■すべて世は こともなし おまけ編
フェイト・レアルタヌアに進むと、サーヴァントに臓硯を殺させるという夢物語が発動。
(ステイナイトではなく。そっちになると桜ちゃんの待遇がやばすぎて夢見がちな雁夜さんが頑張れない。)
間桐の人間では難しいそれを、叶えてくれる誰かはいないのか?
桜の父親ポジションを取っていることで―時臣になりかわっていることで―精神的バランスをとってるというか。桜ちゃんのために・・・を魔法の呪文にすることで、臓硯のどんな指示にでも耐えてきた。雁夜の根っこの問題点が解決されているわけではないので、あんまり追いつめると危険だよ。暴走するよ。何するかわからんよ、この人。軒並みプレッシャーに弱い間桐の一人なので。
■桜ルート→雁夜生存確率0%
話の途中で、桜に殺される。それはもうさっくり、あっさりとね。
ストーリーに絡むどころの話ではなく、何もできないまま死亡。
桜に殺されるっちうのは、どうなんでしょう。時臣さんに殺されるよりは当然マシでしょうけど、葵さんに殺されるよりもマシなんでしょうか・・・?
*慎二が桜に殺された直後、異変を感じた雁夜が桜の部屋を訪ね、慎二の死体を発見する。
桜の私室のドアをノックしようとした雁夜を、嗅ぎ慣れた匂いが押しとどめる。ざらつく鉄錆の匂い。蟲が餌を食らうその時の。むせかえるような粘ついたその、匂い。開けてはいけない、と囁いたのは理性の忠告か。だが、開けないわけにはいかない。
「桜ちゃん・・・いるのかい?」
ノックと同時に扉を開けはなつ。
桜の部屋。雁夜の大事な葵の娘の部屋は、赤い色をしていた。
「桜ちゃん?」
踏み入れた足が、粘って重い。赤、赤、あか。部屋の中心から広がっている赤い色。真中で赤く染まっている、何か。見たことがあるような気がする、雁夜の知っている誰か。大の字にうつぶせているそれには当然あるべき頭がない。ねじ切られたその部分に白いものはきっと骨だ。頭の代わりに赤が、赤い色がどんどん広がって塗りつぶす。噎せ返るその匂い。血の、匂い。血に染まる穂群原の制服、見慣れた背中。
思考停止していた雁夜が、それが誰なのかを認識する。
慎二、だ。頭部をつぶされ、桜の部屋で己の血の海に沈んでいるのは、慎二。
「な・ん・・。」
血の匂いが胃の腑を焼き、吐き気がこみ上げる。血のあか、慎二の血。常なら抑えきれるはずの蟲が、死の匂いに誘われ、ずるずると雁夜の皮膚の下を這う。体を折って、吐いた胃液は血の味がした。
■セイバールート→生存確率70〜40%?
死亡ルート:慎二ポジションに雁夜がくれば、バーサーカーにより死亡。たぶん可能性は低い。臓硯が雁夜を種馬扱いしている間は、子供ができるまでは危ない目に合せることは避けるはず。子供ができれば用なしですが。
生存ルート:慎二サポートに回れば生存。臓硯の選択次第。ただし、この場合もあまりおおっぴらに臓硯を殺そうとすると、逆にやられて死亡する。士郎と組んで、臓硯を殺せないかと思ったりもしてるようです。
*慎二が学校に設置した結界を雁夜が見つけた直後、士郎も発見。夜の校内で士郎と対峙。
*巻き込まれ式で聖杯戦争に参加しているので、憎しみの対象は臓硯以外にはない、多分。
「この結界は何だ?!こんなものを仕掛けて・・・!」
衛宮士郎の手には、令呪が刻まれている。つまりは、彼も聖杯に選ばれたマスターだということか。桜が戦いに参加することを拒んでよかった。士郎と対峙する雁夜が思ったのは、非常に場違いな感想だった。聖杯戦争でマスターに選ばれれば、否が応でも殺し合いになる。心やさしいあの娘は、思いをかけた男と戦うことなどできはしまい。そして、もし雁夜たちが彼を殺してしまったら、桜はその相手を決して許さないだろう。だから、雁夜は士郎と敵対することはできない。
とはいえ、慎二が学校に仕掛けた結界。士郎に見つかったそれは、相当にマズイ代物だ。こんなものを自分の母校に仕掛けるとは・・・。魔術回路を持たないことを慎二が引け目に感じていることは、雁夜も知っていた。だから、サーヴァントの使役権を得て、テンションが上がるのは理解する。だが、これが発動すれば、校内の生徒は全滅だ。自分の先輩や教師、友も当然巻き込まれるというのに。
――こんなまね・・・下手すれば粛清対象だぞ、慎二。
「答えろ!これは何だ?お前は一体誰なんだ?」
