感覚統合
※以下は、私の理解の範囲内で簡単にまとめたものです。もっと詳しく知りたいと思った方は本などで調べてみてくださいね。(^^;)

人には様々な感覚(聴覚・触覚・視覚・固有覚・前庭覚・・)があります。
感覚からの情報は脳へと伝わり、そこで情報をまとめあげ、次に必要な動きなど、脳から身体の隅々へと指令が行き、いろんな活動を行うことが出来ます。
よくある例えですが‥簡単に言うなら、気温に対する変化。暑いと汗をかいて体温を下げろという指令が出て、汗をかくことが出来ますし、逆に寒ければ身体がぶるぶると震え、熱を作り出し体温を上げようとします。
立つ、座るなどの単純な動作でも、自分の身体の中心(重心)がどこで、自分の身体をどう動かせば良いのか、それはそれは細かく脳から指令が出て、さらにその指令にすべて正しく反応出来ていれば、きちんとバランスを取り、イスに腰掛けたり、また、うまく立ち上がることが出来たりするのです。

ごく自然に動いているかのようですが、実は数多くの情報の入力と、それらをまとめあげた上での脳からの指令→反応というシステムが正常に働いているからこそ、私たちはいろんな活動が出来ます。

発達障害児の多くは、この感覚入力や、入ってきた感覚の情報をうまく脳でまとめあげて、必要な指令を身体に送ること(反応、行動)がうまく出来なかったり、または違った情報として伝わっていることもあるようです。
(例:雨粒が身体にあたると「冷たい」のが、「痛い」と感じる、など)

「感覚統合」というのは、こういった情報処理(感覚情報の入力、脳で情報をまとめあげ、正しい反応を身体に伝えるまで)を、うまく使えるようにプログラム化したものです。(詳しく知りたい方は、「感覚統合」で検索してみてください)

発達障害のことを「感覚統合障害」という方もいますが、私はこの表現のほうがこの障害のことをうまく言い表せている気がしています。
感覚統合療法では、心理士や作業療法士が主に関わります。本人のアセスメントを行い、その時に最適な目標を設定し、理論に基づき行われます。しかし、幼児の場合は特に、理論的なことを知らない人がそのセッションを見たら「遊んでいるだけ」にしか見えないかもしれません。(特に上手なセッションは、子供がすごく楽しそうにしてます。)
感覚統合の視点を持つことで、家庭でも(専門の療法士にはもちろん及びませんが)遊びの中にちょこっと取り入れることくらいは出来ます。

ただし、同じ発達障害でも様々なタイプがありますので、ここで紹介するのは、あくまでも我が家の一例です。
(それぞれの遊び方に一応、なぜこの遊びを取り入れたのか、かんたんに理由を書いています。)
もし参考になるようでしたら、ご家庭でもお子さんに合うようにアレンジしてぜひ”楽しく”遊んでみてくださいね♪


子供の育ちをサポートすることに関して大事にしたいことは、順序です。
子供の発達には、順序があります。生まれて間もない赤ん坊に、いきなり「立って遊ぼう」は、いくらなんでも無理な話ですよね。
そんなふうに、感覚統合にもちゃんと順序があるのだそうです。

以下、専門書籍からわかりやすくひろってざっくりと書いてみます。

1:生まれてから〜2歳頃まで。
授乳・抱っこなどの母親との触れ合い→「触覚」の刺激→母親との絆が出来る。
身体の動き・力の入り方を感じる感覚→筋肉に働き、姿勢保持・バランス・眼球運動など

2:〜4歳頃まで。
身体知覚、自分の身体を意識して動かせるようになる。
これは、第一段階目を習得して出来るようになることです。

3:〜6歳頃まで。
視覚・聴覚などの情報が統合され、目と手の協調運動が可能になる。(見たものをつかむことが出来る等)
形・音の区別、目的を持った行動などが出来るようになる。ことばも発達してくる。
これらも、やはり第一、第二段階が習得出来た上で、出来るようになると言われています。



感覚統合の本を読んではじめて、「ことば・発語」までいくには、こんなに長いプロセスが必要なんだということを知りました。(通常の発達であればほぼ自然に習得出来ていくことですが・・)
基礎をやらずには、いきなりしゃべれない。この場合の「基礎」というのは、感覚情報の入力〜出力(行動)までを訓練して育てていくこと=感覚統合、ということになります。

