中学2年の娘の引っ込み思案の原因は
母親の女としての嫉妬にあった??
今回取り上げる症例は、コミュニケーション障害の中学2年生の麗香さん。
正月気分のまだ覚めやらぬ、寒さ厳しい午前中に来診しました。
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氏名: 山下 麗香 性別: 女 年齢: 14歳
家族構成・関係: 父母 兄弟成の 5人 長女
ABO式血液型: A形
身長: 162cm 体重: 51kg
バスと: 92cm ウエスト: 60cm ヒップ: 90cm
視力: 左: 1,2 右: 1,2
初潮 9歳
既往歴: 小児喘息
主訴:コミュニケーション障害〔不登校・他〕
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麗香さんは、母親の和子さん〔33歳〕に連れられ、無言で入室して来ました。
その出で立ちは母子共に 、一部の空きも無いコンサバスーツなのですが、
何故か? 麗香さんは寒色系で地味なのに対して、和子さんの方はと言えば
淡い色調では有るものの、まだ早い春の花のような印象を与えるものでした。
色彩については、医学的な立場から種々の見解、様様な応用が成されていますが
、
黄色い蟹の診療室では、古代中国哲学をベースにした陰陽論を使い、
クライアントの精神状態や肉体の生理活動状況などを判断するための
指標として用いています。
この場合、母親の明るい色調は、陽の発散・放出・動転と言う性質である、
特徴を持っていることを意味していて、それはつまり他者に対する影響力が
強く、はっきりと自分の考えを主張し、 前向きで建設的で有るという反面、
相手の立場を慮るとか、
じっと耐え忍ぶというのが不得手で有るという 貢罪両面を兼ね備え持つ
傾向が有ると推察しました。
それに対して麗香さんの方はどうかと言えば、暗い色調は内政・受動静粛という
陰の性質である、 特徴を持っていることを意味していて、それはつまり
他者の影響を受ける事が多く、積極的に問題解決に当たることが苦手である反面
、協調性にや包容力富み、マイペースで無理をしないという
面をも備えもつ傾向が有ると推察しました。
来診までの経緯の概略を尋ねたところ、案の定 和子さんが独りで説明をし、そ
の間麗香さんは終始無言のままでした。
診療を始めるに当たり麗香さんの確認を取り、付き添いの和子さんの退室を
求めると、色々自分がそばにいる必要性について論じたてていましたが、
麗香さん本人のた目の診療で有ることを再確認してもらい、
渋々乍では有りましたが、どうにか退室してもらうことに成功しました。
心身共にリラックスした状態で診療が行えるように、身体を
絞めつけるような衣服や・金属などのアクセサリー類など全て外してもらい、
診察衣に着替えてもらい、寝台に仰臥させ、呼吸法・イメージングの
指導をして軽い暗示をかけてカウンセリングを始めることにしました。
始めに背景となる人間関係と、それらの人に対する印象などについて
話をしてもらい、その中から性を意識した意味の発言があったので、
その出所を知るべく更に話しを薦めると、思春期に見られる単純な男女の
性差について男性を意識しているというのでは無く、自分の中の女性を
強く 意識することの反作用としての男性不信である事が伺えました。
特に、和子さんとの関係において、子母関係と共に同性の老若の関係という
2条件の摩擦により起きてくる常道の可能性に行き当たり、
改めて和子さんについて、一人の女せいとしてその生き方や姿勢・
妻として・母親としてどう思うかを聞いてみました。
以下は、その応答の1部分です。
「善いとか・悪いとかは言いたくないけど、少なくとも、私は、お母さんのような
生き方は出来ないし、したいとも思わない。」
と、小さな声であるが、はっきりとした口調で答えてくれた。
少し意地の悪い質問ではあるが、麗香さんと和子さんの相似点・相違点を
挙げてもらうことにした。
しかし、個々の点には触れること無く、
「善い所は遺伝しないで、悪い所だけを遺伝したような気がする。」
と、直接質問に答え様とはしないで、「善い所・悪い所」という観点に
無意識の内に摩り替えられてしまうので、そこで麗香さんの心の中で、「善悪」と
いうキーワードがどの様な意見合いで使われているのかを知るために、
具体的にどこが善くて・どこが悪いのか?、なぜそのように感じるのか、そ
の基準は何に由来するものなのかを、順序だてて、一つ一つ確認させるように
尋ねてみました。
すると、出るは出るは、「だらしが無い!」・「努力が足りない!」・「向上心が
乏しい!」・「自信が無い!」・「人と巧く接する事が出来ない!」と、
ネガティブな言葉が集中し、改めて「善い点は?」と尋ねると、暫しの沈黙の後
「良く解ら無い?」
と、自信無さ気に答えた。
どんな時にその様に感じるかを尋ねると、
「だらしが無いから人に色々な事を言われるんだと思う。」
という様に、対人接触の問題と自身の行動様式の主客が転倒した答え方をするので
他の悪いと思う点についても尋ねてみると、
「だらしの無さを治す努力がたりない!・努力を怠るのは、向上心が乏しいから!
