13件について、ヒアリング調査をして最終決定した。
選ばれた国立4大学は「抜きんでて評価が高かった」(文科省)というが、すべて旧帝大で、予想された顔ぶれだ。「日本の強い分野」として材料系と生命科学系が2件ずつを占めたが、選に漏れた機関からは「分野に偏りがある」との不満も出た。「実績や研究集積力、組織全体の力を考えると、そうならざるを得なかった」と同省幹部は打ち明ける。
拠点構想は、緊縮財政の中での合言葉「選択と集中」を一層、進めるものだが、国の科学技術政策の司令塔として選択と集中を促してきた「総合科学技術会議」の専門調査会からも「過度の集中」を懸念する声も上がっている。
現状でも、国が全大学に配分する競争的研究資金(公募による研究費)の6割が獲得上位10大学に集中している。専門調査会では「大学の研究基盤の厚みに格差が広がっている」(垣添忠生・国立がんセンター名誉総長)、「地方大や私立大では、優秀な人でも研究を発展させるのが厳しいのではないか」(小舘香椎子・日本女子大教授)との指摘が相次いだ。
予算が限られる中、拠点構想は結果として、寡占に拍車をかける。研究現場から発言している柳田充弘・京都大特任教授は「資金に恵まれているところにさらに金を出し、差をつけようという発想だ。勢いのある研究は無名のところから生まれてくる。伸びようとする小さな木を枯らせない施策が大切だ」と訴える。
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◆トップレベル研究拠点に選定された機関◆
機関名 拠点名(拠点長候補者)
東北大 国際高等原子分子材料研究拠点(山本嘉則・東北大大学院理学研究科教授)
東京大 数物連携宇宙研究機構(村山斉・米カリフォルニア大教授)
京都大 物質−細胞統合システム拠点(中辻憲夫・京大再生医科学研究所長)
大阪大 免疫学フロンティア研究センター(審良静男・阪大微生物病研究所教授)
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(青野正和・同機構フェロー)
文部科学省は12日、科学技術分野で世界最高水準の研究機関づくりを目指す「世界トップレベル研究拠点プログラム」の初の対象機関に、東京大など5大学・研究機関を選定したと発表した。
優れた頭脳の獲得合戦が世界で激化する中、今後10年間で数百億円を集中配分。研究者の3割は外国人を招請し、公用語は英語にするなどして、相対的に低下している日本の国際競争力を向上させる狙いがある。
選ばれたのは、東京大のほか、東北大、大阪大、京都大、独立行政法人の物質・材料研究機構。プログラムには、13大学と9研究機関が応募したが、理化学研究所のほか、北海道大や名古屋大などは選定からもれた。
選ばれた大学・研究機関は主任研究者(教授・准教授相当)の半分以上が国際的な賞の受賞歴を持ち、論文被引用数などが世界トップ級であることなどが条件。
プログラムは今年度からスタートし、1拠点当たり従来の10倍程度の十数億円を毎年投入。それぞれが得意とする材料、宇宙科学、再生医療などの研究拠点として、外国人研究者も研究に専念できる研究・居住環境を整備する。
背景には、国内トップの東京大ですら、米誌ニューズウィークの「世界の大学ランキング」では16位に甘んじ、英ザ・タイムズ紙には19位と判定されるなど、世界では低い評価になっていることがある。
同省はこれまで、優秀な大学に教育・研究資金を重点配分する「21世紀COEプログラム」(274拠点)を2002年度から、さらに対象を絞り込んだ「グローバルCOEプログラム」(150拠点予定)を今年度から進めているが、今回は大学以外の研究機関にも対象を広げた上で、教育機能は免除して研究に特化させる。
◇「生き残り」の道は自らに厳しくしてこそ
こんなはずじゃなかった。当時の文部官僚や専門家は現況にこう思っているかもしれない。
90年代初め、大学設置基準が緩和(大綱化)された。一般科目や専門科目の区分が廃止されるなど縛りを緩め、カリキュラムの編成がかなり自由になった。また90年から始まった大学入試センター試験は、私立大学も1次選抜用に利用できるようになった。
これで私立大学はますます建学理念を生かし、独創的な教育、研究で競い、学生も選択幅を広げることができるようになるとされた。またセンター試験で基礎学力をチェックし、後は独自の個別入試で個性的な学生を選べばよい。
その理想像に現状は遠い。大綱化当時既に表れていた大都市圏への集中傾向は改まらず、今春の入学状況で私立の4年制大学(日本私立学校振興・共済事業団による集計559校)の約4割で定員割れが生じた。昨春とほぼ同率で、大都市圏は平均して充足しているものの、それ以外の地方では全体的に志願者数も減っている。また短期大学(集計365校)は約6割もが定員割れをした。
就職に有利との思惑などから大都市圏の4年制大学への志向が依然強い。また今春入試は志願者数が総定員数に収まる「全入時代」を出現させると見込まれていたが、実際は国公立も含めそうはならず、「高学歴」志向は予想以上だった。一方で大学の個性化は想定したほどには進んでいない。
そればかりか、有名私大への合格者数「水増し」問題が象徴するように、センター試験だけで独自の試験をほとんどしない「手間省き」入試の大学が増加。また、ペーパーテストに頼らず、適性、意欲などを見極めるAO入試も実態は形ばかりで学生早期確保の方便にしているところもあるといわれる。これでは特色化どころではなく、学力維持さえ危ぶまれる。
