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続折々の記 2019④
【心に浮かぶよしなしごと】

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 05 16 (木) 米中貿易摩擦     トランプ対習近平

2019年5月15日
追加関税、米中切り札
 米第4弾、ほぼ全品に最大25%案 G20での首脳会談、焦点
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14014391.html?ref=pcviewer

 米中両政府は13日、相手国からの輸入品にかける追加関税を相次いで発表し、予告された双方の制裁の内容が出そろった。米国が発動すれば、中国からの輸入品のほぼ全てに追加関税がかかることになる。6月末に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)サミットで、トランプ米大統領が意欲を示す習近平(シーチンピン)国家主席との会談が実現するのか、そこで事態収束の道筋をつけられるかが焦点になる。▼3面=強気と不安

 米政府が発表したのは、中国への追加関税をほぼ全輸入品に拡大する「第4弾」の検討案。計3805品目の計3千億ドル(約33兆円)分に対し、最大25%を上乗せする内容だ。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などの携帯電話やテレビなどの耐久消費財、衣類などの生活必需品が広く含まれている。ハイテク製品などに使われるレアアースや重要な鉱物資源、医薬品や特定の医薬品原料、一部の医療用品は対象外とした。最速で6月下旬にも発動準備が整うことになるが、税率や対象品目を見直す可能性がある。

 トランプ氏は13日、ホワイトハウスで記者団に、大阪のG20サミットで「習氏と会う。実り多い会談になるだろう」と述べた。

 中国政府も今月13日、米国からの輸入品600億ドル分にかけた最大10%の追加関税を、6月1日から最大25%に引き上げると発表していた。米中ともに関税率を一律に25%にするのではなく、品目によって関税率を変えたり、例外扱いしたりする仕組みを入れ、自国経済への影響に配慮した。

 米中貿易摩擦の激化を受けて、日米の株価は下落傾向が続いている。

 トランプ氏が対中関税引き上げを予告した5日以降、史上最高値圏にあった米株式相場は下落に転じ、13日までのダウ工業株平均の下げ幅は計約1180ドルに達した。14日の東京株式市場でも、日経平均株価が約3年1カ月ぶりに7営業日連続で下落。下げ幅は合計で1240円に達した。(ワシントン=青山直篤、北京=福田直之)

 ■米中通商紛争の経緯

<2018年7月> 米国が中国を対象に340億ドル分の追加関税措置を発動。中国も340億ドル分の米国産品に報復関税措置

<8月> 米国が「第2弾」の160億ドル分の追加関税措置を発動。中国も同規模の報復関税措置を発動

<9月> 米国が「第3弾」の2千億ドル分の追加関税措置を発動。税率は10%にとどめ、19年から25%に引き上げ方針。中国も600億ドル分の報復関税措置を発動。税率は最高10%

<12月> 首脳会談。協議継続で合意し、米国が「第3弾」の税率引き上げ一時見送り

<2019年3月> 米国が「第3弾」の税率引き上げを延期

<5月5日> トランプ氏が「第3弾」の税率引き上げ方針をツイート

<10日> 米国が「第3弾」の税率引き上げ発動

<13日> 中国が「第3弾」の税率引き上げ発表/米国が「第4弾」の追加関税内容発表

▼3面=強気と不安
関税応酬、強気と不安
 米中とも「最大25%」、上げ率には幅 品目配慮、双方に事情
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14014270.html?ref=pcviewer

写真・図版 【写真・図版】対中追加関税「第4弾」の主な品目

 米中両国が互いに新たな高関税措置を打ち出し、通商紛争は新たなステージに入った。激しさを増す「打ち合い」は、国民の暮らしなど自国にもダメージをもたらしかねない。両国政府とも表向きの強気とは裏腹に、今後のかじ取りには不安を抱えている。▼1面参照

 「まだ(第4弾を)やると決めたわけではない」

 中国が第3弾の報復措置を打ち出した直後、ホワイトハウスでトランプ大統領は冗舌だった。「米側の立場は強い」と強気な言葉を連発。その数時間後、米通商代表部(USTR)は予告通り、中国からの輸入額すべてに制裁を広げる最大の切り札となる第4弾の追加関税の詳細を発表した。