だから人にいろいろ言われて巧く仲間に入って行けない!・どうしても自信が
持て無くて・・・!?」
と、もっとも肝心な体を避けて思考は堂堂巡りをしてしまっている様で。
来診の経緯などから類推して、自己の判断ではなく、おそらく和子さんの感情や
思考傾向の影響を諸に受けていルことは容易に理解できるので、どんなときに誰に
だらしが無いと言われた事が有るかを尋ねてみると、和子さんの名はすんなりと
口にする事は出来たものの、その他の人の名を挙げる事は出来なかった。
確認の意味を込めて、
「和子さん以外から、麗香さんがだらしが無いから、人と巧く接する事が出来ない
んだって言われた事は無いんだね?!」
と、尋ねると、そう言えばと、初めてその事に思い至ったと言う様に
「そう言えば、そうだと思います。」
と答えた。
「何故、和子さんだけが麗香さんの事をだらしないと思うのかな?
その事についてどう思う?」
「お母さんだからだと思う。」
「どうしてお母さんだとだらしないと思うのかな?」
「子供のことを心配しているからだと思う。」
「心配をするって、一体何について心配をするのかな?」
「善い人間に成る様にだと思う。」
「善い人間って、どういう人の事かな?」
「人に迷惑を掛けず、立派な人の事だと思う。」
と答えた所で、「だらしが無い」・「迷惑をかける」との関係性を確認するために
「誰に・どんな迷惑を掛けた事が有るのかな?」
「色んな人に、色々と・・・」
と容量を得ない答え方をするので、
「麗香さんがだらしないと思っている事をしていて、誰に・どんな迷惑を掛けて
いるのかな? 何かその事で言われたりした事は無い?」
暫く考えていたのか沈黙の後
「お母さんには、その事で迷惑を掛けていると思うし、『あなたがちゃんとして
くれないから、お母さんは何時も嫌な思いをしなければならないんだから』って
時々言われる。」
「それでは、麗香さんがだらしが無いと思っている事をする事で、迷惑を掛けて
いるのは、とりあえずは和子さんだけの様だね!」
すると小さく頷いただけなので、
「和子さんの言う、嫌な思いってな何んだろうね? その事で、話をしたりした
事は無いのかな? 有ったら聞かせてもらえないかな?」
「『私は、一所懸命あなたのためを思って、色々したくは無い事や言いたくも無い
厳しい事も言わなくちゃならなくなる』って、それに『学校の先生や近所の
人なんかに色々嫌な事を言われる』って言われる。」
と、何時も聞かされているのか滞ること無く答えてくれた。
そこで、重要なキーワードで有りながらあえて触れずにおいた「だらしない」と
言う言葉が一体何を指しているのかに触れてみる事にする。
「先ほどから麗香さんは、だらしがないと言う言葉を度々使っているけれど、
具体的にはどういう事なのかな?」
と、水を向けると、暫くの沈黙の後、
「服装とか・しぐさとか色々」
と、やはり何と無く答え方にも歯切れの悪さが除き見え、
「服装というのは、服の種類の事かな それとも着方の事を言っているのかな?」
当然和子さんの目から見た感覚を押しつけられている事が容易に伺い知れるので、
更に水を向けて見ると、
「両方だと思う」
と主観的な言い回しを避けている。
「自分の着る服は、自分で選んでいるのかな?それとも和子さんに選んでもらって
いるのかな?」
「前は、お母さんがみんな選んでいたんだけど、最近は自分で選べる事が多く
成ったと思う」
と、答えてくれ、少しは和子さんの支配領域から抜け出そうとはしている様で、
次に、和子さんと麗香さんの、服の選択基準の違いに興味を覚えたので、
その点についても尋ねてみることにした。
和子さんの選ぶ服は、やはり清楚な いかにも女子中学生という様な服で有り、
出来るだけ他とは遊離せず・目立たない事に主眼が置かれている様で有る。
それに対し、麗香さんの好みの服はと言えば、巷に溢れる麗香さん達の様な
飛び切り奇抜な物では無い様で、エコカラーで・ざっくりとした厚手の生地で・
ゆったりとしたデザインの服が多い様で有る。
そこで、麗香さんがその様な服を選ぼうとする時に、和子さんはどの様な
反応をするかを尋ねてみた。
すると、『エコカラーは「薄汚い・地味・野暮ったい・中学生らしい若若しさや
溌剌とした感じの方があなたには良く似合う』と言う様で、清潔感や・
きびきびとした若さの持つ行動性を表現するようなデザインの服を薦めるとのこと
である。
「麗香さんは、服を選ぶ時に、動き易さについてはあまり重視はしないのかな?」
と尋ねると、
「その事は、あまり気にしない」
と、答えてくれたが、「その事は」と言う表現が気になったので、
「動き易い服だと何か都合の悪い事でも有るのかな?」
暫しの沈黙の後、ポツリポツリと話してくれたのは予想通り、薄手な生地の物・
伸縮性の豊かな生地・カットやスリットの多い物・肌の露出が多い物など、つまり
体の線がはっきりと解ってしまう様な服が問題の本質の様である。
そこで確認のため
