モドル

■振り向けばそこに

息を吸う。そして、吐き出す。
最後の場所へと続く道へ、一歩踏み出す気持ちを取り戻すために。
「ヒューゴ。」
「大丈夫だよ、軍曹。」
 お守り役はいつだってヒューゴの気持ちに敏感だから、ほんのすこし、心のどこかで怖いと思っている気持ちは、とうの昔に見抜かれてしまっているだろう。何の気なしに近づいてきたジョー軍曹が、いつもの視線でヒューゴを見上げる。

斜め45度。

お互いに隠し事はできないくらい、判りすぎているのは心地よいような、怖いような。

「もうすぐ最後だ。」
「そうだな。」
 
軍人の言葉はいつだって素っ気ない。
自分の不安を判ってくれているのなら、もう少し何か言ってくれてもいい。
そう、思う。

「死なないでよ。」
 その言葉に憮然としてダッククランの勇者が言い返すより先にヒューゴはなおも言い募る。

「俺、軍曹が死んだらきっと泣く。絶対に泣くからな。それに、軍曹いっただろ?」

ルルが死んだとき。冷たい体をカラヤの大地に葬ったとき。
軍曹はいったのだ。

”俺は絶対に同じ間違いをしない。だから、お前は俺が絶対に死なせない。俺が絶対にお前を守ってやるからな。”

「俺を守ってくれるんだろ?だから、死なないでよ。」

「軍人は、一度した約束は必ず守る。」

 ぶっきらぼうな返事が返ってきたときには、軍曹はもうヒューゴを見ていないけれど。

顔を上げて、その場所へと通じる道を見つめる。

戦いの終わりがまつ、その場所。
大丈夫、もう怖くない。

(2003/03/09)


※どこかの日記に一発書きした代物。軍曹とヒューゴコンビを広めよう計画、第一回(笑)
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