童話集1

 

 

 

 

 

 

 

 

かわむらあきら創作童話集

(第1集)

 

第1回  それからさん

 

むこうまちと こちらむらの さかいには うねうねやまが よこたわっていて、 こちらむらから むこうまちへは やまの なかの くやしんぼとうげを こえるのです。

むかし、 まだ くやしんぼとうげが ななしとうげだった ころの おはなしです。

いちめんに レンゲの はなが さいている むらの はずれに、 うさぎの おやこが すんでいました。 おかあさんウサギと、 ピョンタと、 いもうとの ミミです。 

あるひ、 おかあさんに いいつかって、 むこうまちへ かいものに でかけることになりました。 とぐちで おかあさんが、

「 やまには ソレカラさんが いますから ようじんして、 もしもの ときの よういに、 これをもっておいき。 」

と、 ふくれぐさの フクラシコを、 ピョンタに もたせました。

「 いってきまあす! 」

うねうねやまを どんどん のぼっていくと、  やがて きのえだで つくった こやが、 みちの はたに たっていました。 ビョンタと ミミが とおりすぎようとすると、 こやの なかから、 やせこけた オオカミが でてきて、

「 まあ ちょっと やすんでおいで。 もう なんにちも だれにも あわずにいたので、 いろいろ はなしが したいんだよ。 」

と さそいます。 しかたなく ピョンタと ミミが  うちにはいると、

「 ねえ、 むらの はなしを しておくれよ。 」

と オオカミが たのみました。 ミミは まだ ちいさくて、 こわいものしらずで、 すぐに おしゃべりを はじめました。

「いいわ。 おはなしを してあげる。 ミミの おかあさんはね けなみが だれよりも しろくて、きれいで、 そのうえ やさしいのよ! だから わたしは だいだいすき。 」

「 それから? 」

と オオカミが めを ほそめて いいました。

「 おとなりは ひつじの メイメイさんの おうちなの。 とっても しんせつな おじいさん。 」

「 それから? 」

「 そのおとなりは、 にわとりの コッコの おうち。 わたしの おともだちよ。 なかよしなの! 」

「 それから? 」

オオカミが したなめずりを しました。 それを みて ミミが ききました。

「 あんた ひょっとして ソレカラさんなの? 」

「 そうだよ。 おれは ソレカラさんと よばれる オオカミだ。 」

おおきな こえで いったかと おもうと、 みぎてで ミミを つかまえて、 いきなり くちの なかに まるのみしてしまいました。 ピョンタは びっくりして こえだの いえから いそいで ぴょんと ハネだしました。 すると、 うしろから オオカミが、

「 ねえねえ、 まちの はなしを しておくれ。 おれは ともだちが なくて、 さびしいんだ。 」

ピョンタは しかたなく ふりかえって、

「 まちには、 しばりくびの なわやさんが いるんだけど。 いってみる? 」

と さそいました。

「 それから? 」

「 ナイフを もった にくやさんも いるよ、 いっしょにどう? 」

「 それから? 」

「 とうげの ふもとには、 テッポウを もった カリュウドさんがいる・・ 」

そう いいながら、 ピョンタは フクラシコの フクロを、 オオカミに むかって なげました。 おなかを すかした オオカミは、 フクラシコを  フクロごと つかんで のみこんだのです。たちまち オオカミの おなかが ふくれだし、

「 いたい  いたい! 」

と クマザサの しげみに かけこみました。 おしりを まくりあげて、  おもいきり オナラを ブブッと ふいたので、 ミミが そとへ ポンと とびだしました。 ピョンタと ミミは いちもくさんに とうげを かけおりて、 まちへ かいものに いきました。

オオカミは くやしがったけど、それよりも、 おなかが とうとう ハレツして しんでしまったのです。

そこで、 ななしとうげに なまえが ついて、 くやしんぼとうげと なりました。

・・おしまい・・

 

第2回 かみどめ

 

カヨちゃんは ようちえんの ねんしょうさんです。 かみのけが ながくて ふさふさの おんなのこです。 かみのけには、 はなの もようの きれいな 「 かみどめ 」が いつも とまっていました。 カヨちゃんは かみどめが だいすきな おんなのこ なのです。

