晟俳句集2

 

 

 

 

 

 

あきら俳句集

 

第二集

 

平成八年一月 

三が日孫の守する獅子がしら

電気釜で炊いても香る七日粥

初場所のテレビの中に晴れ着の娘

腰痛の姿写れる初鏡

道聞かれ親切になる初詣で

ちゃんちゃんこで家事する妻の誕生日

四日目の年賀もなくて鳥を見に

用もなく石油も切れて寒の入り

軒下の玉葱乾く寒なかば

雪しぐれ植物園のきつね蕎麦

 

 

平成八年二月

蘭の葉の雪になほさら積もる雪

お薄をば片手呑みするこたつ中

セキセイを廊下に締め出す雪の客

整骨院暖炉の傍は歳の順

小春日や風邪を残して孫帰る

春いまだとろ火にかかる小豆鍋

風邪の日の受話器の向こうもしゃがれ声

雪の朝音もさくりと郵便受け

春いまだ工事現場の焚き火跡

淡雪や玄関先の客の声

平成八年三月

母飾る雛を横目に娘の出勤

雨音も生暖かき湯殿かな

薄氷や叔父入院と叔母の声

春近し庭木の鳩と目を交す

啓蟄や九十の叔母が杖ついて

風光る孫の来る日を日めくりに

御池通りいつもの人もコート脱ぐ

眼鏡拭く息も曇らず春ゆえに

灯油屋に春の到来聞いておる

梅林を背に老夫婦ごみ拾い

 

 

 

平成八年四月

戸を開けて出会い頭に燕飛ぶ

連休に娘ごろ寝の春ごたつ

鳥の絵が得意な孫の入園日

円山の犬の糞にも桜降る

ふるさとや校庭の隅桜見ゆ

戴きし桜座席に隠しえず

葉牡丹の花に届きし孫の丈

チューリップに屈み込む子の膝坊主

ストーブが廊下にいます夏日かな

春菜しゅんさいや娘デートのおすそわけ

 

平成八年五月                  

鯉のぼり双眼鏡に泳ぎ込む

つつじ苗植えて日陰に如露配す

母の日や巣箱に雛の声ルルと

母の日や局留め通知足元に

パンジーの鉢にのら猫昼寝なす

今時は信号で炊く豆ご飯

青嵐鞍馬はケーブル休止中

茶団子をもとめ新茶のお替わりす

浅漬けの茄子洗う水手に涼し

みみず這う観音竹の根分け終へ

 

 

 

平成八年六月

雛三羽一羽育たぬ麦の秋

更衣カラトの底に被災記事

なめくじら見ぬふりすれば歩みだす

あじさいの散りそめてより人も来ず

水溜まり渡り行く児の泥の丈

伯母逝きて久しき顔のいとこ達

荒梅雨や喪服の人ら物影に

骨壷へ傘をさしかけ裾ぬらす

傘立てに派手に濡れ合う梅雨の友

梅雨晴れや隣うるさき洗濯音

 

平成八年七月

笹飾り園児おりますしるしにて

夜遊びの娘叱りて蚊を叩く

久々に四条歩めば鉾立つ日

花火持つ子の藍き柄浮かび立つ

結び一番部屋にようやく風通る

宵ばやし見上げて鉾の先は闇

自転車のサドル焼け付く買出し日

消し忘れのテレビに流る柔道金

デパートを出てほとほとと暑き夏

パトカーの遠のくほどに蝉の声

 

 

 

平成八年八月

手うちわに「暑くて参る」の葉書振る

「今日わ」の声に連れ立ち風通る

空蝉や六十過ごせし戦中派

よろけつつ座席を移る夏のバス

盆休み仕出屋の軒三毛の声

孫去りてたらいを仕舞う盆の果て

夏鳥や突堤越しの巨大船

扇風機いつの間にやら片隅で

秋雨や加茂に流れる犬の骸

休耕田隣の稲の背の高き

 

平成八年九月

発表会の切符重なる鰯雲 

畔道にコスモス一輪またぎ越す 

昨日今日佳きこと多き茗荷汁

秋祭出店もなくて空太鼓

秋澄みて主婦ら日向の長話

台風の足取り遅き庭の晴れ

カネタタキ童止れば音を潜む 

台風去り道路に濡れし顔ポスター 

捨てかねて秋雨靴の底に染む

花むくげ気付かぬ人も通りけり

 

 

 

平成八年十月

曼珠沙華を見下ろす土手に座をきめる

飛行雲消えゆく先に柿の里

運動会の翌日年齢をふたつとり

仏前の青切りみかん色づきぬ

去年色に鉢いっぱいのほととぎす

礼状書きホームごたつの使い初め

秋選挙珍しき人尋ね来る

蟷螂や凶状多き世となりぬ

秋晴れや投票場のうす暗き

ひと枝のはぜ赤々と抜け出せり

 

平成八年十一月

レンズごと秋色となる山歩き

山馳せて蜂の子取りの良き大人

時雨来て季語の頭は整いぬ

午前様の娘ひたひた雪もよう

子を叱る母に育ちぬ七五三

休刊日今朝は寂しき冬すずめ

ホカロンとサロンパスとで山歩き

のせい一と月早き暮れ用意

狭き家狭きに座して冬構え

風冷えや二人で走る安値市

 

 

 

平成八年十二月

初雪や大型ごみに降り積もる

雪が雨に変わりて急ぐ清掃車

雪散りて見上げる空の青さかな

「火の用心」の声露地裏に進みけり

ぜんざいも煮詰まり加減冬の月

子鼠を追い出してみて外のて

床の間にサンタ残して孫帰る

カレンダーを娘に頼る停年後

年の瀬や座り込むたび妻の目が

暮れ掃除の側で居座る背の寒さ