「中学生の麗香さんと言うより、肉感的な大人の女性を意識させるような服が嫌
だと言う事なのかな?」
と尋ねると、不承不承と言う感じで頷いた。
「でもそうすると、和子さんの薦める女子中学生らしい服は大人の女性を
意識させる物では当然無いはずなのに、どこに問題が有ることに成るのかな?」
暫し考えた後で、
「年齢とか・センスの問題かな? それに良く判っていないんだと思う。」、
「まぁ確かに人それぞれ好みは違うだろうし、その違いは、育った環境や年齢
性別や基々の個性に依っても違っていて当たり前なんだけど、
今麗香さんが言った『多分判らないんだと思う?!』と言うのは、麗香さんと
和子さんとが違うと言う事を言っているのだと思うんだけれど、その違いのうちで何
について和子さんは判っていないのかな?」、
あれこれ思いを廻らせているのであろう、暫しの沈黙の後、
「い色々!」
と極めて簡略かつ複雑な答え方をした。
「そう、色々有るとは思うけど、その中でも特に麗香さんが、やっぱりこの事は
判っていない、もう少し突っ込んだ言い方をすれば、判って貰えないという点が
有ると思うんだけど、話しては貰えないかな?」
「色々と言うか・全部と言うか・・・お母さんも見たり・聞いたり・触ったりして
色々考えてるんだろうけど、私も同じ様に感じて・考えている事に
気づこうとしないし、二人は違うのに・・・解かろうとしないし・・・」
と、同じ様に人格を保有し、別の異なった感性に基づいて生活している事に気付か
ないか・気付かない振りをしているという、母子の関係に、当惑している感じが、
言葉の端々に散見出来る。
「それでは、自分がどの様に感じて・どの様に考えているかを、和子さんに話した
事は無いのかな?」
「有るけど・・『何言ってんのよ! そんな事お母さんだもの、解かっているに
決まっているでしょう!』って、全全解かっていないんだから。いくら言っても、
『あなたの事は、お母さんが一番良く解かっているんだから、
お母さんの言う事を聞いていれば良いんだから!』って、ほんと最低なんだから!
」
怒りを顕にすると言うよりも、諦めの色を濃くしている様に話してくれた。
これまでのカウンセリングの内容から、 思春期における親離れ・子離れの単純な
認識差に依る精神状態の不安定から派生した症状として処理してしまうのでは無く
肉体を象徴した性というキーワードで母娘の関係性について考察するための材料を
得るために次の様な質問を続け、それと同時に問題の原因が何に
起因しているのかを徐々に認識してもらうためにも行いました。
1:成長に伴う様々な体の発育に際して、その前後で和子さんは麗香さんへの
対応にどの様な変化が有ったのか?その変化の内容とその時の麗香さんの
心情を思い出して話してもらう。
2:身体的な変化に伴ない、家族を含めて男性に対する行動や興味・交友関係等に
対してどの様な対応をして来たか?
このポイントについて少し時間を掛けてお互いに確認し合う作業を行った。
中略
麗香さんのカルテを御覧戴ければお判りの様に、現代っ子がいかに早熟で
有るとは言え、そのプロポーションは成人女性の中で比較しても引け劣るどころか
非常に肉感的で有るのにお気付きでしょう。
この麗香さんの成長過程において、和子さんの女性としてのジェラシーにも似た
対抗意識と、母性本能との微妙な綱引きの精神状態が続いていることが
推測できます。
麗香さんにとっては、人生の長旅路は始まったばかり、まだ見ぬ未来への限り無い
可能性を秘め・心身は共にその輝きを増して行くばかりです。
そんな愛娘を眼前にして、和子さんの認識としては、『自分の幸せを犠牲にして
いるからこそ、家族皆の絆を深めたり、幸福を追い求める事が出来たりするので
有って、
だからこそ一家団欒を守り続けられているのよ!』という事なのです。
そんな家族の一員で有る、娘の成長育成の関わり合いを通じて、自分の人生の
幸福さとその意義を確認する意味合いを含め、優位性の象徴的凝集体として、
家族の幸福という大義名分の名のもとに、その影響力を誇示しつづける事に依って、
変則的な充足感を得ていると言う事になるのです。。
その結果、麗香さんは、成熟した女性を匂わせる状況から忌避する意識が醸成され
皆が性の象徴である自分の豊満な肉体に意識を向けられる事が無い様にと、体の
特徴が隠れる服を好んだり、人と接することから避け様とする様に成ったのです。
以上がカウンセリングの経緯です。 その後、自らの心身は大切な宝物であり、
それを生かすも殺すもどの様に自らクリエイティングして行くかが重要で有る事を
受け入れてもらえるように診療を進めて行きました。
★ポイント! 親子と言えども 所詮、ホモサピエンスのオスとメス?!
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更新日・・・2001年8月1日
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