■ルール違反〜子供のホントと大人の嘘 「リューネ。」 あたしの名前を、呼ぶ。唇に、頬に、髪に、キスを感じる。あ、とあたしが思った時には、ベッドの中に体が倒されていた。あたしを見る目は、もう優しくない。手がタンクトップを捲し上げ、胸を探る。もう片手が下へと伸びていくので、あたしは盛大に動揺した。 「ま、ちょっと…待ってっ…!」 聞いているのかいないのか、やつの動きは止まらない。つぅと指が中心に触れ、あたしの体が震える。 「!…ぃや…」 あたし、どうしたっていうの?!手が、動かない! ほんのついさっきまでは、絶対私の方が勝ってた。絶対に、私の方が上だった。 私の胸にたどり着いたやつの手は、時折先端をはじきながら、そこに愛撫を加える。揉み上げられるたびに、吐息がこぼれ、力が抜けた。 ベッドの上で、もう私は奴の生け贄だった。 「えらく大人しいじゃないか?さっきまでの勢いはどうした?」 こんなむかつくことを言われても、反撃一つできないなんて!悔しいことに、いくらあたしが力に自信があっても、やっぱり男の腕力には敵わない。せめてもの抵抗に、圧し掛かってる奴を睨み付けてやった。その拍子に、涙がぼろぼろ零れだして、格好悪いったらありゃしない。 あたしは子供じゃない。子供じゃないんだったら。た、たかが胸を触られたくらいで、狼狽してどうするのよ? 「続けるぞ。」 余裕ありそうに笑いながら、そんなことを言ってくる。あたしは黙って首を縦に振った。こんなのたいしたことじゃない、絶対に。 「・・・あ・・・ああっ・・・くっ・・・!」 下着を下ろされて、太ももにやつの手がかかる。やつが軽く力を入れると、あたしの腰は宙に浮き、恥ずかしい部分がまともにやつの目の前になった。 あいつが自分のズボンを下ろして、それを取り出すのをみたとき、あたしは初めて自分の負けず嫌いを後悔する。でも、もう引き返すには遅すぎた。 あたしの真ん中にあてがわれたそれが、小さく卑猥な音をたて。 「は・・・っ・・・。」 体が震え、硬くなる。怖い。できることなら、もうやめてしまいたい。だけど、あたしの願いは叶わなかった。 一瞬、躊躇った後、それがあたしのなかに入る。 「あ、あ・・・ぁっ!!痛・・・っ!!」 楔を打ち込まれるような痛みがあたしを襲った。まだ、全部入ってきたわけじゃないのに。話には聞いてたけど、本当に・・・こんな・・・。 余裕を見せるどころではなかった。あたしの体は全身であいつを拒絶する。その様子に、ようやくあいつの動きが止まった。 「?!り、リューネ。お前、もしかして・・・?」 「わ・・・悪い?もしかしなくっても・・・初めて・・・痛ぅ!」 「な・・・初めてなら初めてだって、何故、最初に言わない?」 「五月蝿い・・・!そんなこと今更言っても・・・仕方ないでしょ!」 子ども扱いされるのが死ぬほど嫌だったからだ、とは言えなかった。背伸びしてると思われたくなかった、とも言えなかった。どうせこの気持ちはやつには判ってもらえない。 そんなことよりも、このとてつもなく恥ずかしい格好のままで おいとかれる方が重大な問題だった。もうお互い後には引けないんだから。行き着くとこまでいくしかないんだから。痛いやら恥ずかしいやら、で頭に血が上ったあたしは、もう早く終わらせてもらうことしか考えられなくて、 「どーでもいいからっ!!さっさとやっちゃってよ!!!だから、●●××■で■●だなんて、言われるんだから!!」 最後の一言は、あいつのプライドをちょこっとばかり傷つけたらしい。 いきなりあたしの太ももを支える手に力が入って、あいつが腰を進めてきた。まだ誰も踏み込んだことのなかった入り口を無理矢理にこじ開けて、硬い肉塊をねじ込もうとする。 「あぅ!!痛!!!痛いっ!あ・・・く!!」 あたしの叫び声はまるっきり無視して、あいつは中にどんどん入ってくる。もうこれ以上は進めないところまで突き進み、そして、腰を引く。入っては出て行く。無造作に、機械的に、あたしの中を犯す。悲鳴をあげて、涙を流す私には一切構わずに。 「あぁっ!あっ・・んっあんっ・・・ぁぐ・・・ぁ!!」 シーツの海に溺れて、あたしは身も世もなく泣き叫ぶ。 痛くて苦しくて、ちっとも気持ちよくない交わりが、段々そうじゃなくなってきても、あたしの涙はちっとも止まらなかった。 あいつがあたしを犯す。あたしを何度もいかせて、あたしの中で何度も何度もだして。 あたしは胸糞が悪くなるような声をあげ、奴は終始無言で獣みたいに自分の欲望だけを追っかけてた。 どっかネジがいかれてしまった、あたしの”初めて”は、まるで馬鹿な三文ネタのように、夜更け過ぎるまで終わらなかった。 友達から聞いた話とはえらく違う。 あたしは重たい体をベッドに預けて、そんなことを考える。 最初が下手な相手だと痛いだけだから、絶対に経験豊富な年上の男がいい、とか。そんなことを訳知り顔に話してくれた無責任なハイスクールの友人の顔が、頭に浮かんで消えた。 ――年上の相手でも痛いじゃないの。それとも、経験豊富じゃなかったのかな。 そんなのやる前にはわからないから、どうしようもない。それをどうやって見分けるか、聞いておけばよかった。 ああ、あたしは馬鹿なことを考えてるな、と思った瞬間に、涙がでそうになる。我慢しようとしたら喉が鳴った。 あたしはもう子供じゃない。こんなことで泣いたりなんかしないし、傷つきもしない。 「リューネ。」 「…”すまない”なんていったら、あたし、あんたを許さないからね。」 「言わないよ。」 暖かい腕があたしの肩に回る。あいつの胸の中にはいったあたしの背中が、鼓動を感じる。図々しいぬくもりは鬱陶しいけれど、面倒だから逃げ出したりしない。 「好きだ。」 「…あんた、馬鹿だ。」 名前を呼んで、抱きしめて、好きだという。そんなの今更やられたって少しも嬉しくない。何も判ってない。あたしのことを、何も知らない。 暖かくもない。安らいだりなんてしない。あんたのことなんて、少しも好きじゃない。 あたしは目を閉じて、そしてまた開く。見えないものみるように、闇の中に目を凝らす。望んだものは少しも見えなくて、奴の腕の中のあたしだけが、現実をはらんだ確かな存在だった。 |
(2002/04/15)
※うーん、うーん(;;)とりあえず、ヤンロン×リューネを推進しているつもりなのですが。