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2006-01-30(Mon)
◆ヒムロ
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２週間ぶりにゲームパラレルの続きを。ジャンプ感想は明日で…（何故逆にしないのかとかツッコミ不可）
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魔具でいい物というと、火の石ルビー、氷の石サファイア、風の石エメラルド、雷の石トパーズ、聖なる石といえばクリスタル、闇の力の石はブラックオニキス。ちなみに今もっている龍爪の杖に嵌っているのは青石ことラピスラズリ。適当に何かあればいいやという感じでテルミナをさ迷っていた戸叶だったが、これといったものには出会わず、出会ったと思えば所持金が追いつかないほど高価だったりして、成果は上がっていなかった。
出る前に何か一つに決めておけば、もう少し要領よく行ったかもしれない。何か一つというのなら、……やはり暗黒魔法の強化だろうか。四精霊の魔法には強さの限度があるし、聖石を使うにはまだ力が及ばない、戸叶のクラスはまだ魔導師のままだ。さくさくと賢者になるつもりだったが、なかなかうまく行っていない。
とりあえず、オニキスを探すか。キャンプを発ってからだいぶ経ったところで戸叶は漸く軌道を確保して改めて町を歩いた。
港町テルミナ。船の入りが激しいだけあって人は多いし、物流もよい。郷士の家があれば銀行も騎士団の宿舎も怪しげな賭場もある。赤ら顔の鍛冶屋の親父も、貧乏な画家志望の少年も、自称霊能者もいる。仲間内で商人の才覚がありそうなのは黒木あたりか。ここいらに店を構えれば楽しいだろう。
気取った騎士がいてゴロツキがいて、―――戸叶は足を止めた。黒猫だ。目が異様にきらきらと輝いていて、戸叶が呆気に取られていると猫がにやりと笑った気がした。目に光が乱反射してぎらぎら光る、そこで戸叶は猫の目が目ではなく石が嵌っているのに気が付いた。
黒猫は戸叶を振り返り、にゃあと鳴いてすたすたと歩いていく。ついて来いとでも言うように……？
―――怪しくないか？
それは分かっている。戸叶が戸惑って足を止めたままいると、猫は待っている―――ように見える、冷たい石畳に座ってこちらを見ている。
猫の目に嵌っている石は万物の霊石ダイアモンド。宣伝にしろ何にしろ、猫にこんな事をやらかした奴を見てみたい、戸叶はぼんやりそんなことを考えながら猫の待つ路地に足を踏み入れた。
黒猫に導かれて入り込んだ魔法商店は、いかにもそれらしく薄暗く、戸叶にすら何だか分からない香の匂いと埃臭さに溢れていた。狭苦しい店内―――とも言えない、隙間に棚を並べただけのスペース―――に魔具が所狭しと置かれている。試しに指で表面をなぞると、うっすら埃が付いた。誰も来てない。戸叶は呼吸だけで笑った。
「いらっしゃい」
しわがれた声がして、戸叶が振り返ると、黒いローブを頭から被った何だか型通りの老人が棚の隙間に座っていた。皺くちゃで男なんだか女なんだか分かったものじゃない。どうでもいいことではあったが。その老人は頬を皺を更に深くして笑ったらしかった。
「何をお探しかね」
「石を」
気が付けば猫の姿はどこにもない。
「出来ればオニキスが良いんだが」
ほうほう、と老人は納得しているのだかただの呼吸音なのだか分からない音を発した。
「……あるにはあるが」
「見せてくれ」
「見ているよ、あんた」
「は？」
なんだか分からずに戸叶が片目を顰めると、老人は黒ずんだ皺だらけの指で自分の右目を指した。
「私のこれが唯一のオニキスだわね」
「……残念だ、そいつはごめんだな」
戸叶が言って溜息を吐く。踵を返すとどこにいたのか、猫が足に纏わり付いた。ケケケ、と老人は笑い、言った。
「それなら別のものはどうだい」
「他にないなら石は要らない」
「石じゃあないよ」
「ならもっといらねえな」
猫が足にじゃれ付いて歩けない。老人がもう一度ケケケと笑った。
「話だけでも聞いてお行き、悪い話ではないだろうよ」 | | |
