童話集5

 

 

 

 

 

 

 

 

かわむらあきら創作童話集

(第5集)

 

41回 どんまるの せかいりょこう

 

かたいなかの どてやまの すそに、 あおい こなを とかしたような あおこいけが ありました。 そこに 「どんまる」 と いう なまえの どろガメが 1ぴき すんで おりました。 ちかくの おひゃくしょうの うちで みずを はこぶ しごとをして くらしていた のです。 まいあさ、 どてやまの ちかくの おがわ まで でかけていって、 おけに 1ぱいの みずを くみ、 せなかに のせて かえってくる のです。 1ぱい くんで くるごとに おひゃくしょうが 1さら ごはんを わけて くれました。 もう 10ねんも おなじことを やって くらして いるのです。 あるひ、 おひゃくしょうが こう いいました。

「 どんまる。 おめえは いつまで たっても のろまだなあ。 もう すこし はやく はこんで かえれねえのかい。 せっかくの つめたくて おいしい おがわの みずが、 いえに ついたら おゆの ように あたたまって しまっている じゃねえか。 」

「 すみません・・・ 」 

「 この 10ねん、 まいにち おまえに たべものを めぐんで やって きたんだ。 それは もう いちどに もったら むこうの どてやまと おなじ くらい もりあがるほど たくさんだぞ。 」

「 はい・・・ 」

「 あしたからは みずは つめたいまま くんでこい。 いいか。 そうでないと もう ごはんは やらねえから! 」

「 ええ! そんな! 」

「 もんくが あるなら しごとは してもらわなくとも けっこうだ。 」

「 ・・・わかりました。 」

どろガメの どんまるは、 しおしおと あおこいけに かえりました。 

あくるあさ、 どんまるは はやく おきて、 おがわに みずを くみに でかけました。 しごとを しないと ごはんを もらえなかったから です。 いつもどおりに おけに みずを いっぱい くんで せなかに のせると、

「 しかられないように きょうは かけていこう。 そうでないと いえに つく まえに つめたい みずが おゆに なってしまうものなあ。 」

どんまるは いっしょうけんめい はしりました。 でも、 どんまるは ウサギでは ありません。 いそぐほどに せなかの おけが ゆらゆら ゆらいで、 ぽちゃぽちゃ みずが こぼれます。 いきを きらせて やっとのこと おひゃくしょうの いえに たどりつきました。

「 なんだ、 みずが はんぶんしか はいってねえぞ。 しかも つめてえとは とても いえねえ。 」     

そして、 おさらに はんぶんだけ のこりごはんを いれてくれて、

「 かえった、 かえった。 」

と おいかえしました。

つぎの あさ、 どんまるは もっと はやく おきだして おがわに いきました。 みずを おけ いっぱいに くんで せなかに のせると、 あしの つけねが ちぎれるほどに せいいっぱい はしりました。 おひゃくしょうの いえに ついたとき には、 かおは まっさお、 いきたえだえで じめんに へたりこんでしまいました。

「 おいおい おらを ばかにしてるな? 」

おひゃくしょうが どなりました。

「 おけに なにを くんできたんだ。 ひとしずくも みずが はいってねえぞ。 どこで ひっくりかえして しまったんだ? 」

「 つい いそいだもんで・・・ 」

どんまるが あやまっても、 おひゃくしょうは ゆるして くれません。

「 もう たのまない。 あしたからは けっこうだ。 」

「 でも ごはんが・・・ 」

「 この きたねえ さらは おめえに やるから とっとと きえろ! 」

どんまるは、 からっぽの おさらを せなかに あおこいけに  もどってきました。 ちからなく みずの なかに もぐりこもうと したとき です。 せなかの おさらが しずまずに、 いけに ういている のです。

