「レンスターに行ってくれと言っても、もう聞いてくれないだろうな。」
背中越しに聞こえる彼の言葉に、ラケシスは微笑みを浮かべた。
砂漠を越える前に、同じ会話を同じ相手と交わしてきた。
そして、今度も同じ言葉を返すだろう。
「ええ、あなた。私は最後まであなたと一緒に戦います。」
怖いのは死ではなく、知らないうちに大切な人を失ってしまうことだと、知っている。
「ラケシス。」
名前を呼ばれ、そのまま抱きしめられた。
お互いの体の温かさを感じられること、それがどれだけ幸福なことか、知っている。
最期まで共にありたい、そう思える相手を見つけられたこと。
欲しかったそれを見つけたことが彼女の幸せなのだから。
青年の体を抱きしめながら、ラケシスは微笑んだ。
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