おかあさんと おかいものに いくと、 いつも けしょうひんやさんの まえで たちどまり、

「 トメが ほしいよう。 かって かって! 」

と、 おかあさんの てを ひっぱるのです。

「 このあいだ かってあげた ばかり じゃないの。」 

「 きょうも かってほしいのよ。 」

「 だめ! 」

「 かって かって! 」

「 かって かっていうと、 よけいに かってあげませんよ。 」

「 じや、 かって かって、 と いわないから、 かって? 」

「 いま いったじゃない。 」

カヨちゃんは、 どうしたら おかあさんが トメを かってくれるのか わからなくなって、 なみだが うんと でてきました。

「 わーん、わーん・・・ 」

おかあさんは、 カヨちゃんの てを ひっぱって いいました。

「 ないても、 だめなものは だめ。 さあ かえりましょ。 」

かえりみちの みちばたに、 おじぞうさまが まつってありました。 おかあさんは いつも、 ここを とおりかかると、 たちどまって おじぞうさまに おまいりを するのです。 カヨちゃんは そのあいだ だまって おじぞうさまを みあげておりました。 おじぞうさまは、 かわいい まっかな ヨダレカケをして、 まるで あかちゃんのようでした。 そこで、 カヨちゃんが ひとりごとを いいました。

「 おじぞうさまって かわいそう・・・ 」

てを あわせたまま、 ふしぎそうに おかあさんが カヨちゃんの かおを のぞきこみました。

「 どうして? 」

「 だって、 かみのけが ないんだもの。 カミドメが とめられない・・・ 」

おかあさんは わらってしまいました。

「 だって カヨちゃん。 おじぞうさまは おとこよ。 カミドメなんか いらないわ。 」

「 だったら、 どうして まっかな よだれかけを しているの? 」

「 これは むかしから そうなの。 さあ はやく かえりましょ。 」

おとなりの いえに、 ジェニーと いう なまえの いぬが いました。 おかあさんは この ジェニーが きにいっていて、 いつも あたまを なでてやるのです。 きょうも おかあさんを みつけると、 ジェニーが しっぽを ふって はしってきました。

「 ねえ。 ジェニーは おとこのこ? おんなのこ? 」

カヨちゃんが ききました。

「 もちろん おんなのこよ。 」

「 じぁ  おかあさん。 ジェニーに かみどめを かってやって。 」

「 バカね。 いぬが トメなんか しないわよ。  そんなこと いって、 じぶんが かってほしいもんだから。 トメが そんなに ほしいのなら、 カヨちゃん、 はやく オトナになって トメやさんに おなりなさい。 」

ジェニーの あたまを なでながら、 おかあさんが いいました。

「 さあ、 もうすぐ ゆうごはんよ。 おうちに はいりましょ。 ジェニーさよなら。 」

そのばん、 カヨちゃんは ごはんを おかわりして 二はいも たべました。

「 どうしたの? いつも いやいや たべる こが・・・ 」

「 わたし、 はやく オトナに なって、 トメやさんになることに きめたの! 」

カヨちゃんは、 おぜんの まえで ピョンと とんでみせました。

「 ごはんの あとで すぐに ハネては だめだぞ! 」

おとうさんが めがねの めで わらっていました。

・・おしまい・・

 

第3回 としをとった キツネ

 

むらの まんなかを ながれる くねくねがわを、 くねりながら さかのぼっていくと、 どんどん かわは ほそくなって、 やがて うらやまの しげみの なかに こそこそ かくれてしまいます。

さらに、 ニンゲンも とおらない けものみちを わけていくうちに、 ぞうきばやしの そばを、 ちいさな たにがわが ちょろちょろ ながれる ところに いきつくのです。 その みずばの ちかくの 「 あな 」の なかに、キツネが 一ぴき すんでおりました。 あなの まわりは、 しげみで おおわれ、 かたわらには ヤブツバキが、 まるで たいぼくの ように そだっていたのです。

「 この ヤブツバキも、 前は おれが ぴょんと とびあがれば、 てっぺんの ツバキの はなにだって とどいたものだ。 」

ことしの はる、 たった ひとりの ともだちの やまの オオカミが やってきた とき、 キツネは しみじみとツバキの たいぼくを みあげたものです。

いちねんじゅうで いちばん くらしやすい なつが すぎて、 やがて あきが やってくると、 もう なんども くりかえして そうだったように、 ぞうきばやしの はっぱ という はっぱが、 まっかに いろづきます。 おくびょうで、 とおくに でかけるのが だいきらいな キツネは、 だから、 あきに なれば せかいじゅうが まっかに なると おもっていました。 ふゆになり、 ゆきが ふってきて、 あれっと おもうまに、 ずんずん つもり、 すぐ ちかくに はえている たけの ふしが みっつも かくれてしまって、 あなの まわりが まっしろに なると、 よのなかが すみずみまで まっしろなのだと おもいこみました。 ぞうきばやしの はっぱが いちまいのこらず おち、 まるはだかの きのえだの あいだを、 つめたい かぜが えんりょなく ふきぬけて、 ただでも さむいところへ、 こおった みずが じめじめと あなの なかへ はいってくるので、 ほねのふしぶしが いたくなり、 もう なきだしたくなるのです。 それでも キツネは じっとがまんして、

