モドル
■一分間劇場 クラウスと愉快な仲間たち 

真夜中。本拠地内、クラウスの部屋。

クラウス
「…何故、シードが私の隣に寝てるんでしょう???」
シード
「……ZZZ」
クラウス
「ここ、同盟軍ですよねえ…」
シード
「むにゃ…クラウス…どうしたんだよ…今日はえらく大胆…」
クラウス
「…?」
シード「…いいぜ、俺はどこででも…」
クラウス
「…」
シード
「馬鹿…誘ってんのか?…へへ…」
クラウス
「…(-_-X)」
 
 クラウス、ベッドから起きあがり、シードの頭に手近な本を振り下ろした。

げしっ。


シード
「!!!!痛っっ!!クラウス、何すんだよ!!」
クラウス
「人が黙ってるのをいいことに、何の夢を見てるんです?」
シード
「いやあ、お前があんまり色っぽく迫ってくるから…つい。」
クラウス
「誰が…色っぽく迫るって・・・。だいたい、なんでシードがここにいるんですか?ここはオレンヂ軍の本拠地で、ハイランドじゃないんですよ?」
シード
「そんなの、お前に会いに来たにきまってるじゃないか。」
クラウス
「え…?」

 クラウスの一瞬の隙を突いて、シードはクラウスをベッドに押し倒した!

クラウス
「わっ!シード!!ちょっとっ!」
シード
「会いたかったぜ…クラウス…。」
クラウス
「な、何考えて…!離してください!ぃやだっ!シード!離してっ!」
シード
「今更止められるわけがないだろ…いいから、観念しろって…。」


???
「…己は人のいない間に何をしておるのじゃ!!!!!」
???
「ムムムッムーーーーッッ!!!」

 フルムーンがシードの後頭部を直撃!更に、茶色の物体がクラウスの上から彼を弾き飛ばした!

クラウス
「シエラさん!ミクミクさん!」
シエラ
「クラウスさん…大丈夫ですか?お怪我は?」
ミクミク
「ムム?ムムッ?(>_<)」
クラウス
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます、二人とも。助かりました。」
シエラ
「そんな、クラウスさんのためでしたら。」
ミクミク
「ムム…。」

 楚々と振舞う人外二人組。シード相手の時とえらく態度が違う。

シード
「クラウス…物の怪と獣相手に会話を成立させんなよ…。」
シエラ
「だまらっしゃい!体育会系の分際で、妾の背の君に手を出そうとは、不届き千万!貴様、まさか生きてここを出られると思っておるまいの?」
ミクミク
「ムム!ム!」
シード
「なんだと!だいたい人の物に手を出したのは、そっちだろうが!ハイランドで俺とクラウスは(…放送禁止用語続発!!)だぞ!!」
シエラ
「ふん、過去のことなぞ、妾は知らんわい。それに、クラウスは最早妾のものぞ。ハイランドのヤンキーなんぞに渡す義理はないわ!」
ミクミク
「ムー!!」

 シエラに抗議の声をあげて飛びかったミクミクを、あっさり払い落とすシエラ。話の中心人物でありながら、話の流れから全く取り残されたクラウスは不安げに三人を見詰めている。

シエラ
「クラウスは妾の正体を知っても、妾を好きだとはっきりとそう言うてくれた…それに、キバ殿が亡くなられたあの夜、クラウスは妾と…」

 恥らって口篭もるシエラの頬は赤く染まっていた。

シエラ
「これ以上は、女の口からはいえないわ…ポッ。」
クラウス
「ちょ!ちょっとシエラさん!何を!?」
シエラ
「私にこんなことを言わせるなんて…クラウスさんったら…」
クラウス
「誤解を招くようなことを言わないで下さい!あのときはキスしかしてな・・・・・・・・あ。」

 ばつ悪げに俯いたクラウス。シードとミクミクの視線が彼に集中する。

シエラ
「理解しおったか愚者ども!クラウスは、妾・の・も・の・なのじゃ!!」
 
勝ち誇ったシエラの高笑いが響き渡る。

シード
「キス位でなにいいやがる!大体、俺とクラウスは・・・!!」
ミクミク
「ムームームムーッッ!!(@_@メ)」

 またもや始まる本人不在の大喧嘩。止める術も体力もないクラウスは、肩を落としてため息一つ。

クラウス
「はーーー・・・勝手にしててください・・・。」
キバ
「なかなかもてているようではないか、クラウス。」

 突然のキバ出現に、とびあがるクラウス。

クラウス
「ちっ、父上っ!?」

 これは夢か幻か?つい先ほどの戦で死んだはずの父親が何故ここに?いつかやるとは思っていたが、とうとう仕事のストレスで頭がやられてしまったのか?

キバ
「案ずるな、クラウス。私は幽霊だ。」

 そう言われて、よくよく見れば今のキバには足がない。なーんだ、幽霊か。と胸をなでおろすクラウス。物の怪二人に追っかけまわされた経験のおかげか、彼はすっかりそっち系に耐性がついている。

クラウス
「お盆でもないのに戻ってこられるなんて、どうなさったのですか?何かこの世に未練でも?」
キバ
「うむ…」
クラウス
「酒場のツケは私の貯金でちゃんと綺麗にしておきましたし、本拠地で父上と交渉のあった女性への形見分けもすませました。あ、母上の分は秘密ルートでハイランドに送りましたので、ご安心下さい。」
キバ
「あ、相変わらず、出来た息子だなあ、お前は。」
クラウス
「お褒めに与り光栄です。」

 酒と女にだらしのない父親を持つとイヤでもこうなります…と、愛息の恨み言を聞き流し、

キバ
「実は、わしはお前が一人前になるのを見届けられなかったのだけが気がかりでな。」

 クラウスはキバの一人息子だから、当然ウィンダミア家は彼が継ぐことになっている。元々係累も少ないため、クラウスが戦死すればその血も絶えてしまうだろう。キバはそのことを案じて化けてでたらしかった。

キバ
「だが、安心したぞ、クラウス。」
クラウス
「は?」
キバ
「わしの息子の割には、えらく頼りないと思っておったが、知らないうちに三人も相手にしておったとはな。」
 ちょっと待て、親父。一体、どこに目をつけている?

キバ
「で、ものは相談なのだが、クラウス。この際、父への供養と思い切って、今ここで結婚相手を決めてくれんか?」
クラウス
「はい?」
キバ
「今回は偶々戻ってこれたが、次からはいつお前の様子を見にこれるかわからん。この場に候補者がみんな揃っておることだし。な、ここでわしを安心させてくれ。」
クラウス
「……」

 結婚相手をこの三人の中から選ぶ…。クラウスは未だに口論を繰り広げている三人組を見やり、そしてまた父親に視線を戻した。

クラウス
「選べって言われても…。」

 選択肢はシードにシエラにミクミクである。男に吸血鬼にムササビのどれを選んだとしたって…。

クラウス
「・・・どのみち、家系が絶えるのは必至のようですね・・・。」
キバ
「はっはっは、男児たるものそのような些細なことに拘ってはならんぞ。」
クラウス
「(怒)」


※さて、最後に笑うのは誰でしょうか?一番タフそうなシエラさん?

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