主として演奏曲が見つからなかった唱歌


一 年 牛若丸 桃太郎 . . . . . .
二 年 那須与一 浦島太郎 蛙と蜘蛛 二宮金次郎 . . . .
三 年 鵯越
 . . . . . . .
四 年 漁船 廣瀬中佐 八幡太郎 近江八景 橘中佐 . . .
五 年 菅公 海 大塔宮 三才女 . . . .
六 年 水師営の会見 児島高徳 日本海海戦 われは海の子 瀧 鷲 鎌倉 鳴門
高 一 太平洋 . . . . . . .
高 二 月見草 . . . . . . .

 牛若丸  小學唱歌(第一學年)

 1 京の五条(ごじょう)の橋の上
   大のおとこの弁慶は
   長い薙刀(なぎなた)ふりあげて
   牛若めがけて切りかかる

 2 牛若丸は飛び退(の)いて
   持った扇を投げつけて
   来い来い来いと欄干(らんかん)の
   上へあがって手を叩く

 3 前やうしろや右左(みぎひだり)
   ここと思えば又あちら
   燕のような早業(はやわざ)に
   鬼の弁慶あやまった

 桃太郎  小學唱歌(第一學年)

 1 桃太郎さん桃太郎さん
   お腰につけた黍団子(きびだんご)
   一つわたしに下さいな

 2 やりましょうやりましょう
   これから鬼の征伐(せいばつ)に
   ついて行くならやりましょう

 3 いきましょういきましょう、
   あなたについて何処(どこ)までも
   家来になっていきましょう

 4 そりゃ進めそりゃ進め
   一度に攻めて攻めやぶり
   つぶしてしまえ鬼が島

 5 おもしろいおもしろい、
   のこらず鬼を攻めふせて
   分捕物(ぶんどりもの)をえんやらや

 6 万々歳(ばんばんざい) 万々歳
   お伴(とも)の犬や猿雉子(さるきじ)は
   勇(いさ)んで車をえんやらや

 那須与一  小學唱歌(第二學年)

 1 源平勝負の晴の場所
   武運(ぶうん)はこの矢(や)に定(さだ)まると
   那須の与一(なすのよいち)は一心不乱
   ねらい定(さだ)めて ひょうと射(い)る

 2 扇(おうぎ)は夕日(ゆうひ)にきらめきて
   ひらひら落(お)ちゆく波(なみ)の上
   那須の与一の誉(ほまれ)は今も
   屋島(やしま)の浦(うら)に鳴(な)りひびく

 浦島太郎  小學唱歌(第二學年)

 1 昔昔 浦島は
   助けた亀に 連れられて
   龍宮城へ 来て見れば
   絵にもかけない 美しさ

 2 乙姫様(おとひめさま)の 御馳走に
   鯛や比目魚(ひらめ)の 舞踊り
   ただ珍しく おもしろく
   月日のたつのも 夢の中(うち)

 3 遊びにあきて 気がついて
   お暇乞(いとまごい)も そこそこに
   帰る途中の 楽しみは
   土産に貰った 玉手箱(たまてばこ)

 4 帰って見れば こは如何(いか)に
   元居た家も 村も無く
   路(みち)に行きあう 人々は
   顔も知らない 者ばかり

 5 心細さに蓋(ふた) とれば
   あけて悔しき 玉手箱
   中からぱっと 白煙(しろけむり)
   たちまち太郎は お爺さん

 蛙と蜘蛛  小學唱歌(第二學年)

 1 しだれ柳に 飛び着く蛙
   飛んでは落ち 落ちては飛び
   落ちても落ちても また飛ぶ程に
   とうとう柳に 飛び着いた

 2 風吹く 小枝に 巣を張る 小蜘蛛
   張っては切れ 切れては張り
   切れても切れても また張る程に
   とうとう小枝に 巣を張った

 二宮金次郎  小學唱歌(第二學年)

 1 柴刈り縄ない 草鞋(わらじ)をつくり
   親の手を助(す)け 弟(おとと)を世話し
   兄弟仲よく 孝行つくす
   手本は 二宮金次郎

 2 骨身を惜まず 仕事をはげみ
   夜なべ済まして 手習読書
   せわしい中にも 撓(たゆ)まず学ぶ
   手本は 二宮金次郎

3 家業大事に 費(ついえ)をはぶき
  少しの物をも 粗末にせずに
  遂には身を立て 人をもすくう 
  手本は 二宮金次郎

 鵯越  小學唱歌(三學年)

 1 鹿も四つ足 馬も四つ足
   鹿の超えゆく この坂道
   馬の超せない 道理はないと
   大将義経 まっさきに

 2 つづく勇士も 一騎当千
   ひよどりごえに ついてみれば
   平家の陣屋は 真下に見えて
   戦い今や まっさいちゅう

 3 ゆだん大敵  うらの山より
   三千余騎の さか落としに
   平家の一門 おどろきあわて
   屋島をさして 落ちてゆく

 漁船  小學唱歌(第四學年)

