2006-05-29(Mon)
◆ヒムロ
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深夜といっていい時間帯に、徹夜覚悟で文を書くのです。書きたいから仕方ない。 では後ほど。
エロですがすみません。 さ、あと3時間だけど寝よ。 ____________________________________
日付が変わってから、携帯が鳴ることがある。音に敏感な戸叶は体を起こしてランプを確かめた。案の定の相手。 「ああ、いいけど」 けど、で繋がれる逆説の部分はない。なくてもけど、と言ってしまうのだ。言わなくてはならない。
昔の歌で25時の電話のベルが土曜日の仕事でどうのこうのというのがあったらしいが、そいつはもしかしてこんな気分なんだろうか。控えめにドアが叩かれる。戸叶は確かめる事も無く鍵を開けた。 「ごめ、ん」 制服をおざなりに着て、中身のはみ出したバッグを抱えて十文字が体を滑り込ませる。目元の端は赤く、戸叶は黙ってそれを指の背を擦った。十文字がひゅ、と空気の摩擦音を発し、戸叶の肩口に顔を埋める。 「とがの、とがのう」 戸叶はそれを剥がしてバッグを下ろさせると、風呂場を指した。 「脱げば」 十文字は唇を噛んでこくり、と頷くとジャケットだけ椅子の背にかけて薄いドアを開けた。ジャケットにはいつもの匂いがついている。戸叶は顔をしかめてそれを見遣った。 すぐに水音が聞こえ始める。もう給湯は切ってあるから冷えるはずだ。 「とがのう」 少しだけ開いた隙間から、震える声で十文字が呼んだ。 「ああ、今行く」 めんどくせえな。
物が見えないと困るから、明かりは点けた。 数箇所痣をつけた十文字の体は、そこ以外は痛々しいほど白い。寒さでか震えている十文字を横目に服を脱ぐ。 「とがのう、早く」 浴槽の縁を跨ぐ。湯を張っていないそこはひどく冷たく、足の裏を刺した。 「ちゃんと洗ったのかよ」 「洗った、から」 「見せてみろ」 十文字は浴室の壁に額をこすりつけるようにして尻を突き出した。両手で肉を広げその奥を戸叶の眼前に露わにする。 戸叶は覗き込む事はせずに、溜息混じりに言った。 「洗えてねえ。ちゃんとやれよ」 「……っ、ご、め……」 十文字の手がそろそろと尻を這い、襞を押し広げて指を一本差し入れた。続けてもう一本。二本の指でクチャクチャと掻き回して、中で開くとその間からとろりと溢れて来るものがあった。戸叶は顔をしかめてそれを冷水で押し流す。ついでに開いた穴にも少し水を入れてやった。 「……は、っ」 十文字の背中がひくりと波打ち、次には抑えるように丸くなった。がまん、がまん。 「お前さ」 こんなときには止めたはずの煙草が恋しくなる。 「こんなケツの穴で恥ずかしくねえの」 その下で血色のペニスが小さく震えている。 「二本ズボズボじゃねえか、こんなとこに突っ込むほうの気も考えろよ」 「ごめん……」 「それで自分でケツ弄ってチンポ立たせてさ、最悪じゃねえのお前」 片尻を掌で持ち上げてやると、十文字がびくりと、その穴もひくりと蠢いた。タイルに額を擦り付けて、短い息を繰り返す中に微かに喘ぎが混じっている。 「……いいぜ、出せよ」 十文字が嘆息したのが聞こえた。引き抜いた指の後から、粘り気の少なくなった、それでも多少濁った水が流れ出した。 「とがのう、……きれいに、なったから、な、お願い」 「お願いっつったってな、突っ込めるような状態じゃねえな」 興奮してんのなんかお前だけなんだから、そういうと十文字は顔を真っ赤にして戸叶の足元に膝をついた。 「な、めていい?」 「してえんだったらどうぞ」 十文字はおずおずと手を伸ばしてまだ柔らかい戸叶のペニスを少し持ち上げると、陰毛に埋もれた根元から舌を這わせ始めた。手はくにくにと玉を揉む。よくも自分と同い年の同性の奴がここまで出来るもんだと思う。十文字は芯を持ったそれを口内に咥え込んで、吸い上げながら顔を動かした。ばかばかしいが巧い。戸叶のそれはあっという間に太く育って、十文字の眉間に皺を寄らせた。その頭を掴んで、喉に当たるほど奥に咥えさせる。くぐもった悲鳴は上がるがそれ以上はない。 「ん、ン……」 それにすら慣れている十文字は、器用に喉を絞めて戸叶のそれを丁寧に愛撫した。戸叶は舌打ちするとそれを引き抜いた。十文字は少し咳き込んでから、また戸叶に尻を向けた。 