「 おや? どうして しずまないのだろう? 」

からっぽの おさらを みると、 ますます おなかが へってくるので、 どんまるが うえに のって いけに しずめてしまおうと しました。 ところが、 そのとたん・・・ どんまるを のせたまま おさらが、 あら ふしぎ、 くうちゅうに うかびあががったでは ありませんか! びっくりぎょうてん、 どんまるは おさらの ふちに しがみつきました。 すると、 おさらが くちを ききました。

「 だいじょうぶ、 どんまるさま。 あなたを ふりおとしたり いたしません。 いきたいところを いってください。 おつれしましょう。 」

「 ああ、 すばらしい! じゃあ むらを いっしゅうしておくれ。 」

「 たやすいことです。 」

おさらは どんまるを のせて、 よくはれた むらの すみから すみまで トビの ように とびまわりました。

それを したから おひゃくしょうが みつけました。

「 おや? どんまるじやないか。 おい おりてこい。 その おさらは おらのだぞお! 」

「 さよなら! ぼくは これから せかいりょこうに いってきます! 」

どんまるが おひゃくしょうに むかって そらから さけびました。

さて、 どんまるは そのあと どうなったか というと、 せかいじゅうの サーカスに やとわれて、 「 おおがねもち 」になりました。 いまは たしか、 どこかの くにの どこかの まちで、 のんきに くらしているらしい ですよ。

  

 

42回 うそつき きつね 

 

あるひ、もぐらが きつねの うちの ゆかから はいあがってきました。

「 やあ きつねさん、 ごめん ごめん。 こんなとこに きみの うちが あるとは きがつかなかったんだ。 すぐ でていくから・・・ 」

「 いいんだよ もぐらくん。 ようこそ。 それより つちの なかを やってきて、 どろだらけ じゃないか。 ぼくの うちの おふろは さいこうだぜ。 はいっていかないか? 」

きつねが さそいました。

「 はいりたいんだけど、 ぼくは うまれつき あかるい とこが にがて でねえ。 」

「 そんなことなら しんぱいないさ。 おふろばの でんきを ぜんぶ けしておけば いい。 さあ はいった はいった! 」

それで もぐらは おふろに はいりました。 そこは フライパンだったので、 たちまち もぐらは ハンバーグに なりました。

あるあさ、 こんどは にわとりが やってきました。

「 おや、 にわとりさん じゃないか。 ごきげん いかが? 」

「 あれれ。 いつのまに きつねさん とこの にわに おじゃまして しまったのかしら。 みみずを つっつくのに むちゅうに なっている うちに うっかり はいってきて しまったんだわ。 ごめんなさい。 じゃあ さようなら。 」

「 あわてることは ないさ。 すきなだけ みみずを ほりだして いけばいい。 ところで、 にわとりさん。 はねが あさつゆで びしょびしょ じゃないか。 ぼくの うちで おふろに はいって いかないかい。 」

「 ありがとう。 じゃ、 おじゃまついでに はいらせて いただこうかしら。 」

「 さあ どうぞ どうぞ! えんりょは いらないよ。 」

そこで、 にわとりが おふろに とんで はいりました。 そこは おなべの なか だったのです。 きつねが いそいで ふたを したので、 にわとりは なべの なかで スープに なりました。

ひるさがり。 きつねの うちの まえに たこが 1ぴき ぐったりして いました。

「 いったい ぜんたい どうしたんだい、 たこくん。 こんな やますそに、 うみの たこが いるなんて! 」

「 さかなやさんに はこんで こられて、 とちゅう トラックから ふりおとされて しまったんですよ。 」

「 それは きのどくに。 さぞかし びっくりしたんだろう。 すみで かおが まっくろ じゃないか。 さあさあ わたしの うちの おふろに でも はいって ゆっくり おやすみよ。 いずれ うみへ つれもどして あげるから。 」

「 どうも ごしんせつに。 じあ おことばに あまえて おふろに はいらせて もらいましょう。 」

つぼの なかには にえたった おスが いっぱい はいっていたので、 たちまち たこの あたまも あしも スダコに なりました。

ある ゆうがた のこと。 きつねは ゆうごはんは おうどんがいいと おもいつきました。 だいすきな おうどんを いちど しぬほど たべてみたいと かんがえたのです。 そこで、 おふろに ゆを わかして こぶと にぼしで だしを とり、 10にんぶんの うどんたまと きざみネギを ほおりこみました。 そこへ たぬきが きつねを たずねて やってきました。