目の前の士郎はいよいよ臨戦態勢に入りつつあり、雁夜を敵として認識する寸前だ。タイムアップになるその前に、雁夜は自分の立場を士郎に納得させねばならない。だが、この結界の存在は致命的だ。名乗るか?この結界をどう説明する?どうすれば、士郎と戦わずに済む?考えろ、答えを探せ、聖杯戦争において、やり直しはない。間違えればそれは死だ。警戒を強める士郎の前で、雁夜はおもむろに口を開いた。
↑士郎を頑張って口説き落として、雁夜の味方につければ臓硯さんを撃退できるかもしれない。
■凛ルート→生存確率100%
偽臣の書を慎二を共同使用する。
ライダーがキャスターに殺されるまでは
慎二と一緒に行動をするが、その後は桜、臓硯と一緒に間桐邸にて待機。
凛と一度は遭遇するも、その後は表に出てこず。臓硯は殺せない。
聖杯の元へ向かおうとはするのですが、サーヴァントがいない状態では
どう考えても自殺行為です。やめてください。
*ライダーがやられる前日、10年会っていない凛と顔を合わせる。
*凛は雁夜の事を見忘れているが、雁夜は彼女に時臣と葵の面影を見る。
走る雁夜の視線の先、月を背負って立つ人影。逆光で顔がしかと見えないが、雁夜はそれが誰だかすぐにわかった。
「あなた、何者?」
誰何する声の厳しさが、雁夜にとっては寧ろ心地よく。にらみつける蒼い双眸は、否応なしに時臣を思い起こさせる。それに揺れる黒髪は、大きな瞳は、葵の面影をはっきりと残していて、雁夜は現実を忘れてしまいそうだ。あの公園を駆けていた少女がこんなにも大きく成長して、という思いが、雁夜に桜に対する感慨とは、また別種のそれを呼び起こす。凛は、なんと葵と―あまり嬉しくはないけれども―時臣によく似ていることか。雁夜のことを、恐らく欠片も覚えていない凛に対して、彼は彼女を知っている。臓硯の命令で昼間の冬木を監視するついでの役得、である。遠坂家の動向も、当然のように監視の対象だったからだ。
だが、懐かしさで胸いっぱいの雁夜を、凛が斟酌してくれるはずはなく、
「答えなさい、三秒待ってあげるわ。1、2、3。はい、時間切れね。」
あっさりばっさり、雁夜の感傷を真っ二つにした。
「?ってええ!!??」
それは、普通待ってあげたっていわないんじゃないでしょうか!?
至極真っ当、且つ当然な雁夜の心の叫びは、勿論凛には届かない。警告を無視した雁夜は、既に凛の敵である。つまり、即時殲滅対象、ということだ。
おいおい、そのこちらに狙いを定めるかの如くの、その指鉄砲ポーズは一体何ですか?!もう死亡フラグの匂いしかしないんですけどぉぉぉっ!!
「ぅううわわわわぁぁーーーっっ!」
反射的に飛びずさった瞬間、足元のコンクリートがはじけ飛ぶ。当たったら痛い、じゃあすまされない威力に血の気が引いた。今、凛が放つガンドの一射目をよけられたのは、雁夜一世一代の奇跡であろう。
「あら、避けるんだ?どうせ最後は私にやられちゃうんだから、長引くと辛くなるのは貴方よ。」
余裕で微笑む凛に、雁夜はあかいあくまを見た。ああ、葵さん。凛ちゃんが貴方に似ているのは見た目だけでした。ていうか、時臣だってこんなに過激な性格はしてなかったはず。これは、あれだ。教会の神父の育て方が悪かったんだ。許し難し、神父め。
雁夜が現実逃避している間に、凛は二射目を準備中である。今度打たれたら、死ぬ。マジで死ぬ。
「す、ストップ!ストップ!!名乗ります!名乗りますっ!」
ああ、こんなみっともない再会をする予定じゃなかったのに、とぼやいてみてもはじまらず。雁夜の理想と現実の離れっぷりときたら、10年たってもやっぱりそのままで。おかげで雁夜は凛にスマートとは言い難い名乗りをする羽目になった。
「ひ、久しぶりだね、凛ちゃん。俺、間桐雁夜だったりするんだけど?」
↑完全に忘れ去られてたら、雁夜の人生終わりですな。
■おまけの鶴野さん
正装と言われて雁夜が思いつくのは、臓硯からのお下がりである和服くらいしかない。柿渋やらで鉄色に染められた羽織だの袴だの、質はよいのだろうがおよそ雁夜の年齢で着る色ではなかったが、他にないのだから仕方がないのだ。それらを除けば雁夜の服ときたら、どこぞのチェーン店で買ってきました臭のするパーカーやらジーンズやらで、およそ公式の場へ着ていけるような代物ではないのである。
