絵の中の鳥2
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絵の中の鳥たち 第2集
・・・バードウォッチャーの目で見る名画・・・
川村桂子 文
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11.雪舟の「四季花鳥図屏風」 本物の丹頂鶴に出会ったのは京都市の動物園でしたが、思ったより背が高いのに驚きました。その優雅な美しさに多くの日本画家がとりつかれた理由が納得できます。 山水画の大家、雪舟といえば、小僧の時お寺の床に涙で描いた鼠がちょろちょろ走り出したお話は有名ですね。最近、彼の描いた花鳥画があることを知りました。松の木があり、岩や花があり、そこに二羽の鶴が描かれていますが、よく見るとなにか妙な気がしました。たいていの鶴の絵は松とかがバックに書かれ、その前に鶴がいるのです。ところが雪舟の鶴は、一羽は確かに全身を絵の前方にさらけ出していますが、もう一羽は岩や花の後に引き下がっているのです。それは彼がありのままを描いたか、それともなにか思うところがあっての構図なのでしょうか。松の瘤にはハッカチョウが二羽、枝にはジョウビタキ、空にはコシアカツバメらしいのが飛んでいます。留学した雪舟は中国大陸でのんびり鶴のいる風景を写生したのかもしれません。 |

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12.北斎の「群鶏図」 戦争中、極端な食料不足を少しでも補うため母がひよこを飼い始めました。黄色いふわふわした毛玉に、黒い目と肌色の嘴、手の上に乗せて頬ずりすると何とも言えない幸せな気持になりました。その小さなひよこがみるみる鶏に育っていく様は子供心に驚きでした。成長した鶏の頭に 生えてきた真っ赤な鶏冠は見れば見るほど不思議な突起物で鶏を捕まえてはしげしげと眺め、つまんでは引っくり返したものです。 葛飾北斎の鳥を描いた作品には鷲あり鷹あり、見事な鵜や雉、燕等数ある中で、私が2点特に心を引かれた作品があります。1点は天保4年北斎74歳のときの「群鶏」、これを見た時、強烈な印象を受けました。それは団扇絵ですが、藍色を背景に7羽の鶏が描かれています。見事な鶏冠の赤、羽根の白黒、7つの目はさながら北斎自身が宙を睨みすえているように鋭いのです。 |

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13.北斎の「東町祭屋台天井絵鳳凰図」 比良山系のひとつ打見山へは何度か鳥を見に行きました。ある年ジュウイチやホトトギスの降るような鳴き声に夢中になり、右や左の梢を見上げていましたが、ふと視線を足元に向けたとたん頭の中が真っ白に! 草叢に見た物は直径40センチほどのとぐろを巻いた蛇でした。それも鱗が赤味をおび、素人目にも並の蛇ではないと直感いたしました。あのまま上を向いて進んでいたら・・・。今思い出しても寒気がします。図鑑によりますと鳥の先祖は爬虫類だと書いてあります。あの気味の悪い蜥蜴や蛇が美しい鳥に進化したとはなかなか信じられません。 北斎が85歳で描いた「東町祭屋台天井絵鳳凰図」を眺めた時、なるほど鳥の先祖は爬虫類だと納得しました。1羽の鳳凰が見事な尾羽根を渦巻状になびかせているのです。鱗と思ったのは鳳凰の羽根の重なりだったのです。鳳凰図にしては濃い緑とこげ茶色、所々に朱色の渋い色調ですが、一見眼球のようなまっ黄色い羽根の文様が全体を引き締めています。2つの鳥の絵は見れば見るほど恐ろしいような北斎のエネルギーを感じる作品だと思うのです。 |

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14.ホルスト・ヤンセン「ポスターの原画」 もう随分以前のことですが、何かの用事で電車に乗っていた私は目の前にある一枚のポスターから目が放せなくなりました。それは 履き潰された一足の靴が線描で刻銘に描かれていました。それから二・三日後私はポスターに憑かれたように大津にある西武デパートのホルスト・ヤンセン展の会場にいました。 嘴が赤く真っ白な文鳥を飼っていたことがあります。手乗りでしたので外へ出すとすぐ私の肩に止まったり手に乗ったり、挙句の果てに飲みかけたコーヒーで水浴びをしたがり、危うく火傷しかけたこともあります。とても可愛がっていたのですが病気になりだんだん弱ってしまい、死ぬ間際の苦しみは側で見ていられないほどでした。一時間ほど身体を反らせたり、時にはぐったりしたりで、手の施しようもなかったのです。人間も動物も死後の苦しみがあるかどうかは判りませんがホルスト・ヤンセンのポスターに描かれた鳥は見るも無残です。山鳥らしいのは鈴のついた罠に掛かり死後硬直したまま逆さに吊り下げられ、また別のポスターの小さな青い鳥はひっくり返ったまま足に鈴と紐が絡み付いています。羽根は苦しみ抜いて固くなっており目はうつろに空にとどまっています。このような悲惨な鳥を描いたヤンセン、これは私の想像ですが、10歳のころに祖父を失い、続いて翌年母の病気と死を経験し、獄中生活の経験もある彼がその上成人するにつれて繰り返される戦争と殺戮、地上を焼き尽くす核の脅威、そしてアウシュビッツの悲劇、人間に生れた辛さ、やり切れない人間の業を罠に掛かって死んだ鳥に置き換え描いたのではないでしょうか。 |

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15.セルジェの「青い鳥」 高校生の時初めて倉敷の大原美術館へ行くことができました。それまで西洋絵画は学校の図書館の黴臭い美術全集をひろげて見ているだけでした。大原美術館では世界の巨匠と言われる人達の本物の絵がありました。中に1枚お伽噺から飛び出したような愛らしい絵が掛かっていました。セルジェの「青い鳥」です。金の縁取りのある赤い服を着ている娘と帽子を被った男の子の間に、木が1本立っていて、その枝に青い鳥が止まっています。鵯くらいで、嘴を娘に向けて何か語りかけるように開けています。小鳥の全身は海のような青い色なのです。バックには木立が菱形に開いて遠く丘や町並みが見えます。同時代の童話作家メーテルリンクのチルチルとミチルは兄と妹ですが、この2人は姉と弟のようです。青い鳥は幸せを運ぶ鳥ですが、極楽鳥とか孔雀のように派手な鳥で描がかれないのは、昔から幸せとは日常のささやかなものの中に在るということでしょうか。 |

(部分)
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おことわり: 文中の絵はイメージを得るためのもので
解像度を落として掲載しており、複写には耐えられません。
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