 1 えんやらえんやら 艪(ろ)拍子(びょうし)そろえて
   朝日の港を 漕ぎ出す漁船(りょうせん)
   見よ見よ あの雲 今日こそ大漁
   それ漕げ それ漕げ おも舵(かじ)とり舵
   おも舵:右舵/とり舵:左舵。

 2 ゆらりやゆらりと 浪間に揺られて
   磯には網船 沖には釣舟
   見よ見よ あれ見よ かかるわ 捕れるわ
   網にも糸にも 魚のかずかず

 3 えんやらえんやら 獲物に勇んで
   入日の沖をば 急いで漕ぐ船
   見よ見よ 浜辺に 妻子(つまこ)が迎える
   それ漕げ 漕げよや 艪拍子早めて

 廣瀬中佐  小學唱歌(第四學年)

 1 とどろく砲音(つつおと) とびくる弾丸
   荒波(あらなみ)洗(あろ)う デッキの上に
   闇をつらぬく 中佐の叫び
   「杉野はいずこ 杉野は居(い)ずや」

 2 船内くまなく たずぬる三度(みたび)
   呼べど答えず さがせど見えず
   船は次第に 波間(なみま)にしずみ
   敵弾(てきだん)いよいよ あたりに繁(しげ)し

 3 今はとボートに うつれる中佐
   とび来る弾丸(たま)に たちまち失(う)せて
   旅順(りょじゅん)港外(こうがい) うらみぞふかき
   軍神(ぐんしん)広瀬と その名残(のこ)れど

 八幡太郎  小學唱歌(第四學年)

 1 駒のひづめも 匂うまで 「道もせに散る 山桜かな」
   しばし眺めて「吹く風を 勿来(なこそ)の関(せき)と 思えども」
   効(かい)なき名やと ほほ笑みて ゆるく打たせし やさしさよ

 2 落ちゆく敵を よびとめて 「衣のたては 綻びにけり」
   敵は見かえり 「年(とし)を経し 糸のみだれの 苦しさに」
   つけたる言(こと)の めでたきに めでて許せし やさしさよ

 近江八景  小學唱歌(第四學年)

 1 琵琶の形に似たりとて 其の名をおへる湖の
   鏡の如き水の面 あかぬながめは八つの景

 2 まづ渡り見ん 瀬田の橋 かがやく入日美しや
   粟津の松の色はえて かすまぬ空ののどけさよ

 3 石山寺の秋の月 雲をさまりてかげ清し
   春より先に咲く花は 比良の高ねの暮の雪

 4 滋賀唐崎の一つ松 夜の雨にぞ名を得たる
   堅田の浦の浮御堂 落來るかりもふぜいあり

 5 三つ四つ五つうち連れて 矢橋をさして歸り行く
   白帆を送る夕風に 聲程近し 三井のかね

 橘中佐  小學唱歌(第四學年)

 1 かばねは積もりて 山を築(つ)き
   血汐(ちしお)は流れて 川をなす
   修羅(しゅら)の巷(ちまた)が 向陽寺(しゃおんずい)
   雲間も洩(も)るる 月青し

 2 みかたは大方(おおかた) 討たれたり
   しばらく此処(ここ)をと 諌(いさ)むれど
   恥(はじ)を思えや つわものよ
   死すべき時は 今なるぞ

 3 御国の為なり 陸軍の
   名誉の為ぞと 諭(さと)したる
   ことば半(なかば)に 散りはてし
   花橘(はなたちばな)ぞ かぐわしき

 菅公  小學唱歌(第五學年)

 1 日かげ遮る(さえぎ)る むら雲に干( ほ)す
   よしもなき 濡衣(ぬれぎぬ)を
   身には著(き)つれど 真心(まごごろ)の
   あらわれずして 止(や)まめやと
   神のまもりを たのみつつ
   配所(はいしょ)に行きし 君あわれ

2 のちを契(ちぎ)りし 梅(うめ)が枝(え)に
  東風(こち)ふく春は かえれども
  菊の節会(せちえ)の 後朝(こうちょう)の
  宴(えん)に侍(はべ)りし 秋は来(こ)ず
  御衣(ぎょい)を日毎(ひごと)に 拝(はい)しつつ
  配所に果(は)てし 君あわれ

   小學唱歌(第五學年)

 1 松原遠く 消ゆるところ
   白帆(しらほ)の 影は浮かぶ。
   干網(ほしあみ)浜に 高くして、
   鴎(かもめ)は低く 波に飛ぶ。
   見よ昼の海。見よ昼の海。