羽織に袴・・・は一応古来から日本人の正装ではあるが。雁夜は未だに一人では着ることのできないそれを横目で眺めつつ、考える。果たして、桜ちゃんの入学式にこれを着て行っても大丈夫なんだろうか、と。
「和服は止めとけ。悪目立ちするのが関の山だ。」
「だよな、やっぱり。」
勘が鋭すぎる鶴野の一言に、いつもの雁夜ならば脊髄反射で反抗するのであるが、流石に今回ばかりは、だ。
ちなみに、似合う似合わないという問題ではない。臓硯の御供の時や、魔術師としての公式の場への参加なら、雁夜の和服はそれなりにハマる。馬子にも衣装とはよく言ったもので、実際の実力の程はとにかく、なんとなく間桐の当主っぽく見えてしまうから不思議だ。一般人だろうが魔術師だろうが、第一印象は大事である。
ただし、今回は高校の入学式、なのだ。スーツ姿のお母様方の中、通好みの渋い和服を纏った雁夜が一人交じればあらぬ誤解を招いてしまう可能性がある。昨今のそちらの方面の方々は、必ずしも強面ばかりとは限らないわけであるからして。
「普通、入学式といったらスーツだろ。一着くらい持ってないのか?」
「サラリーマンしてたわけじゃないんでね、持ってるわけないだろ。」
普通ならば、ここは内心恥ずかしく思うシーンである。雁夜は全くなんとも思わなかったようなので、代わりに鶴野が我が弟ながらいい年をして、と情けなく思った。
「兄さんは、慎二の時に何着て行ったんだ?」
「平日だぞ、行ってるわけないだろう?それに、あいつが俺に入学式に来てほしいなんて言うと思うか?」
「うーーん、そういえば、俺、兄さんの代わりに出ようか?って聞いて、思いっきり馬鹿にされた覚えがあるわ。」
だが、入学祝いだけはきちんと請求してきた。慎二はそのあたり非常にしっかりしている。
「服がないなら、別に無理をして出なくてもいいんじゃないのか?」
小学校の入学式でもない。親が来てくれないのが寂しい、という年齢でもなかった。ましてや、桜は養女である。鶴野の言うことは常識的に考えれば決して間違いではない。
「いやだ。俺が、入学式出席するからねっていったら、桜ちゃん、有難うございますって言ってくれたし。」
そんな言い方をされたら、桜の性格では断ることもできまい、それくらいは鶴野でなくてもわかる。気付かないのは雁夜だけだ。こと桜に関することで、雁夜に"社交辞令"だの、"空気よめ"という言葉は通じない。そして、反対意見も言うだけ無駄である。頭の回転の速い鶴野は、諦めるのもまた早かった。
「そうか、なら仕方ない。私の背広を貸してやるから、それを着ていけ。和服よりはマシだ。」
「・・・・。」
「なんだ、その微妙な顔は。」
「いや、だって、兄さんと俺、服の趣味が合わないし。」
万年ユ●クロ男に言われたくない。服の趣味だの拘りだのは、どう贔屓目に見ても鶴野のほうがよいのだ。シャツにジャケットで年中過ごせる雁夜に趣味云々を言われるのは鶴野とて不本意である。大体、鶴野の上下一着で雁夜の服が30着以上買えるというのに。
「背広に趣味は関係ないだろう。あれは無難な恰好なんだよ。」
「それにサイズが合わないと思うけど。」
「サイズ?ああ、そうか。身長が違うか。」
鶴野の身長は雁夜の+5センチ程度だが、これだけ違うと袖が余る。
「いや、ウエストサイズが。」
ついでに、体重のマイナス差分もついてくる。鶴野が中年だから、なのではなく雁夜が痩せすぎなのだ。
「・・・。」
人の好意を蹴飛ばした上に、兄に対して無礼な発言。だが、鶴野には分かっている。雁夜には悪気は全くない。だから余計に腹が立つというのもまたホントのことだ。ここは我慢するべきだろう、何故って雁夜は鶴野と血のつながった弟である。
「・・・なら、あ●やまで買ってこい。」
「そうだな、そうする。」
部屋住みのフットワークの軽さで、とっととお買い物に向かう雁夜の背中に、
「色はグレーにしとけ、ネクタイは俺のを貸すから買うなよ!」
そう声かけてして、はたと鶴野は気づく。これでは、過保護だといわれても言い訳できない、と。
↑甘やかしてるわけでもないけれど、長男坊からすると末っ子というのは面倒を見る対象ではないかと。
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