「お願い、します」 先端を押し付けると、痙攣していた肉襞は簡単にカリ首まで受け入れた。そこはどうしても引っかかる。それは仕方ない。少しだけ腰を突き入れると巧い具合にカリだけが入った。入りすぎたところで抜けばいいだけの話だが。そのままカリを引っ掛けては抜いて、焦らしてやれば十文字は簡単に音を上げる。 「と、がのぉっ……そうじゃなくって……!」 奥までみっしりと詰めてもらいたがっているのは知っている。ぶるぶると震える背中はひどく惨めに見えた。 「やられたいだけの奴が注文つけんなよ」 パン、と乾いた音が響いた。尻たぶを平手で叩かれた十文字はう、だかあ、だか分からない悲鳴をやはり小さく上げた。 壁に縋るようについた手を後ろに引っ張る。もう片方。両手をそうやって不自然な形で引いたまま、戸叶は思い切り腰を打ちつけた。ぬめったそこは難なく根本まで飲み込んだ。 「はぁ、あぁぁ……」 愉悦の振動が方から腕へと伝わった。指先が空を掻くようにヒクヒクと痙攣している。十文字の呼吸が苦しいだろう事は分かっていたが、戸叶はそのまま乱暴にピストン運動を繰り返した。十文字の股関節に当たって戸叶の骨と皮膚も痛んだが、敢えて無視した。 ぐちょぐちょといやらしい音が響く。 「あ、あっ、と、とがの、」 抜き差しに合わせて穴が絞ったり緩めたりしてくる。 「こえっ、とまんね、からっ、手……はな、しっ、ひぃぃっ!」 ただの抜き差しに少しグラインドを加えると、面白いように声が揺れた。 「あ、っは、とが、のっ、とが……あっ」 中はひどく熱い。体全体が火照ってこんな温度になっているのだろうか。それとも摩擦で熱くなってる?射精感がこみ上げてくるにつれてそんなことはどうでもよくなる。 掴んでいた十文字の腕を放して、その手で今度は十文字のペニスを乱暴に扱いた。自由になった腕は声を抑えるべく口に向かう事はなくただ壁に縋りついた。 「あ、あー、とがの、とがのうっ」 自分の息が弾んでいるのを自覚しながら問う。 「気持ち、いいか?」 「ぃいっ、きもち、い、いいよぉっ」 ペニスからも口からもぽたぽた涎を垂らして十文字は気持ちいい、気持ちいいと繰り返した。 「い、いっ……お、と、さ……ッ」 かっと頭に血が上ったのが分かった。白い肌に指の跡が残るほど強く十文字の腰を掴むと、赤い肉が捲れるほど激しく出し入れした。刺激の強さに溢すように十文字が射精し、その食い締めで戸叶も中に放った。
関係がばれたのはずっと昔だ。元々そういうことには戸叶は敏かった。色っぽい顔をしてフラフラしてるのに、どうして黒木は気付かないんだろうとも思う。とにかく、一度押すだけで十文字は簡単に崩れた。 お前、男の体してねえな、と言った。 それだけで充分だった。 十文字はかわいそうなくらい目を見開いて、心臓の上で服を握った。 誰にも言いやしねえよ、そんな面白くもねえこと。誰と寝てんの。 ……お父さん。 そんな気はしていた。十文字は元々あまり人と交流などしなかったし、それなら一番側にいるのは父親だ。 あっそ。 それ以上の興味はなかったからそれだけ言って、数年はそのまま来た。 ある時十文字はとても苦しそうに戸叶に打ち明けた。 満足できない。 父親が満足して十文字を放しても、十文字にとっては中途半端なだけで、続きが欲しくて仕方ないのだと。 確かに、戸叶にしか話せないし、頼めない事だった。 それ以来、十文字は父親との情事が済んでから真夜中にやってくる。半端に火照らされた体を引きずって。十文字が満足するまでイクか、あるいは気絶するまで戸叶は相手をしてやる。疲労感ばかりが残る仕事だ。 今夜も十文字は風呂場でのびてしまった。その体をきれいに洗い流してやって、一通り拭いてやり、自分が寝るはずの布団に寝かせる。どちらかと言えば青ざめてしまった頬を撫で、手を取って指にキスをする。眠っている唇にも、行為の最中にもしないのは意地だ。 だるいんだ、本当はやりたくなんかないんだ。……なんていう天邪鬼。 本当は、残り物でもいいから結構楽しみにしてる、楽しんでるなんて、絶対に悟らせてなんかやらない。 あとは、あの親父が完全に十文字を手放してくれればいいのだが。今は無理だ。でもいつかはそうなるだろう。時間がそれを解決してくれる。 戸叶は毛布だけ被って、硬い畳の感触に骨が軋むのを感じながら目を閉じた。明日はどっかおかしくなってるな。まあ、仕方ないさ。役得の代償だ。 | | |