 2 島山闇(やみ)に 著(しる)きあたり、
   漁火(いさりび) 光(ひかり)淡(あわ)し。
   寄る波岸に 緩(ゆる)くして、
   浦風(うらかぜ)軽(かろ)く 沙(いさご)吹く、
   見よ夜の海。見よ夜の海。

 大塔宮  小學唱歌(第五學年)

 1 氷の刃 御腹に当てて
   経巻かづき、かたづをのみて
   忍びおはしし 般若寺あはれ

 2 山伏姿、嶮しき道を
   破るる御足、紅染めて
   落行きましし 熊野路あはれ

 3 鎧の上に 立てる矢七つ
   流るる血しほ 拭ひもあへず
   酒酌みましし 三芳野あはれ

 4 恨尽きせぬ 建武の昔
   日影も闇き 鎌倉山の
   御最後あはれ、語るもゆゆし

 三才女  小學唱歌(第五學年)

 1 色香(いろか)も 深き紅梅の
   枝に結びて
   勅(ちょく)なれば いともかしこし うぐいすの
   問わば如何(いか)にと 雲居(くもい)まで
   聞こえ上げたる 言(こと)の葉は
   幾代(いくよ)の春か かおるらん

 2 みすのうちより 宮人(みやびと)の
   袖引き止めて
   大江山 いく野の道の 遠ければ
   ふみ見ずと言いし 言の葉は
   天の橋立 末かけて
   後の世永く くちざらん

 3 后(きさい)の宮の 仰言(おおせごと)
   御声(みこえ)のもとに
   古(いにしえ)の 奈良の都の 八重桜
   今日(きょう)九重(ここのえ)に においぬと
   仕(つこ)うまつりし 言の葉の
   花は千歳(ちとせ)も 散らざらん

 水師営の会見  小學唱歌(第六學年)

 1 旅順開城 約成(やくな)りて
   敵の将軍 ステッセル
   乃木大将と会見の
   所はいずこ 水師営

 2 庭に一本(ひともと) 棗(なつめ)の木
   弾丸あとも いちじるく
   くずれ残れる 民屋(みんおく)に
   今ぞ相(あい)見る 二将軍

 3 乃木大将は おごそかに
   御(み)めぐみ深き 大君(おおぎみ)の
   大みことのり 伝(つと)うれば
   彼かしこみて 謝しまつる

 4 昨日の敵は 今日の友
   語ることばも うちとけて
   我はたたえつ かの防備
   かれは称えつ わが武勇

 5 かたち正して 言い出でぬ
   『此の方面の戦闘に
   二子(にし)を失い給(たま)いつる
   閣下の心如何にぞ』と

 7 『二人の我が子それぞれに
   死所を得たるを喜べり
   これぞ武門の面目(めんぼく)』と
   大将答(こたえ)力あり

 8 両将昼食(ひるげ)共にして
   なおもつきせぬ物語
   『我に愛する良馬(りょうば)あり
   今日の記念に献ずべし』

 9 『厚意謝するに余りあり
   軍のおきてに従いて
   他日我が手に受領せば
   ながくいたわり養わん』

 10 『さらば』と握手ねんごろに
   別れて行くや右左(みぎひだり)
   砲音(つつおと)絶えし砲台に
   ひらめき立てり 日の御旗(みはた)

 児島高徳  小學唱歌(第六學年)

 1 船坂山や杉坂と
   御(み)あと慕いて院の庄
   微衷(びちゅう)をいかで聞こえんと
   桜の幹に十字の詩
   天勾践を空しゅうする莫れ
   時范蠡無きにしも非ず

 2 御心(みこころ)ならぬいでましの
   御袖(みそで)露けき朝戸出に
   誦(ずん)じて笑(え)ますかしこさよ
   桜の幹の十字の詩
   天勾践を空しゅうする莫れ
   時范蠡無きにしも非ず

 日本海海戦  小學唱歌(第六學年)

 1 『敵艦見えたり、近づきたり、皇国の興廃、ただ此の一挙、
   各員奮励努力せよ。』と、旗艦のほばしら信号揚る。
   みそらは晴るれど風立ちて、対馬の沖に浪高し。

 2 主力艦隊、前を抑へ、 巡洋艦隊、後に迫り、
   袋の鼠と囲み撃てば、見る見る敵艦乱れ散るを、
   水雷艇隊・駆逐隊、逃しはせじと追ひて撃つ。

 3 東天赤らみ、夜霧はれて、旭日かがやく日本海上。
   今はや遁るるすべもなくて、撃たれて沈むも、降るもあり、
   敵国艦隊全滅す。帝国万歳、万万歳。

 われは海の子  小學唱歌(第六學年)

