シナ


その風土

モンスーン地域を広義に解すればシナの大陸をも含める事ができる。そのシナの風土を代表的に示していものは黄河と揚子江とであろうが、すくなくとも揚子江はモンスーンの大陸的具象化だといってよいであろう。揚子江とその平野との姿がわれわれに与える直接の印象は、実は大陸の名にふさわしい偉大さではなくして、ただ単調と空漠とである。

揚子江と黄河

その揚子江地方は水郷であり、黄河地方は乾燥地である。また揚子江の平野は米作地であるが、黄河の平野は麦作地である。これらの特徴は、黄河が砂漠から出てくる川であるという一語によって言い尽くせるであろう。すなわち黄河とは砂漠とモンスーンとを媒介する川なのである。こう考えるとシナの人間は砂漠的なるものと無縁ではない。彼らに著しく意志の緊張があり、したがってその忍従性の奥に戦闘的なるものを潜めている事は、モンスーン的性格と砂漠的性格との結合を語るものであろう。しかし砂漠的人間におけるごとき絶対服従の態度はシナの人間には存在しないのである。シナ人の「非服従的性格」と呼ばれるものがここに関連する。シナ人は血縁的もしくは地縁的団体の拘束以外にはいかなる拘束をも許さない人間である。

非服従的な忍従

この非服従的な忍従は彼らの無感動性と密接に連絡する。しかしこのようなシナじんが無感動的であるという事は、シナ人が感情生活を持たないという事ではない。シナ人の感情生活の様態が無感動的であるというのである。空漠たる単調さにおいて己を見出している人間は、変化を求めて感じ動く事を必要としない。この点に於いては、きわめて変化に富む質的多様性に於いておのれを見出している日本人は、シナ人の相反の極にあると言ってもよい。


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