質向上のため、かねて卒業要件の厳格化が強くいわれるが、入試簡略化に見られるように大学が学生の「負担軽減」で数を確保しようとする限り、「卒業しにくい学校」へ転じることは望むべくもない。だが入試や卒業要件などに厳しさを取り入れない限り、大学に再生の道を望むべくもない。先送りできない根幹の問題だ。
統廃合や補助金カットによる締め付けなど、経営的な合理化策も本格的に論じられるようになった。しかし大学は本来そろばん勘定のみで改廃するものではない。大綱化の理念は、条件を楽にすることではなく、創造に力を傾注できるようにしたのだ。
社会人への開放。地域の特性や需要に合う教育・研究の促進。定年世代の再教育機会の提供。先行し成功している大学が示すように活性化の余地は十分ある。どの大学も本来無用ではないはずで、必要とされる力を内蔵している。その視点を失ってはならない。
前文部科学事務次官の結城章夫氏が9月1日付で山形大学学長に就任した。文科省の事務次官が監督下にある国立大学の学長に就くのは初めてである。国立大学は法人化されたから、経営の才に優れる人材を外部にも求め、学長に起用するのは当然のことである。しかし、それが監督官庁の幹部となれば、やはり違和感は否めない。学長選を経ているとはいえ、「天下り」の印象も強い。かつての地位、権限に頼らぬ大学自立の道を開くのか、注視したい。
山形大が前事務次官を学長に選んだのは思惑があってのことだろう。結城氏は学長選の投票結果では2位だったが、学部長や学外委員で構成する学長選考会議は1位の候補を外して結城氏を選んでいる。
国立大学はいま、改革を迫られている。基盤的経費として文科省が配分する運営費交付金は削減の方向にあり、再編統合の議論も起きている。特色を出せなければ大学は資金獲得が難しくなり、下手をすると生き残れない。だから、教育行政、助成制度に精通し、人脈もある官僚を切り札として選んだのかもしれない。
同大学は、がん治療に有望な重粒子線治療施設を計画している。国内3カ所目を目指すこの大プロジェクトを実現するため、大物官僚を学長に招いた側面もあるだろう。ただ、政府からの資金獲得を有利にしようと監督官庁の官僚をトップに据えるのであれば、公共工事の受注を有利にしようと企業が天下りを受け入れるのと何ら変わらない。
文科省が差配する科学技術関係予算は2007年度に約2兆3000億円。科学技術立国やイノベーション促進は政府の重点施策でもあるので、関連予算は増えるだろう。ただ、助成資金の配分も戦略拠点の選定も、審査過程は透明性が十分ではない。それだけ官僚や政治の恣意(しい)が入り込む余地があるわけで、利益誘導も癒着も、そして不正も起こりうる構図になっている。疑いがかけられることのないよう審査過程の透明性はもっと上げる必要がある。
山形大が助成で優遇されるようであれば、“天下り”学長は増えるだろう。できるだけ民間の資金を獲得して、大学の自立を促すという法人化の狙いも外れかねない。
法人化された国立大学で、学外出身者の経営参画が目立ってきた。大学の閉鎖的な体質に風穴を開ける一方で、教職員との間で摩擦も生じている。社会に開かれた経営の在り方を巡って模索が続きそうだ。
国立大学法人法では、大学に対し、経営上の重要事項を審議する「経営協議会委員」、学長を補佐して経営に直接あたる「理事」、業務を監査する「監事」に、必ず学外出身者を入れることを義務付けている。社会に開かれた大学の実現という理念に基づいている。
本間政雄・国立大学マネジメント研究会長(立命館副総長)らの研究グループが、昨秋に実施した調査によると、87大学に経営協議会委員が677人、理事が131人、監事174人が学外から就任していた。
常勤の理事は文部科学省を主とした官庁出身者が多いが、非常勤を含めた三つの職全体では、民間企業、法曹、他大学出身者など多岐にわたっていた。監事には公認会計士や税理士ら民間の専門家も多かった。
研究グループが、これら三つの職に就く学外出身者にアンケートをとったところ、経営協議会委員286人、理事64人、監事123人から回答を得た。
それによると、仕事への満足度は、総じて高めだったが、「教職員のほとんどに、法人になったことの意識が薄く、大学の諸施策に無関心、非協力」と、学内の危機感の低さを指摘する意見が出た。「やたら会議が多く、長く、結論が出ず、経営にスピードがない」「民間企業的発想で発言すると、議論がかみ合わないことが多い」「監事制度の位置づけが学内でほとんど理解されていない」などの不満も多かった。
さらに、「不要業務の洗い出し、効率化に一層の努力が望まれる」「学長のリーダーシップを発揮しやすいようにする」などの意見や、「教員との話し合いの場が少ないので不安がある。パイプはあったほうがよい」といった要望もあった。
他方で、学内出身の理事や学長らに「学外出身者を活用できていると思うか」と尋ねた質問では、肯定的な回答が、三つの職いずれについてもほぼ9割以上に達していた。
こうした学外出身者との意識差は、7月の山形大学長選出でも表面化した。教職員投票では、文部科学省の次官だった結城章夫氏の獲得票数は2位にとどまったが、学外者がメンバーの半数を占める学長選考会議は、結城氏を新学長に選んだ。この決定に対し、教員の中から反発の声が上がっている。
旧文部省の総務審議官や京都大副学長も務めた本間会長は「国立大はまだ、学外者と教職員が反発し合っている段階。お互いの不満を出し合い、理解を深めていくことが必要だ」と話している。(石塚公康)