「 ふきっさらしの ガケの うえに すむ オオカミは もっと さむいにちがいない。 まだまだ ここは しあわせだ。 」

そう じぶんに いいきかせて、 ふゆが とおりこすのを まっておりました。

そして、 あるひ、 きのうまでの かぜの おとが、 ぱったりと やんだので、 おそるおそる あなから くびを だして そとを みまわしてみますと、 なつかしい ヤブツバキの たいぼくに あかい はなが ひとつ さきだしておりました。 いまが いままで、 まっしろだと おもっていた せかいが、 うすみどりいろを おびています。

きゅうに ともだちの オオカミの ことが おもいうかびました。

「 そろそろ やってくるに ちがいない。 」

しかし、 ツバキの はなが ふたつ さき、 みっつ さき、 えだじゅうが はなに なっても、 オオカミは やってきません。

「 おれは まだ こんなに げんきなのになあ。 やつは くるたびに としをとって、 からだの けも しろくなり、 おとろえてきている。 もう やまあるきも できなくなったのかもしれない。 」

それで キツネは、

「 しかたがない。 たまには げんきな じぶんの ほうから やつを たずねてやろう。 」

ちょっと みぶるいを すると、 せまい 「 あな 」の なかに、 ひょろひょろと たちあがりました。  ふしぶしが いたく、 ようやく あなから はいだしてきたのです。 みどりいろの わかめの においを かいで、 たにがわの おいしい みずを、 ひさしぶりに ひとくち のむと、 すこしは げんきを とりもどしました。 ヒヨドリの こえに はげまされながら、 やまに むかって のぼりだしました。 ところが、 まつことばかりで、 でかけることの きらいな キツネは、 ものの ひゃっぽも いかぬまに いきを きらして、 そのばに うずくまってしまったのです。 オオカミの すむ ガケは、 まだまだ はるか かなたに みえていました。

そのとき、 ガケの うえから だれかが よんでいます。

「 うおーん、うおーん・・・ 」

キツネは からだを たてなおして、 ガケに むかって さけびました。

「 こーん、こーん・・・ 」

すると また、 ガケの うえから オオカミの よわよわしい こえが きこえました。

「 うおーん、うおん・・・ 」

キツネは、 いきているかぎりの ちからを ふりしぼって、 ガケに むかって、 もういちど さけびました。

「 こーん、こん! 」

ガケからは、 こんどは こだまが 返ってきました。

「 ・・・こーん、こん・・・ 」

オオカミの へんじの ないのが きにかかりました。 キツネは ともだちの ことを おもって、 しにものぐるいで かけだしていました。 はるの おひさまが さんさんと あたりに ふりそそいで、 キツネの ぎんいろの しっぽを キラキラと かがやかせました。

ガケの うえで、 びょうきの オオカミが ベッドから おきあがって てを ふっているのが みえました。

「 おーい、 がんばるんだぞ! こーんこん・・ 」

「 ありがとーお・・おー・・ 」

オオカミが よわよわしく、 でも うれしそうに くびを ふっているのが みえました。

・・おしまい・・

 

 

第4回 ちょうちょうとり

 

ス―パーや ゆうびんポストや こうえんのある にぎやかな まちの かたすみに、 ヒロシと、 ヒロシの とうさんが すんでおりました。

ヒロシは いちねんせいで、 まいにち がっこうに かよっていて、 とうさんも かいしゃへ おつとめに でていました。 ヒロシの かあさんは にねんまえ、 ヒロシが ようちえんの はなぐみの ときに、 びょうきで しんだのです。 いつも がっこうから かえると、 ヒロシは じぶんで かぎを あけて うちに はいり、 れいぞうこの なかの、 とうさんが いれておいてくれた、 おやつを たべるのです。 それからミ ルクも のみました。

 

にちようび。 がっこうも かいしゃも おやすみです。

「 いい てんきだな。 ヒロシ、 ちょうちょうとりに いこうか。 」

とうさんが いいだしました。

「 サンセー! 」

ヒロシも さけびました。

とうさんが おべんとうを つくり、 すいとうに おちゃを いれました。 おやつも たっぷり ヒロシの リュックに いれてくれました。

ふたりは、 おべんとうと すいとうと おやつと むしとりの あみを もって、 こうえんまえから バスに のりこみました。 やがて、 みどりの はたけの なかを バスが はしっていきました。

