その他の断熱処理に必要なもの
1.サッシ
これが、一番問題である。とくに、日本では、終戦後飛行機等へのアルミ製品の使用が規制されていた。(戦後飛行機の国産化は駐留軍により禁止されていた)そのため、サッシ等への利用が考えられていった。これは国策であったのかもしれないが。
そのため、諸外国では、木製サッシ等に力が入っていたにもかかわらず、熱伝導率のよい鉄やアルミの製品が供給された。初期の公団住宅は、木製サッシであったが、コンクリートのとなじみがわるかったのか、鉄のサッシへと移行していった。そして、現在ではアルミ製品が主流となっている。
木製サッシというと、昔の建て付けの悪い、すきま風のだらけのものを思い浮かべる人が多いと思うが、外国製品を見てみると、まったく考え方が変わってくる。きちんと乾燥し、狂いのない、木製サッシに、ペアガラスや3重ガラスの窓をみると、何となくあこがれるのは、私だけではないだろう。価格をみるとまだ、ため息がでるが。
ただ、日本の気候では、欧米の先進国に比べ緯度が低いため、日差しが強いことと、湿度が高いため、木部の風化が早いと聞く。そのため、まめな維持管理、特に塗料の塗り込みが必要であろう。特に日本人は維持管理を好まない民族であるので。アルミメーカーでも、輸入品を供給しているようだが、あまりメーカーパンフレットのメインにはなっていないようだ。
ここで、サッシの断熱を考える。
まず、材料であるが、木製が圧倒的に有利である。その次が樹脂サッシそして、金属である。特にアルミニウムは最悪である。しかしながら、価格を考慮すると、金属が安く、つまり性能どうりに高くなる。木製は、圧倒的に外国製品が優秀である。特に北欧や北米はすばらしい。価格もいい値段であるが。
とくに、外国では、引き違い戸で、大きな開口を取ることが少ないので、もっと気密性の良い、片開きの窓が多い。大きなサッシで狂いの少ないものは、難しいのであろう。そのため、輸入住宅等での窓が有利な点である。そして、アルミサッシの中でまじめに断熱や気密性を考えている良心的なものは、アルミサッシの内外の接点にプラスチックをかまして、熱伝導を妨げたものをつかっているが、大部分はふつうのアルミサッシに見えた。
これを改良して、家の外はアルミ、内側にはプラスチック樹脂のサッシを使用している製品もある。さらに、樹脂のサッシの製品も多くなっている。
とくに、欧米人は日本人ほど南面の日差しを求めないので、ましてや、大きな開口をとらないのは、日差しによるカーペット等の日焼けをさせたくないということなのかもしれない。さらに洗濯物や布団を外に干すような習慣もないのであるから。
予算が許せば、木製サッシを、そしてせめて樹脂サッシ位使いたいものだと感じた。
サッシを考えるときに一番腹にたつことに、定価の問題がある。
我々一般消費者を小馬鹿にしている。メーカー販売実勢価格が想像で、定価の半値以下と聞いている。建設物価等の刊行物を見ると、ある一定の掛け値があり、それを考慮した物が、設計時の単価で、実際の工務店が購入するときにはさらにわからない。
家電製品が実体としてこういう問題を含んでいるが、これは、型落ちした旧製品と新発売製品との関係で値段が落ちていくのであるが、サッシの場合はどうなのだろう。
自分で希望したサッシと予算を組んでいく場合、サッシの仕様と価格のところで、行き詰まってしまう。ハウスメーカー等は通常取引のメーカーの特別の製品が通常の販売価格であり、それ以外はマージンが少ないのか、割高になるのか敬遠される。
展示場でのサッシに不満を感じてサッシメーカーやサッシの製品名を指定して質問すると、「取引がないので高くなりますよ」「価格ほどのことはありませんよ」「前に使ったけれども不具合が生じて困ったことがあったので、やめた方がいいですよ」といったことで、避けて通りたがっている営業の人が多い。
一番利幅が大きく、大量に生産している物を押しつけているとしか思えないのであるが。工務店に注文するときはそれほどでもないが、大手のハウスメーカーと契約すると、サッシメーカーについては、消費者に選択の余地はないと聞いている。私が全て確認したわけではないので、断定はできませんが。
サッシメーカーもおかしい。定価あるいは標準価格と実勢価格とがあまりにもかけ離れているのは、不当な表示ではないか。我々には高価な買い物であり、かつ家を造るときの最大の関心事である出入りや採光の一番関心物であり、かつ、今断熱、省エネの最大の問題箇所で、コストと性能の検討ができないのは、おかしい。しかるべき監督官庁は、実体を公表すべきであると思う。
2.ガラス
寒い国のガラスは、結露防止にほとんどが6_厚のガラスのペア以上である。しかも、ガラスの間隔が12ミリくらいとっている。多分これ以上間隔をあけると、対流が起こり、熱伝導による悪影響が出る経済的な間隔なのであろう。
住宅メーカーのモデルハウスを見学させてもらったが、ほとんどが6ミリ程度の間隔のペアガラスであったことを考えると、水準が少し低いのかもしれない。さらに、ガラスの厚さも違っているのだろう。これは、目視では、よくわからなかったが。
ガラスにはいろいろな加工されたものがある。色つき、熱戦吸収、反射、等の省エネのものがあるが、使い方は気を付けた方がよい。高価なものだけに、目的をはっきりして使いたい。
特に今問題になっているLOW−Eのガラスであろう。私は、日本の緯度を考えると太陽の日差しは欧米の国々に比べると(英、仏、独等の)かなり強い。夏のことだけを考えると、このガラスは有効である。しかし、冬にはその逆に日差しを取り入れた方が省エネであるので、不利となる。ガラスだけに頼らず、夏の日差しをカットする方策で乗り切り、冬に暖かく暮らす方がベターでないかと思うのである。しかし、それでも夏の日差しで、絨毯、床、家具が変色するのを嫌う人も多いので、一概には断定できないが。ただ、南面以外の窓や、トップライトには有効と思う。私も、今度はトップライトの窓を作り、このLOWーEのガラスは入れたいと思っているから。
防火地域には、線入りガラスがある。防犯上も利用できるし、震災等には、割れた物がそのまま残っていれば安全ではあるが。平成11年の省エネ指針や住宅金融公庫の融資の対象には、ペアガラス以上が推奨されており、今後は標準装備されていくものと思われる。住宅の仕様として定着すれば、何ら特別なことではないのである。
ペアガラスで有利のことは、結露の問題がある。開放型のストーブを使用していることはもってのほかであるが、気密性がよくなっているので、室内で発生する水蒸気を適正な換気で排出しないと必ず外気温に近いところで結露する。ペアガラスは温度差が解消されるので、ほとんど結露しない。ただ、飽和水蒸気はどこかで、結露するので、注意したい。特に目に付かないところはかえって深刻である。
私は、極論かもしれないが、十分な換気や断熱処理がされていない住宅では、積極的に外気に面した窓ガラス等で結露させ、適宜排水することで、目に見えない壁や天井裏で断熱材等にダメージを起こさせず、カビ等の発生をさせないことも、一つの解決であるとも思っているのである。
勿論室内の湿気を積極的に増やすことは、避けるべきであり、換気も不可欠であるが、あくまでも家の断熱や気密を改善しきれない時でのことであるが。