英語で話せるようになるまでには、アルファベット覚えたり単語覚えたり、発音したり、書いたり・・いろんな基礎が必要になるのと同じ・・というふうに考えれば、やっぱり基礎からきちんと積み上げていくほうが、確実ですよね。


追記

樹の場合は、重症仮死の影響で身体がうまく動かなかったこともあり、どこからどこまでが麻痺で、どこからどこまでが発達障害ゆえの困難さなのかは見極められません。
そのため、ここに書いたものの中には、発達障害児向けというよりも、麻痺のハビリテーションに近いものも多く含まれています。

家庭における療育について

※本来、本人に合った療育を提供するには、本人の状態を正しく理解すること(アセスメント)と、専門の知識が必要です。ここでは、普段の生活の中でも出来る”療育的な遊び・我が家バージョン”を紹介しています。

本人が楽しんで取り組めるような工夫をしました。楽しければ自然と意欲的に取り組むので。実は訓練的な内容を含みながら、本人にとっては ”楽しい遊び” にすることを大事に考えています。

私はまず、療育の柱(何に対して有効な訓練をするのか)を決めましたが、あまり先の事ではなくて、目の前の、生活上のちょっとした動作のつまづきなどを元に、細かく考えていきました。

実年齢で他の子と比較しない
何か教えたい、出来るようになってほしい。そういう時、実年齢ではなく、発達年齢を基準に考えるようにしていました。実際の年齢相応のことは出来なくても、発達年齢に合わせて、少しづつ丁寧に細かく分けてスモールステップで教えていくことで、ゆっくりですけど出来ることは増えてきています。”焦らず本人のペースで!”を常に自分に言い聞かせています。




手・指先の操作性を高める。

ナイナイばあ
(↑各タイトルは私が勝手に名づけたものです((^^))
樹の状態>玩具などに興味を持ち、自ら手を伸ばすことはほとんどない。指先しか使わない。(物が握れない、少し重さのあるものは持てない。)

意識したこと:視覚・触覚・・指先〜腕を使う動き。短時間の記憶の保持・目と手の協調運動などを意識して見ました。

ミニタオル等に小さなおもちゃを軽く包み、開けさせる遊び。一番初めは、包まずにおもちゃの上にかぶせて隠し、「ナイナ〜イ」「○○、どこ?」と、かぶせたタオルを取って、おもちゃを見つけさせました。

最初の頃は、おもちゃが見えなくなると関心がなくなることも多く、透けて見えるような薄手の素材のハンカチでおもちゃが透けて見える状態から始めました。

慣れてきたので、今度は上の写真のようにおもちゃを軽く包んでみたが、包むとまったく興味ナシ、反応ナシ!いわゆる「見えないものはない」の状態に。そのため、まず先に、目の前でそのおもちゃで遊んで気を引き付けてから包んだところ、興味は引いたものの、開くことが出来ず、包まれた状態のままポイ!

手を添えて根気よく開き方を教え、開いたら褒めるを繰り返し、ようやく自分で開けるように。片手の指先しか使わない時期だったため、うまく開くには手首を少し動かす必要がありました。何度やっても出来ないと、本人もやる気がなくなるので、最初はとても小さなサイズのタオルで、簡単に開けるようにしてスタート。

この遊びのポイントは、本人が「探したくなるもの」を隠すこと。目線をうまく誘導するなど、隠すタイミングが大事。


ナイナイぽとん

空箱におもちゃを入れたり出したりする遊び。樹が片手で持てる大きさのお菓子の箱と、少し大きめのボタン(←樹が興味を持ったので)2個にしました。繰り返し何度もやることが楽しいようなので、中に入れるおもちゃの数は少なくしました。

【この遊びを始めた理由】
掌の過敏がひどく、物をしっかり掴んだり出来なかったため、「物をしっかり掴む」ことと、箱を傾ける動きによって「手首を動かす」ことになるかなと考えていました。それと、視界から消える(見えなくなる)と興味はそこで止まる感じだったので、天井の空いた容器に入れて、覗けば見える形にし、「見えなくなっても、そこにあるよ」も、判ってほしいなと思って始めました。

【遊び方】
最初は、ママが楽しそうに「ナイナーイ…ぽと〜ん!」と、何度か、気を引くまでやってみせます。最初は箱を持つことが難しかったので、床に置いた状態でボタンを拾って入れ、ママが手を添えて箱を持ちあげ、傾けて中のボタンを「ぽと〜ん!」と落とす、を繰り返しました。

自分で箱が持てるようになったら、今度は一連の動作を、言葉掛けで誘導。箱を持つ、ボタンを拾い入れる、箱を傾けて落とす、たったこれだけの動作ですが、何度も手順を忘れては固まっていました。