おかの ふもとで おりると、 ヒロシと とうさんの ほかは だれも いない くさっぱらです。

どこまでも すんだ あおぞらが あたまの うえに ひろがっておりました。 くさっぱらには ヨメナや タンポポが さきみだれ、 しろい ちょうちょうや きいろい ちょうちょうが あっちにも こっちにも とんでいます。 ヒロシが、 かけだしていって、 むしとりあみで しろい ちょうちょうを すくいました。

すると! しろい ちょうちょうが あみの てまえで ぱっと きえたのです。 また とんできた きいろい ちょうちょうを あみで すくうと、 また きえました。 こんどは とうさんが やってみました。 でも やっぱり あみの なかに はいる てまえで きえてしまいます。 そのとき でした。 くさを わたりながら かぜが ふいてきて、 ヒロシの みみもとで ささやきました。

「 かあさんよ・・・ 」

かぜは とうさんの みみたぶも なでました。

「 かあさんよ・・・ 」

 

ちょうちょうを いくら つかまえようとしても きえるばかりなので、 ふたりは かえることにしました。 おひさまも だいぶ にしの そらに かたむきかけています。 やがて、 おかの ふもとに バスが やってきました。バスの まどから ヒロシが かおを だすと、 かぜが びゅーんと くびすじを すぎていきました。

「 さよなら! 」

それは かあさんの こえでした。

 

 

第5回 まいちゃんの ボウシ

  

おかさんと いっしょに、 まいちゃんが ちいさな おかの うえで あそんでいました。 ぽかぽか おひさまが おかの なだらかな ところを あたためています。

「 あつくなってきたわ。 」

まいちゃんは はおっていた カーデガンを ぬいで、 おかさんに わたしました。

「 おボウシは かぶってなきゃだめよ。 」

まいちゃんの ボウシは、 さくらと おなじ ピンクいろで、あかい バラの かざりと しろい リボンが ついています。 だから、 まいちゃんは このボウシが とっても きにいっていました。 それでも、 きょうは おかさんと かけっこを したので、 あつくて、 だいすきな ボウシも 、ぬいでしまいたかったのです。

その ときでした。 すずしい かぜが、 おかの むこうがわから てっぺんを こえて、 まいちゃんの ところまで かけてきました。 そして、 ピンクの ボウシを さっと ふきあげたのです。 まいちゃんが あたまを おさえる まえに、 ボウシは なだらかな おかを ころころと ころがりだしました。

「 まってよ。 どこへ いくの? そのへんで たちどまるのよ。 わたしの いうことを ききなさい! 」

まいちゃんは、 ボウシの あとを おっかけました。

ボウシは どんどん ころがって、 ふもとの みちに でても まだまだ ころがっていきます。 ちょうど、 むこうから おぼうさんが おきょうを となえながら やってまいりました。 そのとき、 かぜが ひとふきして、 まいちゃんの ボウシが ぼうさんの ツルツルあたまに ひょっかりと のったのです。・・・どうしたことでしょう!おぼうさんが みるみる ちいさく ちぢんでいきました。 そこには、 かわいい こぞうさんが ピンクの ボウシを かぶって たっています。

「 だめよ! それ わたしのだから。 かえして! 」

するとまた かぜが ひゅーんと ふいてきて、 こぞうさんの あたまの ボウシを ふきとばし、 また コロコロと ころがりだしました。 ふりかえってみると、 こぞうさんは こぞうさんの ままでしたが、 まいちゃんは それに かまってはいられません。

「 おまちなさい! そうでないと おかさんに いいつけるわよ。 かぜさんも ふくのをやめて。 」

むこうから まいちゃんよりも ずっと おおきな いぬが ひたひたと ちかづいてきます。 まいちゃんは そのばに たちすくんでしまいました。 そこへ、 またまた かぜが ふあーんと ふいてきて、 いぬの あたまに ボウシを のっけたのです。・・・すると! うしのように つよそうで、 キバを むいていた いぬが たちまち ちぢんでいき、 かわいい こいぬに かわりました。 ボウシが あたまに すっぽりはいって、 めがみえなくなった こいぬが あわてて あたまを ふると、 またまた ボウシは みちを ころころ ころげだしました。かわいくなった こいぬは、 なきながら じぶんの いえの ほうに はしっていってしまいました。