 1 我は海の子白浪(しらなみ)の さわぐいそべの松原に
  煙たなびくとまやこそ 我がなつかしき住家(すみか)なれ

 2 生れてしおに浴(ゆあみ)して 浪を子守の歌と聞き
   千里寄せくる海の気(き)を 吸いてわらべとなりにけり

 3 高く鼻つくいその香(か)に 不断(ふだん)の花のかおりあり
   なぎさの松に吹く風を いみじき楽(がく)と我は聞く

 4 丈余(じょうよ)のろかい操(あやつ)りて 行手定めぬ浪まくら、
  百尋(ももひろ)千尋(ちひろ)の海の底 遊びなれたる庭広し

 5 幾年(いくとせ)ここにきたえたる 鉄より堅きかいなあり
   吹く塩風に黒みたる はだは赤銅(しゃくどう)さながらに

 6 浪にただよう氷山も 来(きた)らば来れ恐れんや
   海まき上ぐるたつまきも 起らば起れ驚(おどろ)かじ

 7 いで大船(おおふね)に乗出して 我は拾わん海の富
   いで軍艦に乗組みて 我は護(まも)らん海の国

  小学唱歌(六学年)

 1 あえぎ登る 山の懸路(かけじ)に
   はや聞ゆるは 滝の音
   あたりにひびく 滝の音
   木の下闇(このしたやみ)を抜け出でて
   見上ぐれば 目の前に
   荒野(あらの)の吹雪さながらに
   落つるよ落つるよ 真白き流れ

 2 霧を含む 風の冷たく
   さと吹来(ふきく)れば 夏の日の
   暑さも知らぬ 岩の上、
   木の下陰(かげ)に いこいつつ
   見下ろせば、足もとには
   幾百千の白龍(はくりょう)の
   おどるよおどるよ 碧(みどり)の淵に

   小学唱歌(六学年)

 1 雲を凌(しのげ)げる 老木の
   梢の上の 荒鷲(あらわし)は
   広き宇宙を 睥睨(へいげい)す
   み空の君主 さながらに
   気高く雄々し 鳥の王 鷲の姿

 2 怒涛(どとう)逆巻(さかま)く 絶海(ぜっかい)の
   孤島(ことう)に巣くう 荒鷲は
   暴風雨(あらし)をついて 天翔(あまがけ)り
   育(はぐく)む雛に 餌(え)を運ぶ
   やさしくつよし 鳥の王 鷲の心

 鎌倉  小學唱歌(第六學年)

 1 七里ガ浜の 磯伝い
   稲村ケ崎 名将の
   剣投ぜし 古戦場

 2 極楽寺坂 越え行けば
   長谷観音の 堂近く
   露坐の大仏 おわします

 3 由比の浜べを 右に見て
   雪の下村 過行けば
   八幡宮の 御社

 4 上(のぼ)るや石の きざはしの
   左に高き 大銀杏
   問わばや遠き 世々の跡

 5 若宮堂の 舞の袖(そで)
   しずのおだまき くりかえし
   返せし人を しのびつつ

 6 鎌倉宮(かまくらぐう)に もうでては
   尽きせぬ親王(みこ)の みうらみに
   悲憤(ひふん)の 涙わきぬべし

 7 歴史は長き 七百年
   興亡すべて ゆめに似て
   英雄墓は こけ蒸(む)しぬ

 8 建長円覚 古寺の
   山門高き 松風に
   昔の音や こもるらん

 鳴門  小学唱歌(六学年)

 1 阿波と淡路の はざまの海は
   此處ぞ名に負ふ 鳴門の潮路
   八重の高潮 かちどき揚げて
   海の誇の あるところ

 2 山もとどろに 引潮たぎり
   たぎる引潮 あら渦を卷き
   卷いて流れて 流れて卷いて
   空にとびたつ 潮けむり

 3 裸島より 渦潮見れば
   胸も波だち 眼もくらむ
   船頭勇まし 此の潮筋を
   落し漕ぎゆく 木の葉舟

 太平洋  高等小學唱歌(第一學年)

 1 波涛(はとう)千里 洋々と 東にうねり西に寄せ
   日出ずる国の 暁に 雄々しく歌う海の歌
   黒潮越えて いざ行かん われらの海よ 太平洋

 2 怒涛万里 渺々と 南に走り 北に去り
   日出ずる国の 島かげに ほがらに歌う海の歌
   波乗り越えて いざ行かん われらの海よ 太平洋

 月見草  高等小學唱歌(第二學年)

 1 夕霧こめし 草山に ほのかに咲きぬ 黄なる花
   都(みやこ)の友と 去年(こぞ)の夏
   手折(たお)り暮しし 思い出の
   花よ花よ その名もゆかし 月見草

 2 月影白く 風ゆらぎ ほのかに咲きぬ 黄なる花
   都にいます 思い出の 友に贈らん 匂いこめ
   花よ花よ その名もいとし 月見草

   風清く 袂(たもと)かろし 友よ 友よ 来れ 丘に
   静けくも 月見草 花咲きぬ