※まだ長い手順や、複雑な動作は出来ない時期だったので、単純な繰返し動作です。


お手玉、ビーズクッション



2歳頃から使い始めました。
お手玉はお手製ですが、ビーズクッション(大人の掌サイズ)は100均で購入しました。軽くて持ちやすいです。

【遊び方@】
はじめは触るのを嫌がるのでママが目の前で触ったり転がしたり落としたりして見せ、それを取ってもらう「ちょうだい」「どうぞ」をさせながら徐々に触れることに慣れさせていきました。

【遊び方A】
触ることに慣れてきたら次は身体のあちこちに乗せて、自分で取らせる遊びに移行。
手の感覚過敏の訓練だけでなく、ボディイメージをつけるための遊びとしても使えます。

【遊び方B】
ラップの芯の中にお手玉を入れて滑らせ、下に落とし、それを取らせることも。芯の中に入れると、一旦、物体は”消える”けど、別の場所から出てくる!これを繰り返すうちに、”見えない物の動きを予測して目で追う”ようになりました。

感覚遊び・スライムなど
意識したこと:感覚過敏、聴覚過敏・創造性など
感覚(触覚)過敏のため、最初は触れさせることが難しかったです。
粘土、スライム、ビーズ、砂、小豆などを使って遊びます。
身体に触れるような遊び方や、音を出す遊び方をします。

最初は、お菓子の箱や缶、玩具の太鼓などを抱えさせて、それにパラパラとお米や小豆を落としたりして音を出して遊びました。聴覚過敏なので、無理強いにならない程度に少しづつ段階を踏んで、慎重に様子を見ながら慣らしていきました。

※細かい道具を使う時は、片付けがタイヘンなので、ベビーバスや、プラスチック衣装ケース、大きめのマットなどを使うと良いです。あと、小豆や米を使うのは、誤って食べたりしても大丈夫なようにと思ったからです。

初めての積み木(布製)

手首の動きがとても硬く、まだまだ不器用な上、物をしっかり握ったり掴まえたりも出来なかったので、最初に選んだ積み木は、布製の大きなもの。布なので感触もそれほど嫌がらないし、柔らかいスポンジなのでつかまえ方がぎこちなくても、持つことが出来ました。汚れたら洗えるというのも良かったです。

積み木等のおもちゃに慣れる前段階にと考えてたので、じょうずに積むことよりも、触ったり、握ったり、押しつぶしたり、転がしたり、身体のあっちこっちに乗せてみたり…といった遊びをしました。

ママは一応、見本のため毎回積んで見せてはいましたが、無理にではなく、本人が興味を持ってきたら、手を添えながら積む練習を少しづつしました。

この他にも、台所用のスポンジや小さな空き箱などを積み木代わりに使ったりもしました。


カップ重ね

ふだんから食べているヨーグルトやゼリー、ベビーフードの空容器等、比較的丈夫そうで、重ねることが出来るものを、それぞれ複数個づつ取っておいて、「同じもの同士を重ねる」遊び。

壊れても、いつでもすぐにまた新しいものに取り替えられるし、形も様々で、なかなか使えます。

※ただし、本来の使用法(使い捨て容器)ではない使い方なので、使用には注意が必要です。


↓もう少しレベルアップ!

こちらは市販の「コップ重ね」。中に重ね入れることも、積み上げていくことも出来るというものを買ってみました。

これは、「同じ形だけど、大きさが違う」ので、同じ大きさのものを重ねるよりもレベルがずっと高くなります。

樹は、カップの形をしたものはなんでも舐めてしまうので、洗えるというのが購入の決め手でした。


プットイン

手首を返せない、手の動きが硬い間は、穴が大きく、入れるものもつかみやすくて簡単に入れられるものを用意。
手首を少し動かせるようになってきたら、穴の位置をいろいろな向きにすることで、自然に手首を動かして遊ぶように設定しました。

離乳食の冷凍保存に使っていたケース
を再利用。

少し力を入れて押すと入るくらいの穴を
開けてあります。
プットインに慣れるとこんな使い方も。

紙をちぎって散らかすので
紙専用のプットインを 空き箱
を組み合わせて作りました。

これで、部屋中を掃除しなくて済みます。

洗濯バサミ

鳥の形の洗濯バサミ。開閉に力が要る
強力タイプ。

指先に、しっかり力を入れて開かないと
はさむことが出来ません。
意識したこと:指先の力をつける。
手先の操作、目と手の協応。


洗濯ものとりこみのお手伝い
洗濯バサミを使った遊びの進化版。
最初はまだ自分の手もとしか見えていないのと、誤って落とすなど、本人がなるべく失敗しないようにするため、取り込んだ洗濯物を落として入れられるよう、洗濯カゴを真下に置いてはじめました。