「 いぬさん、 ごめんね。 でも わたしの せいじゃないのよ。 」

そこは ちょうど まちの センプウキやさんの まえでした。 もう なつも おわりで、 おじさんが センプウキを かたづけかけておりました。

「 おじさん! 」 と、 まいちゃんが おおごえを だしました。 「 おねがいだから おおいそぎで センプウキを まわしてちょうだい、 はやく! 」

どうしたのだろうと おもいながら、 センプウキやの おじさんが、 うれのこりの センプウキを ぜんぶ まわしてくれました。 すると、 ピンクの かわいい ボウシが、 こちらむけに とんできて、 まいちゃんの あたまに すっぽり もどりました。 おかさんも いきをきらして あとから おつっかけてきて、 やっと おいつきました。

「 まいちやん、 ずいぶん はやいわねえ! 」

まいちゃんは、 おかあさんの こしの バンドと せいくらべを してみて、 いまいじょうに ちぢまないのを たしかめてから、 おかさんを あおいで うれしそうに こういいました。

「 わたしは もう これから ずっと おおきくならないわ。 おとなに ならなくていいのよ、お母さん! 」

 

 

第6回 フトンとセンプウキ

    

ニンゲンの いえに、 フトンと センプウキが すんでいました。 まいにち フトンは ねているばかり、 センプウキは たっているばかりでした。

あしもとを むずむず させながら、 センプウキが いいました。

「 いちどで いいから きみのように ぼくも ねてばかり してみたいものだ。 」

フトンも、 こしを さすりさすり、

「 わたしだって、 いちど たってみたいんだよ。 ねていることが どんなに つらいか、 だれにも わかりはしない。 」

と、 ぐちりました。

その ばんの こと、 ドロボウが やってきて、 フトンと センプウキを ぬすんでいきました。 エッコラエッコラと じぶんのうちに はこんで いったのです。 ドロボウは おもい にもつを かついできたので、 ふうふうと あせを かきました。

「 ちょうど いい。 おい! センプウキ。 しっかり まわって かぜを おくれ。 ぬすんできたからには もうおれの もの だからなあ。 」

センプウキは しかたなく ねそべったまま くるくる ハネを まわしました。

「 おいおい。 なんと いう しつけの わるい センプウキだ。 ねたままで いくら まわっても ちっとも すずしくない。 」

「 ぼくは ながらく たってばかりいたんだ。 」 と、 センプウキが ねころんだまま いいました。 「 きょうぐらいは よこに ならせて もらうぜ。 ぼくは おきゃくさんじゃないか。 」

「 だれが おきゃくさんだ。 おれは ドロボウだぞ。 おまえなんかが おきゃくなものか。 こんな やくにたたない やつは、 とっとと ほうりだしてやる! 」

そう いって、 とぐちから センプウキを おもてどおりに なげすてました。 じめんに たたきつけられながらセンプウキは、 くびを かしげて、 こわれないように じっとがまんしました。

「 さて、 もう ねようか。 きょうの かせぎは フトンだけ だったなあ。 」

ドロボウは おおきな あくびをしながら フトンに くるまろうと しました。 ところが フトンは へやの まんなかに つったったままで います。

「 おいおい、 じょうだんは よせ。 フトンが たっていて どうするんだ。 おれは、 ひとはたらきしてきて つかれてるんだぞ。 さっさと よこに ならないか。 」

「 わたしは ながらく ねてばかり いたんだよ。 」 と フトンが たったまま いいました。 「 こんやぐらいは このままで すごさして もらいたいね。 たまには あんたも たったまま ねればいいじゃないか。 」

「 ばか いえ! やくたたずの フトンなんか さっさと でていけ! 」

おこって、 ドロウボウは フトンを おもてどおりに なげすてました。

そこへ ちょうど ごみやさんの トラックが とおりかかって、 センプウキと フトンを にだいに のせると、 エンジンを ふかせて しゅっぱつしました。 とちゅう、 すんでいた いえの まえに きたとき、 フトンと センプウキが こえを そろえて、

「 いまだ! とびおりよう! 」

と さけびました。 ふとんが さきに とびおりて、 そのうえに センプウキも とびおりました。

ものおとを ききつけて いえから ニンゲンが でてきて、

「 こんなとこに ぬすまれた フトンと センプウキが おちてるよ。 どじな ドロボウだなあ。 」

と あきれながら うちの なかへ はこびこみました。

フトンは すっかり つかれて、 へやの まんなかに どたんと ねっころがりました。

「 わたしには やっぱり これが にあいだよ。 よこになるのが いちばん ラクチンだ。 」

センプウキも、 へやの すみに たって、

「 やれやれ、 すっかり あせを かいてしまった。 」

そう いって、 はねを ブルンブルンと まわしました。

「 ぼくは これからも ずっと たってることにしよう。」

 おしまい・・

    

