菊
「そ、そういうことは、わが国ではあまりあからさまに口にすることではないんです…手をつないだり、一緒に歩いたり、それで通じることってあるではないですか。」
サディク
「まあ、そう言われるような気はしてましたがね。そこを曲げてお願いしたいんでさ。なんなら、俺が言うことをそのままマネしてくれてもいいんですぜ。」
菊
「そんな安易なことできません！」
サディク
「じゃあ、菊さんの言葉できかせてもらえませんかね。なぁ、菊さん。俺のこと、どう思ってますか？」
菊
「それに強制して言わせるものじゃ……。」
サディク
「菊さん、俺はあんたにそんな難しいことを頼んでますかい？悩まなくてはいけないような、改めて考えなければならないようなことを言ってくれってお願いしてますかい？」
菊
「……」
サディク
「そんな泣きそうな顔しないでくださいよ、俺が菊さんをいじめてるみたいじゃないですか」
菊
「サディクさんの言い方はとてもずるいです。私はただ……。」
サディク
「ただ？」
菊
「言わなくても、分かってくれるって、そういうこともあると思うんです、私としては。」
サディク
「でも、俺は、あんたの口から聞きたい、今聞きたいんですよ。」
菊
「…………。」
サディク
「菊さん、なぁ？」
菊
「･･････サディクさんが来てくださるのを待つ間は、時間がたつのが遅く感じます。でも、来られてからお別れするまではいつもあっという間で･･････だから、その･･････」
サディク
「････････････」
菊
「行かないでくださいっていいたくてもいえなくて、それで･･････」
サディク
「･･････」
菊
「わ、私に言わせておいて、どうしてサディクさんが赤くなってるんですか！！」
サディク
「いや、その･･････俺から頼んだものの、いざとなると恥ずかしいなあと。」
菊
「･･････信じられません。」
サディク
「えー、まぁ、その、なんですか、菊さん。」
菊
「･･････なんですか？」
サディク
「あんたは、俺の……。」