2001/11/11

 前夜遅くにお母さんとゆき姉ちゃんが家捜しを始めて、ぼくは寝不足だった。もちろん夜中に不動産屋が営業しているわけはなく、家捜しとは家中のごみを引っ掻き回すことだ。一声掛けてくれれば手伝ってやったのに。どうも人間も引っ掻き回すのが好きらしい。翌早朝もお母さんはぶつぶつ独り言を言いながらごみと格闘していた。それはいいが、おかげで朝の散歩を省略され、車に乗る前の5、6分の近所回りだけでごまかされた。
 車の中は今まで見たこともないほどごみがつまっていて、ぼくはお父さんと一緒に助手席に座るのが精一杯だった。まさか不法投棄に行くんじゃないだろうな。少し心配になった。行き先は神宮外苑のフリマだ。だが、フリマってなんだ?プリマならハム屋だが。
 9時に間に合わないと\3,000の参加費が無駄になってしまうとか、あっちの道の方が早いよ、いやこっちの方がとか、大騒ぎの末どうにか10分前に着いた。
 あっちこっちで青いシートの上に生活用品が並べられている。6年前の震災時の避難所を髣髴とさせる。違うのは、みんなうきうき嬉しそうな点だろう。
 ごみに値札が付いている。ええ?!ごみを売る気かい?ははーん、フリマってえのはフリーマーケットのことだったか。それなら合点がいく。ごみには蚤も付いているだろうしな。ふとずっと前に一度お姉ちゃんの応援に行ったことがあるのを思い出した。
「くろの首にこれを下げてと」
 はあ?ぼくを5億円で売る気かよ!家のローンでこれから大変だとは知っていたがそれほどとは。ぼくより前に娘を売ったらどうなんだ。ずっと前から売り出し中だが買い手が付かない?そうか、無理もない。ぼくが家族の犠牲にならるしかないか。
「5億じゃ危ないか。万一ってこともあるから、もうひとつ5を付けておこう」


風もなく、日向は暑いぐらいのいい天気だった。

ねえ、これって動物虐待では?

安過ぎじゃないかなあ。

「かわいー! ちょっとまけてくれない?」
やだ。

 55億円なら不景気でもあるし、多分キャッシュで買う奴はいまいと、ちょっと安心したら、値切りにきたお姉ちゃんがいて驚いた。ゆき姉ちゃんより可愛いから心が揺れたが、値切られるのはプライドが許さないので断った。