 

第7回 キネンしゃしん

    

きのうは たっぷり あめが ふったので、 もりじゅうが みどりいろの パンのように ふっくらと ふくれあがりました。

そして、 きょうは うってかわっての いい おてんきです。 もりの このはも、 くさのはも、 きのうの あめで あらわれて、 そこへ ひかりが さすと、 それはそれは きれいな エメラルドいろに かがやいています。せんねんもりの、 せんいっかいめの おたんじょうびなのです。

そこで、ヤギの おじいさんが よっこらしょと カメラを かついできて、 のっぱらに さんきゃくを たて、 キネンしゃしんを とることに なりました。

もりの なかほどを おがわが ながれていて、 どうぶつたちは これを さかいに 「 つよいいもん 」 と 「 よわいもん 」に すみわけて おりました。 「 つよいぞもり 」「 よわいなもり 」 と、 それぞれを よんでいたのです。 つよいぞもりには、 トラや ライオン ゾウに クマ サイ ゴリラ ハゲタカに オオカミが すんでいて、 よわいなもりには、 ウサギ ロバ キリン ネズミに ヒツジ イヌと ネコ ことりたちが すんでいるのです。

「 つよいぞもりの れんちゅうから しゃしんを とることに するから、 もりの そとへ でてきて ならんだ ならんだ! 」

と、 ヤギじいさんが こえをふるわして よばわりました。 そこで、 つよいぞもりから、 トラや ライオン ゾウに クマ サイ ゴリラ ハゲタカに オオカミが、 ぞろぞろ かたを いからせて でてきて、 カメラの まえに ならびました。 そこへ ひょこひょこ、おがわに かかる まるたばしを キツネが わたってきて、 れつのうしろから せのびをしました。

「 ぼくは やっぱり こちらが おにあいだ。 」

「 おや? キツネくんは いつのまに つよいぞもりの じゅうにんに なったんだ? 」

と オオカミが ききました。

「 オオカミくん。 きみが つよくて ぼくが よわいと だれがきめたんだ。 」

「 でも、 きみは たいてい よわいなもりで くらしてるじゃないか。 」

なるほど、 いわれてみれば と、 キツネは みんなの うしろで みを ちぢめました。

「 じゃあ、 いいね。 チーズ! 」

と、 シャッターが きられ、

「 つぎは、 よわいなもりの みんな。 ならんでくださいよ。 」

ヤギじいさんが、 こえを ふるわしました。 そこで、 わいなもりから、 ウサギ ロバ キリン ネズミに ヒツジ イヌと ネコ ことりたちが、 なごやかに でてきて カメラの まえに てをつないで ならびました。 そこへ、 すごすごと キツネが まるたばしを わたって やってきました。

「 ぼくは やっぱり こちらが すみやすい。 」

「 おや? 」 と イヌが いいました。 「 キツネさんは いつも ぼくは つよいぞむらの じゅうにんだと いってなかった? 」

しかたなく キツネは みんなの うしろで みを ちぢめてしまいました。

「 じゃあ、みんな にこにこして! 」

とうとう、 どちらの キネンしゃしんにも キツネは うつららなかったのです。

「 ああ・・・。 」 と キツネは ためいきしました。 「 つよくも よわくもない ぼくのようなのは、 けっきょく ともだちが ひとりもいない。 」

おひさまは、 いつのまにか そらの まんなかあたりに のぼってきていました。 せんいちねん と はんにちまえから、 ずつと かわわらず みんなを ぽかぽかと あたためながら・・・。

「 キツネくん。 ここへ おいでよ。 わしと いっしょに しゃしんを とろう。 」

と、 ヤギの おじいさんが いいました。

「 考えてみれば、 ひとの シャシンを とっていた おかげで、 わしも まだ どこにも うつってなかったものなあ。 」

「 わたしが シャッターを おしてあげる! 」

こりすが じょうずに さんきゃくを よじのぼって カメラの シャツターを おしてくれました。

 

 

第8回 しっぽやさん

 