「 こんばんは。 なんだか いい においが するじゃないか。 」

「 これは いいとこに きたもんだ。 おうどんを ごちそうするから そのまえに おふろにでも はいって まってておくれ。 すぐ にえるから。 」

「 それは ごしんせつさま。 でも わしは 1ばんぶろが にがて なんだ。 きみから まず はいって おくれよ。 わしは 2ばんめで いいから。 」

「 そうかい。 じあ さきに はいるかな・・・ 」

きつねは たぬきうどんが たべられる という うれしさに いそいで じぶんが まっさきに うどんの おふろに つかってしまいました。 そこで、 おいしい きつねうどんが たっぷり できあがって しまったという おはなし・・・。

 

43回 ふしぎな おはな

 

おんなのこが こうつうじこで しんでしまいました。 おんなのこの、おかあさんは かなしくて まいにち まいにち ないて くらして おりました。

おとうさんも しごとに でかける きにも なれなくて、 うちに いて にわで おはないじりを して まいにちを すごして おりました。 いろいろの うえきばちには さまざまな いろの きれいな はなが さいていたり、 さきかけていたり しました。

あるひ、 うえきばちの ひとつに しぼんだ きみょうな はなを おとうさんが みつけました。 どうして きみょうかと いいますと、 その はなが さいた ところを まだ おとうさんは みたことが なかったのに、 すでに しぼんで いたからです。 おはなは どれも さいてから しぼむのですから、 それが ふしぎだった のです。 そこで おとうさんは、 これは きっと ひとが ねている あいだに さいて、 おきだすと しぼむのに ちがいないと かんがえました。

よなかに、 おとうさんは こっそり おきだして にわに でてみました。 すると、 なんとまあ ふしぎな ことでしょう。 まっくらな にわの まんなかの あの うえきばちが ぼーっと ほたるの ような ひかりに てらしだされている ではありませんか。

「 かあさん! 」

と、 おんなのこの おとうさんが おくのまに ねている おかあさんを よびおこしました。

「 ちょっと きてごらんよ。 」

「 どうしたの? 」

おかあさんが めを こすりながりら えんがわに やってきました。

「 みてごらん。 」

おかあさんは もう いちど めを こすりました。

「 どうしたのよ、 あれは! 」

「 はなだよ。 ひかる はなだよ。 」

それは、 ゆりの ような かたちを していました。 おとうさんと おかあさんは ながい じかん、 えんがわから くらやみに ぼんやり かがやく はなを みつめて いました。 でも ふたりとも、 にわに おりて まじかに みようとは おもいませんでした。

「 あれは むすめだよ。 」

「 そうね・・・むすめだわ。 」

あくるあさ、 おとうさんが にわに でてみると、 ひかりの はなは すっかり しぼんで おりました。

やがて、 おとうさんと おかあさんは、 ひるまは ねている ひが おおく なりました。 よるに なると おきだして えんがわに いすを ならべだすのです。 ふたりして よるの あいだ ふしぎな ひかりの はなを ながめるのが たった たのしみに なりました。

だから、 ほかの はなは かわいそうに うえきばちの なかで ひとつのこらず かれて しまいました。 そんな ひが いくにちも つづきました。

あるよ、 いつもの ように ひかりの はなを ながめて すごすうちに、 ふたりとも うとうとと いすに もたれて いねむりして いました。 そして、 あさに なりました。 たった ひとつ のこっていた ふしぎな うえきばちに、 いまは なにも ないのです。 しぼんだ はなさえ のこってなくて、 ただの つちくれ だけが ありました。

