モドル

■Reluctantly

 組みふされ、ぐたりと力を無くしたクラウスの体を食らい尽くすかの如くに、舌を這わせるルカの顔には陶然としたものが浮かんでいた。

こいつは俺のものだ。俺だけのものだ。

 ゆるゆるとクラウスの体を辿りながら、気紛れに白い肌にキツイ口付けを落とす。それだけのことで、赤い跡が残ってしまう敏感な肌表。拒絶の言葉を口にしながらも、うつ伏せにされれば自然と男を受け入れやすい体勢をとる。

 双丘を割り広げ、淫らに咲き揺れる蕾に指を差し入れた。ぎちりと締め付ける内壁をこすり上げ、じわじわと解きほぐす。硬くそそりたった逸物を押し当てると、クラウスが感極まった息を漏らした。
 逃げられないよう、両手で腰を捕まえる。すでに自身の体液で十分に濡れている赤銅の凶器で、ルカは一気にクラウスを貫いた。

「・・・あ・・ああああぁぁぁっ!!」

 鼻にかかる甘い嬌声がルカの耳を震わせる。相変わらずのキツい締め付けに、イキそうになるのをぐっと堪えた。

 奥へ、奥へ。ずっと奥へと。熱い、深遠へと。

溶けてしまいそうなほど、熱いその場所へ。

 どこか頑なさを残すクラウスの奥を、何度も何度も刺し貫く。その度に青年は小さな悲鳴を上げ、小刻みに痙攣を繰り返した。

「・・・ルカ様・・・!ああぁ!やぁ・・・熱い・・・!や・・・ぁうっ!!」

 ずちゅずちゅと響く恥ずかしい音もかき消されてしまうほど、クラウスは泣き叫ぶ。だけど、その声はどうしようもなく快楽にゆがんでしまっていた。

「・・・良いって言え・・・クラウス・・・俺にヤられるのが良いって言うんだ・・・!」

 そう問い掛けると、ぶんぶんと首を振る。立ち上がったクラウスのそれからは、紛うことのない快楽の蜜が染みているというのに。それでも、まだ強情をはるクラウスに、言いようのない愛しさがこみ上げてくる。もっともっと泣かせてやりたくなった。
 ぬれているクラウス自身に片手を添えてやると、ルカの動くままに揺すぶられていたクラウスがわずかに抵抗する。
「あ、あぁ・・・・んっ・・・!るか・・・さ・・・や・・・そこは・・・やめっ!・・・だメぇ!」
「・・・どこが駄目なんだ、クラウス?」
 こんなになってるのに?と、わざと先端をシーツにこすり付けるように扱いてやる。前後を同時に攻められ、なす術もなく乱れるクラウスの耳に息を吹き込み、
「お前の体は、俺のが良いって言ってる・・・。」
「ちがぅ・・・そんなの・・・違う・・・ぁ・・・ぅ!」
 どんなにクラウスが否定しても、それが嘘なのははっきりと判る。ルカが嬲っているクラウスのそこは、すでにぴちゃぴちゃといやらしい音を立てているのだ。
「イけよ・・・クラウス・・・俺がイカせてやるから。」
「ぁうっ!ぁぅ・・!ぁっ!あん・・ああああぁぁ・・・っっ!!」
 どくん。
 ルカの手の中で、クラウスが脈打つ。白濁液が手を汚すのと同時に、今までよりもずっと強く締め付けてくる蕾と、絶頂を迎えたクラウスの表情に、ルカは強烈な射精感を覚えた。力の抜けたクラウスのわき腹をつかみ、激しく腰を振ってクラウスの中に突き入れる。
 ベッドの軋む危なげな音と、肉と肉とがぶつかり合う破砕音、そして、クラウスの快楽の叫び声が交じり合う。下腹から湧き上がる欲望が、頂点へと達するその一瞬前に、ルカはクラウスの中から己を引き抜き、熱い液体をクラウスの背中にぶちまけた。


 できるならば、ルカが目覚めないうちにクラウスは自室に帰りたかった。いつものように、何もなかった顔をして仕事に戻る。それはいうなれば、クラウスの最後のプライドだった。目を覚ました後の努力の賜物か、身を起こすことまではできる。だが、しかし、下半身がどうしても言うことを聞いてくれないのだ。泣きたいような気分で立ち上がろうとするクラウスに、まだ寝ているはずの皇子の声が届く。
「……いい加減、諦めたらどうだ。」
「一体、誰のせいだと思っていらっしゃるんですか?」
 ルカのほうを見ようともせずに、クラウスは言う。とにかく、服だけでも着ておきたい。もう太陽は半分顔を出しているのだ。
「お前が悪いんだ。お前が俺を誘うから悪い。」
「…誘った覚えはありませんが。」
 あまりの台詞に、クラウスはとうとうルカのほうを向き直った。
 無理やりベッドに連れ込まれた覚えはあっても、誘った覚えなんぞ今まで一度もない。そんな思いが表情にまで出ていたのだろう。ルカはさも楽しげにくっくっと笑った。
「昨日の夜、俺の腕の中で自分が何ていったか、覚えてるか?」
「?・・・!」
 虚を付かれたクラウスは、次の瞬間にルカの腕の中に引き込まれる。彼の耳朶に唇を寄せ、ルカは熱っぽく囁いた。
「お前は俺が欲しいって言ったぞ。俺に抱いて欲しい、ってな。」
「え?え??そ、そんな・・・馬鹿な・・・。」
 そんなことを言った覚えはない。が、実のところ、クラウスは昨夜のことを良く覚えていないのだった。というより、恥ずかしくってあまり思い出したくなかった。だが、いくらなんでもそんなことを言うはずがない・・・・・・と思う。
 無防備に考え込んでしまったクラウスの様に、ルカは堪えきれず吹き出してしまった。はじかれたように顔をあげたクラウスの唇を奪い、その体を強く抱き寄せる。
「嘘に決まってるだろう?俺の言うことをそんなに簡単に信じてしまうようでは、軍師としてやっていけんぞ。」
「な!な…!」
「ふむ、イクときの顔もいいが、怒った顔もなかなか…。」
「ふ、ふざけないで下さい!」
 頬を紅潮させ、じたばたと暴れるクラウスを腕の中に閉じ込める。ルカの膂力に容易く繋ぎ止められてしまった彼に、もう一度口付けた。
「まあ、次の機会に言ってくれ。」
「絶対に言いません!!」
 けんもほろろなクラウスの答えに、ルカはこれ以上ないほど楽しそうに笑った。



(2002/11/09)


※ えーっと…まあ、ノーコメントということで。裏側だから、色んなところを大目に見て下さい(涙) ていうか、ルカがルカじゃないって、これじゃあ(涙)
ちなみにタイトルは”不承不承”の英訳。やはり無題のままはヤバイかなと。
モドル