ちかごろ、 かわった おみせが ふえてきて、 まちに 「しっぽやさん」が あらわれました。

みんな おしりの シッポまで おしゃれになって、 じぶんの すきな シッポを かって つけかえるように なったのです。

キリンさんが やってきました。

「 わたしは こんなに せがたかいくせに、 シッポが みじかいの。 なにか いい シッポは ありませんか? 」

「 それじゃあ きのう しいれたばかりの ウマの シッポは いかがですか。 」

シカの シッポやさんが、 ツノで、 かべに かかった ふさふさした ウマの シッポを ひっかけてきて、キリンに みせました。

「 これが いいわ。 じあ いただいて かえります。 」

じぶんの シッポと とりかえると、 キリンさんは ウマの シッポを つけて ほくほくがおで かえっていきました。

「 こんにちは! 」

ぴょんぴょん とびはねながら リスちゃんが やってきました。

「 わたしって、 きのうえに かけあがったり しなくちゃならないのに、 シッポが バカでかいでしょう。 もうすこし かるくて ちいさなのが いいんだけど・・・」

「 そうですねえ 」 と シカさんが いいました。 「 ネズミの シッポなんぞ いかがですか? 」

「 なるほど、 かるくて ちいさいけど、 ネズミのシッポは わたしの シュミに あわないわ。 もっと なにか かんがえてよ。 」

「 それでは ウサギの シッポなぞ・・・ 」

「 あっ! これ かわいい。 これにきめた! 」

リスちゃんは、 じぶんの シッポを カウンターに おくと、 ウサギの けいとだまのような シッポを、 おしりに くっつけて かるがると かけていきました。

つぎに ニンゲンの おんなのこが やってきました。

「 わたし ミカちゃんていうの。 はじめまして。 わたしにも シッポを うってもらえるの? 」

「 それはもう おはなししだいで・・・ 」

「 わたし、 キツネのシッポが ほしいの。 あるかしら? 」

「 ええ、 ええ、 ございますとも。 きのう しいれたばかりの、 ぎんギツネの シッポが ここに・・・ 」

シカの シッポやさんが、 ツノで、 いちばん たかい たなから、 あたたかそうな ぎんいろの シッポを だいじそうに おろしてきました。

「 まあ! すてきな シッポだわ! 」

おんなのこは かがみに むかって、 じぶんの おしりに スカートの うえから キツネの シッポを あてがってみました。

「 どうかしら? 」

「 よく おにあいですよ。 」

「 じあ、これ ください! 」

「 それは いいけど、 おじょうさん。 」 と シカが いいました。 「 シッポは スカートの うえからは できませんよ。 スカートも、 パンツも ぬがなくっちゃ。 」

「 ええ? そんなことできないわ! だって わたしは ニンゲンの おんなのこだもの。 」

「 それじゃ しかたがない。 キツネの シッポは あきらめて おうちに おかえりなさい。 」

おんなのこは、 はずかしそうに すごすごと みせを でていきました。

シッポやの シカさんが うでぐみをして、

「 やれやれ・・・ニンゲンって ふべんな イキモノだなあ。 」

と いいました。

 おしまい・・

 

 

第9回 てんしくん

 

てんしくん という なの おとこのこが いました。なぜ てんしくんと いうかと いうと、 てんしくんは そらがとべたのです。

でも、 まいあさ ようちえんに いくときには あるいていきました。 どうしてかと いうと、 おとなりの サヤカちゃんが いつも さそいに くるからです。 サヤカちゃんは そらがとべなかったのです。 ふたりは とっても なかよしでした。 だから てんしくんは、 サヤカちゃんと てを つないで あるいて ようちえんに いくことに しているのです。

あきの よい おてんきには、 うんどうかいが あります。 てんしくんは、 ジシンがありました。 どうしてかと いいますと、 みんなが はしるとき てんしくんは クウチュウを とんでいけば だれよりも はやく ゴールできる はずでした。 ところが、 れんしゅうの とき なかじま せんせいが いったのです。

「 てんしくん。 わかってるわね。 あなたも はしるのよ。 とんだりしたら シッカクだから。 」

「 シッカク、 って なんのこと? 」

「 シッカクて いうのはね、 たとえ イチバンでも、 ビリになること。 」

「 へえ!どうして? 」

てんしくんは すっかり めんくらいました。

「 どうしても こうしてもないわ。 みんな おなじように はしらなきゃ キョウソウに ならないじゃない。 」

なかじま せんせいが、 きっぱりと いいました。 てんしくんは、 はしるのは どちらかといえば ニガテだったのです。

おうちに かえっても てんしくんは げんきがありません。 きのうまで まちどおしかった うんどうかいが、 もう こなければ いいと おもうように なりました。

おかあさんが つくってくれた だいすきな ドーナツも、 きょうは たべたくなくなり、 うらぐちから、 だれにも みられないで こっそりと そらに とびあがりました。 そして、 かわらの ほうに とんでいきました。 かわらの ほとりに おおきな カツラのきが たっておりました。 その えだに とんでいって、 こしをかけました。 そこへ モズが やってきて、 てんしくんの そばに とまりました。

