桂子俳句集2

 

 

 

 

 

 

桂子俳句集

 

第二集

平成八年一月

年頭や時計きらきら時刻む

雑煮餅腹具合みる歳となる

初詣神主の袖に小雪舞う

小正月過ぎて間抜けの獅子頭

大鏡正月過ぎて箱の中

車窓越し悠然と現るでる比良は雪

雲湧きて山頭残す冬の比良

夕映にかけすの鳴くや寒の入り

冬枯れの川原にホオジロ飛び込めり

枯れ木立天空を切る飛行雲

 

 

平成八年二月

雪だるま道に残して二三日

孫が来て置いて帰りし風邪土産

はだら雪探して歩く小長靴

庭紅葉枯れ葉をつけて芽ぶきけり

冬ざれの茶室の庭に笑い声

トラツグミの声らしきして雨模様

橙の実が残りたる雛節句

ふくれ鳩道に居座り冬うらら

前髪を下ろして春の若返り

枯れ木越し星を見つける春近し

平成八年三月

日足伸ぶ四条の流れゆるやかに

校庭に太鼓響きて冬送る

雛扇格子の奥に静まりて

三月の寒き中にも匂いあり

水汲みや一点赤きやぶ椿

白川に住みつきし鴨昼寝中

雛あられ母の気知らぬ午前様

薬屋の隣に裸体画懸かる春

億年の彗星ながむ春浅し

ぞうさんがごろ寝している暖かさ

 

 

 

平成八年四月

土手桜蕾はにかむ人嫌い

桜見て鳥見て空見る極楽日

車椅子にカメラ取り付け桜下

一ひらにふと見上げれば大桜

能舞台と紛う桜に出会いたり

ふるさとの菜の花の黄に迎えらる

死に向かう友の覚悟や菜種梅雨

スーパーのいちごの横で訃報聞く

陽の下にどの花も良き春野かな

菜の花のせめぎあいたる土手の朝

平成八年五月

泣きながらお子様ランチ子供の日

検査終え出ずれば白き花みずき

病院の椅子の固さや花の冷え

花の名も樹の名も知らず春の野辺

シャガの花しみじみ春を惜しみけり

岡寺の落剥仏や岩つつじ

法起寺の小さき地蔵イカル鳴く

山道に靴重くして夏間近

うたた寝が夫に傾く山電車

滝音に熟女らの笑いかき消さる

 

 

 

平成八年六月

昼火事の煙ひろがる走り梅雨

真新し鳥篭を射る夏日かな

あじさいを植え替えしあと朝化粧

胃薬を送りかねたり曇り梅雨

荒降りに傘をすぼめて軒を借る

蚊にささる生身今年も残りけり

孫とするリズム体操もどり梅雨

あおばずく禅僧のごとく夜を待つ

御無沙汰の手紙が書ける梅雨のひま

梅雨晴れの日の高きこと洗い髪

平成八年七月 

遠雷やコーヒー飲む手止めて待つ

杉になれ花火こわごわ小さな手

綿菓子をもとめて鉾を巡りけり

夏祭歩かぬ孫にジュース買う

火傷しておとなしくなる花火の子

片陰を選びて歩く万歩計

風死すも百日紅の衰えず

可愛ゆらしく呆うける伯母も夏に逝く

蚊やり豚買いて偲べる三十年

土手涼み若手に混じるフルムーン

 

 

平成八年八月

大浴場音なき花火ガラス越し

観光バス帰路は西日の突き通り

メボソ鳴く原生林を土産とす

一周忌クーラー消して読経す

供養膳田楽茄子のはべりおり

ちっち蝉かすかに聞きて物を干す

坪庭に飛び込んで来た蝉の声

大文字背伸びする娘の背中越し

大文字ノの字の早く絶えにけり

秋祭帰りたくなる友の声

 

平成八年九月

喪主一人残りて秋の庭を見る

萩の膳長身の叔母の骨納め

いわし雲ビルの合間に切り取られ

遠縁も仏間に集う竹の春

叔母帰り座椅子残りて秋時雨

ホームレス何時ものベンチで秋見てる

店頭に一把わ残りしワレモコウ

四国路に英語も交じる秋の旅

悔やむこと多き旅なりワレモコウ

瀬戸大橋渡り終えなお彼岸花

 

 

平成八年十月

良き夢を見て寝たまえと秋の月

一寝してまたテレビ見る夜長かな

こおろぎの声につつまれローカル線

亡母に似たローカル線に秋日差し

眠き朝麻酔のごとき金木犀

長生寺女が秋に鐘を打ち

バス旅行秋の夕陽が右ひだり

秋の陽の落ちる速度にバスは帰路

わが年齢を友に見つける秋の宿

船廊下渡れば竹生秋潮満つ

 

平成八年十一月

時雨れると思えばあらと青き空

別れ蚊の鏡に向かい狂いおり

小娘がスキップ比叡のすすき道

こっそりと地蔵に願う花野かな

石山寺石の青さと緋の紅葉

かいつぶり潜って二つ輪を残す

秋の夜は白葡萄酒と青林檎

つくづくと手の節太し秋収め

秋日和よその娘の華燭の典

手をこする季節となりぬ日の早さ

 

 

平成十年十二月

冬いちご核のなごりを舌の先

神経痛冬晴れの空窓越しに

干し竿を買い替えて空冬の青

花八手握りこぶしがいっぱいだ

奥入江巴鴨浮く西の池

冬冷えや野良呼んでみる朝の露地

あと一日暮のテレビのかしましさ

古暦一日残しくたくたに

やめようと思えど節料やめられず

餅食ろて貪欲に生きるこの上は