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【宝のお部屋へ】②

道教(老荘思想) 東洋思想のバックボーンの一つ  




A 儒家と道家   金谷治著『老子』より

『老子』は、『論語』と並ぶ中国の代表的な古典である。 孔子の『論語』が『孟子』とともに儒教のはじまりの姿を伝えるのと同じように、『老子』は『荘子』とともに老荘とか道家とかよばれる一派を形づくっている。 そして、中国の長い歴史を通じて、孔孟の儒教が表向きの正統的な思想であったのに対して、老荘の思想はその裏面をささえるものとしてあった。

今ここに二人の人物を登場させてみよう。

一人はいわゆる紳士であって、朊装も整って身だしなみもよく、世間の決まりごとはよく守って万事に勤勉で、きちょうめんである。 そして、自分だけがそうなのではなく人にもそのように勧め、みんなが紳士淑女になることで世の中がよくなると信じている。 多少窮屈な感じはするが、社会的にはいかにも信用はできて間違いのない人物に見える。

さて、もう一人はこれと反対のタイプである。 朊装のことなどは意に介せず、時にはだらしなくも見えるが、それだけ純朴で裸の人間味がある。 世間の決りや仕事のこともあまり気に留めず、時にはずぼらもするが、別になまけものでもすねものでもなく、大事なところは外さない。 こちらの法から前の人物を見ると、いかにもこせこせした小人物で、こんな人物が多くなると世の中はダメになると考えるが、前の人物からこちらを見ると、調子はずれの上安定な人物で、社会の秩序を乱すことになると考える。

二つのこうしたタイプの人間は、われわれの近くにもいるであろう。 

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