「 チッ、チッ、どうしたの? 」

モズが さえずりました。

「 ぼくは とべば だれよりも はやいんだ 」

てんしくんが くらいかおで いいました。

「 ところが、 なかじま せんせいは とんでは だめ、 はしりなさい、 と いうんだもん。 ぼくは はしるのは だめなんだ。 」

「 チッ、チッ。 てんしくん。 そんなに とぶことを ジマンするなら、 わたしと とびっこしてみる? 」

「 そ、それは むりだよ。 だって、 きみは  とりじやないか! 」

「 そうよ。 とぶったって、 だれにでも かてるとは かぎらないわ。 わたしだって、 天使くんと かけっこしたら まけるに きまってる。 それでも、 かけっこの ときは、 みんなが かけなきゃ。 そうでしょ? チッ、チッ・・・」

カツラの はっぱは、 みんな かわいい ハートの かたちを しています。

 

ようちえんの うんどうかいは きもちのいい ニッポンばれでした。 てんしくんは、 いっしょけんめい はしりました。 おかあさんが、

「 がんばれ、 てんしくん! 」

と、 てを たたいて おうえんしてくれているのが みえました。 となりの サヤカちゃんも ニコニコ えがおで 手をたたいてくれました。

 ・・おしまい・・

 

 

第10回 アリさんのパーテー

 

ニンゲンの おうちの ひとたちは、 きょうは あさから みんなで おでかけです。 いそいで あさごはんを たべたので、 テーブルクロスに、パンくず こなザトウ カキタマ やさいくず なんかが こぼれて、 それを おかあさんが おおあわてで テーブルクロスごと もっていって、 ニワに はたきすてました。

「 さあ みんな よういはいい? 」

と、 ピクニックの いでたちで くるまで でかけていきました。

しずかになった にわに、 アリさんが いっぴき でてきました。 つぎに アリさんの おともだちも やってきました。 それから また、 おともだちの おともだちも つづきました。 そのうちの いっぴきが、 ハシラを つたって おうちに はいっていって、 おへやを ひとまわりすると、 エンガワから また ハシラを つたって にわに もどってきました。 さいしょに であった アリさんに、 ひとこと ふたこと、なにか はなしたようです。たぶん、

「 しめしめ、 ニンゲンたちは るすのようだぜ。 」

と いったのでしょう。 それを きいた アリさんは、 また ほかの ともだちに そのことを つたえました。 つぎつぎに つたわっていき、 アリの スまで つたわると、 やがて みんなの ようすが きゅうに はれやかに なりました。

それから、 ニンゲンの だれもが まだ おめにかかったことのない たのしい できごとが はじまったのです。 アリの スから ぞくぞくと アリさんたちが、でてまいりました。 よくよく みると、ちっちゃな しろいテーブルを かかえているでは ありませんか。 べつな アリさんは あかいイスを かかえています。 いくつも いくつも テーブルと イスを にわの まんなかに はこんでいきます。 ヤタイを ひっぱっているのも いました。 かたすみには、 きいろいテントも はられました。 ニンゲンが にわに すてていった やさいくずや カキタマで おりょうりを つくりはじめました。 さとういりの コーヒーも テーブルに くばられました。 パンと オムレツの みごとな おしょくじです。 ただ、 みわたすだけでは アリさんたちが むらがっているとしか みえないけれど、 ちかくに よってみると それはそれは すばらしく たのしそうな アリさんたちの パーテーが はじまっているのです。 ガクタイも そろっていました。 オンガクに あわせて ダンスも おどっています。うたも うたっています・・・

 

ゆうがた、ニンゲンの おかあさんや こどもたちが かえってきました。 おかあさんが エンガワから ニワサキを みると、 アリさんが、じぶんたちの あなのほうへ つらなって かえっていくところでした。 しろいものや、 あかいものや、 きいろいものを、 それぞれ かかえて、 えっちらおっちら いそいでいました。 ニンゲンの おかあさんには、 パンくず こなザトウ カキタマ やさいくずなんかを はこんでいるとしか みえないのです。

・・おしまい・・