晟俳句集1

 

 

 

 

 

 

あきら俳句集

 

第一集

 

平成五年 冬

観音竹雪を払いて抱き入れぬ

家鳴りして亡父が火鉢に手をかざす

寒朝や表掃く人うとましく

雪を着て背筋を立てる父の墓

妻は里娘はスキーにて我れ炊飯

冬道を軽やかに跳ぶハイヒール

冬一人何を食すか午後一時

侘助がセクシーに見ゆ山の寺

地下鉄を出れば雪の降る異国

振袖に駈けては駄目の声を背に

 

 

平成六年 春

振り向けば肩にかかりし梅の息

二年坂コートは脱がずわらび餅

春の朝妻の寝息に起き出せず

母亡くも里帰る妻春化粧

尾道を下れば花の寺続き

急停車の車外を見れば桜かな

老梅はカメラ背にして咲きにけり

ねぎ坊主人気もなくて陽の盛り

花散りてただの並木を通勤す

魚の目に雨は輪形に降ると見ゆ

 

平成六年 夏 

予定地に来夏を知らぬ泡立ち草

冷房の部屋から見ゆる楽な夏

蛇いちご色冴え渡り夕立去る

どくぜりや比良のふもとに小一時

比良の夏首一周をしたき景

夏比良の金糞峠の蝿太る

日傘行く窓辺でホットコーヒー呑む

瀬の音をおはぐろとんぼ知らん振り

清水汲む感情線の白き砂

夕立ちや集中治療室の寂

 

 

平成六年 秋

ぎんなんを見つけて仰ぐ銀杏かな

一人立ちも二人立ちもある曼珠沙華

物置に亡父の日記ぞ鰯雲

運動会のごみ焼く煙午後六時

客を待つ懸崖菊を買い求め

晴れて秋時雨れて秋の我が日記

街灯の球切れかかる路地の秋

一面の野紺菊なり避けて座す

深山のほころび目から秋の空

二ノ瀬峠パッチワークの峰紅葉

 

平成六年 冬

雪音に目覚め厠に導かる

鳥篭を庭に忘れる夜寒かな

人参の型抜き端で晦めし

自転車を洗う明日は元旦か

七草も平成色に炊き上る

テレビにも粉雪の舞う激甚地

倒壊の人をこたつで見る罪悪

山小屋のレースカーテン越しの雪

春淡し娘の手のひらに豆の数

洗濯機の濁れる音す寒一服

 

 

 

平成七年 春

庭走る鼠の子にも春の顔

かたばみを残して溝の草むしり

母の日に父さんにもと鳥図鑑

旅パンフと梅雨入り予報を両にらみ

蛍火のすとんとS字描きそこね

木洩れ雨弁当の中にポトリ入る

荒梅雨にずぶぬれ走る消防車

塩鮎をポン酢につけて梅雨の明け

いたちの子入ったとこからさようなら

故紙回収の声も小走り梅雨さなか

 

平成七年 夏

三日梅雨哀れや蝿の逃げ場なし

遠雷にパソコン停めて抹茶飲む

遠雷や二才の孫の仏顔

暑中とて納屋の雨漏り忘れごろ

冷蔵庫丸ごと西瓜スペースなし

焼くる屋根爆音のみが通り過ぐ

立ち枯れの松の下よりノダケ萌ゆ

花皿を荒縄でしばる五條市

湿原のミニ睡蓮に屈み込む

夕膳にビール忘れるほど新涼

 

 

 

  平成七年 秋

ユリカモメ初見と娘に電話する

鍋煮えて指先徐々に暖かし

笹鳴きをたよりに薮を覗く人

晴れ着どもが石蹴りをする七五三

マフラーを懸けつ外しつ初冬晴れ

ワープロの日記短し手の寒さ

葦枯れや隣の道も釣りの人

散髪の襟元寒き法事寺

シドニーに夏着を持って発つ娘

独り居てこたつに潜る身の広さ

 

  平成七年 暮

遠き日や落ち葉焚く人はぜる音

シドニーの木陰でサンタ涼みおり

赤道を渡る俳句の季語は何?

年暮れやテレビの裏の十円玉

眼前に屋根からどどっと雪頭

書く手やめ喪中の友に暮電話

初雪や一日多き里帰り

裏山でウラジロ刈りて年暮れる

ほどよきにとどめておかむ年用意

雪折れを貰ひて帰り松飾り