二つの工程が出来るようになってからは、洗濯カゴを少し離れたところに置き、取り込んだものを入れに行くように配置しました。



少し力を入れて広げることが出来る
ゴム製のC型パーツ。

隙間がほとんどないので、最後の輪が
難しいようです。

ハンマート−イ

意識したこと:視覚・触覚・聴覚過敏。目と手の協調運動。目的を持った作業(組み立て)をする。

カラフルな木製の円柱をハンマーでトントン叩くおもちゃ。
ハンマーを正しい向きに持つこと、円柱を穴に入れること、叩く位置、どれも最初は難しかったです。一番始めの頃は、まず、ハンマーが持てませんでした…。重いのか、感触が嫌なのか…。やっとハンマーを握れるようになって、叩く動作を教えたのですが、今度は叩いた時に、ハンマーを通じて手に帰ってくる衝撃と、叩く音が嫌だったらしく…。しばらくは使わずに見えるところに飾っておきました。

たまに触ってるうちに、ようやく少し叩いたり出来るようになってきました。下にマットを敷いてから叩くと、衝撃や音が少し和らぐので、マットの上で遊ぶようにしました。円柱を出し入れする動作も、ものをしっかりつかまえたり、握ったりといった練習に役立ちました。

今は、遊びながら「緑」「赤」「黄色、取って」など、言葉のお勉強用にも使っています。


フタの開閉


調味料(コンソメ)の空容器が、大きさもちょうど
良く、開閉も軽くて比較的カンタンでした。
手首の動きが硬く、ひねって回す動作が
出来ない頃から始めました。
気をひくようなミニカーやブロック等を中に
入れて軽くフタを閉めて渡し、開けて見つ
けさせる遊びです。

フタを開けることと同時に、容器を逆さにし
て中のものを下に落とすという方法で、中の
物を取り出す動きも練習しました。

半透明の容器であることもポイントで、
(見えないようで、うっすら見えてる)
これで遊び始めてから「物を容器に入れる
こと」を意識し始めました。

初めてブロック
はじめてのブロック遊びに最適。
レゴよりも簡単に組立てられます。

最初は凸凹の関係もわからないし、
うまく合わせることも出来ないので、
少し手伝ってあげました。

「出来た!」という気持ちが芽生え始
めるきっかけになったおもちゃです。

レゴブロック
手首の動きが硬い間はうまく組み立てることが出来ませんでした。

4歳頃から、左図のようなものを作り、電車などに見立てて遊んだりしています。

ビーズコースター

意識したこと:手の操作性を高める

一番簡単そうなものを探しましたが、最初は一番下にある直線のビーズしか動かせませんでした。
これは底面に吸盤がついていて、机に固定出来る仕様になってますが、固定せずに使用していました。
購入時はちょっとまだ難しかったかな。。

ヒモ通し

穴の開いたパーツにヒモを通していく遊び。ヒモの先をつまんで持つ→パーツをもう片方の手でしっかり持つ→穴にヒモを通す→通したヒモとパーツを持つ手を入れ替える(ここが一番難しい)→ヒモをつまんで引っ張る。といった流れです。

ヒモを通す時には、穴にヒモを「入れる」動きだけど、ヒモを通したら、今度は穴からヒモを「出す」動きに変わる、ということも、なかなか難しいらしく、せっかくヒモを通せたのに、反対の手でヒモを押し戻したりしていました。^_^;

ヒモに通したパーツを、前に両手を広げて持った状態で、シーソーみたいに左右に動かし、それを目で追う、なども。(眼球運動)

準備したものは、しっかりしたヒモ、パーツを入れておくカゴ(空き箱やプラスチックトレイでも。)、穴の開いた木のおもちゃ。すべて100円ショップで揃います。
ヒモの先は、穴に通しやすいように幅広の透明テープで巻いて補強してあります。

かなり集中力がいる作業のようなので、あまり長時間やらせないようにしています。

ラクに出来るようになったら、次はもっと穴の小さなもの、持ちづらい形の複雑なもの(ボタンやビーズなど)に変えていきます。




  


発達障害TOPページに戻る