晟俳句集3
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あきら俳句集

第三集
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平成九年一月 遊ぶ児のなくも元朝下駄の音 三日目は昼寝場となるテレビ端 七草や妻に押されてパン朝食 冬深々古家に人の気配あり 冷蔵庫に小餅残して小正月 床の間が広々見ゆる松の明け 「婆さんがまた入院や」叔父の冬 雪原のここから先はスイスとか キングクロス駅裏寒きカフェにて 欠伸してまた身の縮む昼ごたつ |
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平成九年二月 うちそとに二粒撒きて寒明けり ランドセルの値段気になる爺と婆 植物園人出ばかりの春まがい 大屋根の雪落ちる音窓の顔 叔母見舞い花瓶の窓に寒もどる 紅梅に群がるカメラちと邪魔よ 風邪マスクはずしてすする梅渋茶 眼鏡掛け雛人形に大接近 春一番娘居る日が久しぶり 空の青向かいのうちも布団干し |
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平成九年三月 娘は嫁ぎ親が戴く雛あられ 妻の居ぬ窓に春陽の長きかな 啓蟄や小包日和息子宛て 起きがけの春はくしゃみで始まりて 初蝶や行き交う人の青きシャツ 掛布団一枚はがし冬仕舞い 木の芽立つ庭の狸は傘の内 葬列に妊婦も並び菜種梅雨 春近し鳥篭のぞく見知らぬ児 山桜リュックズックの超満員 |
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平成九年四月 「散りました」唖然と見上ぐ草だんご 春眠も娘の出勤に合わせつつ すぼめたる傘に貼りつく花のひら 眼鏡かけ桜のトンネルつくづくと 花疲れ夕日射し込むベンチにも チューリップ祭にトイレ長蛇の列 バスツアー窓に眩しき梨の花 橋立の濃い松に小さき二人連れ 葉ぼたんも背伸びしすぎて切り花に 白昼に雀の恋がここかしこ |
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平成九年五月 七回忌初会の人と余花の縁 紫陽花の花芽見つける出がけ時 遠距離の息子歯がゆし聖五月 目まといや空の青さも恨めしく 家の中苗代寒とて着込む妻 噂話わき見もせずにつつじ園 弔いに演歌流れる夏はじめ 紫陽花を二鉢庭に法事の日 梅雨近し来たりてパソコンいじる婿 筍もろく食べぬ間に月終える |
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平成九年六月 再検査結果良しとて傘軽し 見下ろすと派手な傘かな妻の客 雨宿りの人のうわさを盗み聞き 百円のマリーゴールド五倍咲き 枇杷五つ食べて満足老いし叔父 老人会手すり伝いに額紫陽花 昼顔や池を巡れる初老連れ 旅行終えリュックで水やりサルビヤに 枝刈れば梅雨はまともに庭床へ 絶句する事件(こと)多くして梅雨忘る |
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平成九年七月 長雨やレンタルビデオ二本立て 床の客気の毒なほど河畔涼 雨音に昼寝もならず冷コーヒー 梅雨晴れやシャツ七枚が干し上がる バスに乗り一息ついて窓の雨 宵囃子空に風船またひとつ 鉾仕舞い戻りかねたる人の群れ 台風や親娘で囲む久し振り 献立の折合わぬままうなぎの日 水増して崖にうかがう五位の鷺 |
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平成九年八月 花街に媼ばかりの夏の朝 若僧の経大天井に盆供養 木屋町の店覗き込む夏帽子 カタログで夏日を避ける家族連れ 乳歯持ち炎天帰る小学生 訃報聞く夫の額玉の汗 末裔が仏壇求む夏の雲 女面男面あり秋あざみ 手術後の傷ひもときて秋の風 群燕や芦に眠りて月登る |
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平成九年九月 秋立ちぬ御池通りの向かい風 人工の芝生にも来て虫の鳴く 浜日和初秋といえど缶ジュース すずむしや当家の主かよそ者か 捨て土に芽の吹き出して野萩咲く 台風が来るよと鳥に話かけ 秋彼岸故郷に集う人老いし 背の伸びし孫も埋もれる秋桜 車窓をば彼岸花飛ぶ今年初 「柿むくよ」耳元でして昼寝醒む |
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平成九年十月 土手晴れてすすきひと房戴けり 秋晴れや消防署員ホース干し 菊一輪仏に供え留守にする 青北風(あおぎた)や裾ひるがえす巫女の庭 青北風(あおぎた)や並木の影も吹き流す 晩秋や川幅細る柊野 金もくせいと伴に暮れ行くお留守番 地味な庭地味に咲き初むほととぎす 柿の皮つるして食べし思いでも 叔母逝けば病室白む秋寒し |
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平成九年十一月 文化の日嫁行かぬ娘の洗濯日 「虫食い」の松茸市に人だかり ずわい蟹座敷机に鎮座ます 小春日に犬すれ違う賀茂の土手 冬近し二軒先にも出そびれて ぎんなんを拾う児の背にまた一つ ストーブに去年の匂い初使い 初冬や九十でやもめとなりし叔父 しお鯖を餡かけで食う冬の入り 渋柿のたわわに続く園部越え |
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平成九年十二月 カレンダー破り師走の薄さかな 桂川枯れ芝を刈る音遠く 暖かき日の有難き年令となる 休日の冬日悲しき解体家 お隣の歳暮預かる日暮れ時 ホットミルク酌み交わしつつ冬の夜 葉牡丹を二度買いに出る日和かな 粕汁の匂い嗅ぎつつ賀状書き 先不明と戻りし賀状つくづくと 紅白は騒がし消すも寂しくて |
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