 米アップルの「iPhone(アイフォーン)」から楽器、おむつまで――。生活に直結する3805品目もの幅広い商品が並ぶ総額3千億ドル(約33兆円)は、第1~3弾の合計を大きく上回る過去最大規模だ。米国が発動して中国も報復すれば、20年までに米国の国内総生産(GDP)が0・5%減り、30万人の雇用減につながるとの試算もあるなど、米国経済も無傷ではいられない内容だ。

 だが、肝心の関税引き上げ率は「最大25%」とのあいまいな表現にとどめた。大きな関税率を見せつけつつも、米業界や消費者の反発が強い品目は上げ幅を低くとどめるなど、米経済への影響をにらんでさじ加減する余地を残している。

 攻勢を続けてきた米国の「弱み」も見え隠れする。

 電気自動車など先端製品の生産に欠かせず、中国が世界の産出量の8割を握るレアアースを、制裁対象から外したのだ。トランプ氏が薬価切り下げを公約してきた医薬品やその原料も、例外にした。対中貿易の「アキレス腱(けん)」であることを事実上、認めた形だ。

 一方、中国の第3弾にも、同様の苦心がにじむ。米国からの輸入品600億ドル分の追加関税を「最大25%」にすると打ち出したものの、実際に25%になるのは半数に満たない2493品目。残りは20%、10%、5%の上乗せにとどめる。しかも、事業者が代替品を見つけるのが難しかったり、大きな損をしたりした場合には、申請に応じて課税対象から1年間外す「特例措置」も新設した。

 米中双方とも拳で威嚇しながら、防御にも配慮せざるを得ない構図が浮かぶ。

 これまで守勢に立たされてきた中国だが、第3弾には「攻めの一手」も盛り込んだ。米国が輸出したい液化天然ガス(LNG)の税率を10%から25%に引き上げた。大型航空機という「奥の手」も残る。追加関税をかけたり、購入量を減らしたりすれば、相次ぐ墜落事故で揺らぐ米ボーイング社の経営に打撃となる可能性がある。

 ■米、農家への打撃気がかり/中、権威守る「戦うなら徹底」

 エスカレートする紛争は米中双方の政権運営にも重くのしかかりつつある。

 「米中はとても良い関係だ。日本でのG20で習近平(シーチンピン)国家主席と会う。実りの多い会談になる」

 中国が報復案を示した直後の13日午後、トランプ氏は記者団にこう語った。

 6月28、29日に大阪で開かれる主要20カ国・地域サミットで習氏と直談判し、合意に持ち込みたいとの考えを示したものだ。トランプ氏は表向き、強気の発言を続けているが、その端々に「どこかで歩み寄りのタイミングを見いだしたい」との本音ものぞく。

 トランプ氏にとっての気がかりは、自らの支持層でありながら打撃を受け続けている米農業界だ。12日は「偉大な愛国的農家から関税収入の一部で買い上げた食料を世界の飢えた人々に配ればいい」とツイート。13日には150億ドルの農家支援の検討も明らかにするなど、「傷口」の手当てにも乗り出そうとしている。

 中国は、米国との対決姿勢を強めた。

 「戦うなら徹底的に戦う。中国は全面的に対応する準備ができている」

 13日夜、国営中央テレビのニュースで男性アナウンサーは語気を強め、「5千年余の歴史がある中華民族が、経験していないような試練などない」と訴えた。

 中央テレビのニュースは党指導部の意向を映し出すだけに、米国の圧力に対し団結を呼びかけるキャンペーンの号砲ととらえられている。中国版ツイッター「微博」に掲載された映像には「頭を下げてはならない!」などと愛国的な書き込みが続き、14日昼までに200万近い「いいね」が付いた。

 米国との対立が深刻の度合いを増し続けていることは、習指導部の権威を揺さぶり始めている。党長老から批判が噴出したとの情報もあり、習氏としては国内向けにより強い姿勢を示す必要が高まっている。

 だが、世論の動きは政権にとって両刃の剣だ。「反米圧力」が高まれば、対米交渉で習氏の選択肢は狭まる恐れがある。

 そのため中国側は、6月の大阪での首脳会談にも慎重だ。習氏が会う以上、必ず成果が求められるが、2月の米朝首脳会談が物別れに終わった記憶は新しい。

 中国外交筋は「我々が最も気をつけなければならないのは『トランプのわな』だ」と警戒する。

 (ワシントン=青山直篤、土佐茂生、北京=福田直之、冨名腰隆)