「 ・・・ゆめだった のだろうか? 」

ふたりは にわに おりて、 にわじゅうを さがしまわりました。すると、 かたすみに あさつゆを ふくんだ ちいさな むらさきいろの かたばみの はなが みつかりました。 それは、 いましも さしこんできた あさひを あびて、 はずかしそうに ほほえんで いました。

「 これは むすめの うまれかわり だわ。 」

おかあさんが おとうさんを えがおで ふりかえりました。

 

44回 きれの まほうつかい

しこちゃんの おかあさんの おかあさんは、 よしこちゃんの おばあさんです。 その おばあさんが ずっとまえ よしこちゃんに いいました。

「 これはねえ、 わたしの おかあさん・・・よしこの ひいおばあさんが いきていらしたころ、 いろんな ぼろぎれを ためておいたんだよ。 それが こんなに たくさんになって、 それでも だいぶ すてはしたんだけど、 この ふろしきづつみ ひとつだけ のこってしまったのが これなんだよ・・・ 」

きょねん、 よしこちゃんの おばあさんは びょうきで なくなりました。

よしこちゃんの ひいおばあさんが のこした ぼろぎれの ふろしきづつみを、 よしこちゃんの おかあさんが おしいれから だしてきました。

「 これは もう すてましょう。 いろが かわってしまって、 きじも よわっているわ。 つかいものに ならないもの。 」

あるあさ、 おかあさんは ごみぶくろと いっしょに、 きれのつまった ふろしきづつみを おもてに ほうりだしました。 けさは トラックが ごみを あつめに やってくる ひ だったのです。 よしこちゃんは なんだか かなしくなって、 とぐちに でて、 トラックの やってくるのを いつのことかと まっておりました。

そこへ、 しらない いままで みたことのない おばあさんが とおりかかりました。 よしこちゃんの いえの まえまで きて、

「 ああ これだ これだ。 こんな とこに あったのか。 よかった よかった。 」

と いって、 きれを つつんだ ふろしきづつみを かたてに ひっさげて すたすたと いってしまいました。 よしこちゃんは きになって、 いそいで じぶんも おばあさんの あとから ついていきました。 ふろしきづつみを かかえた おばあさんは、 ちかくの こうえんまで あるいていって、 ふんすいの そばの ベンチに 「 よっこらしょ。 」と、 すわりました。 おばあさんの ちかくで、 よしこちゃんは たちどまり、 おばあさんの ひざの うえの ふろしきづつみを じっと みつめていました。 おばあさんは ふろしきづつみの むすびめを といて、 なかの ぼろぎれを かきまわしはじめました。 そして、 やがて よしこちゃんの ほうに かおを あげて いいました。

「 どこのこ だね? いいこ だね。 なにか ほしいものは ないかい。 なんでも この きれの なかから だしてあげるよ。 」

「 へえ? その きれの たばから なんでも ほしいものが でてくるの? うそでしょう! でも わたし おかあさんに いわれてるの。 しらない ひとに ものを もらっては いけないって。 」

「 なにも あげようってのじゃない。 でるとこを みせてあげようって いってるんだよ。 」

「 それなら たとえば ことりさんが いいな。 」

「 ことりかえ? じあ みててごらん、 そんなの かんたんだから・・・ 」

おばあさんは きれの たばを くしゃくしゃに もみながら、 その まんなかから ことりを つかみだしてきました。

「 コマドリだよ。 さあ どこへでも すきなとこへ とんでおいき! 」

おばあさんの てのひらから、 あかい くびの ことりは、 すぐに はねを はばたかせて きの えだに とんでいきました。

「 わあっ、すごい! 」

「 つぎは? 」

「 じあ、こいぬを だしてみて。 」

おばあさんが きれの あいだから、 みどりの リボンを くびに まいた こいぬを だしてきました。

「 まあ かわいい! 」

こいぬは すぐに おばあさんの ひざから とびおりて しばふの ほうへ はしっていきました。 おばあさんの まわりに すこしずつ ひとがきが できてきました。

「 ねえ、おばあさん・・・ 」

と、 しらない おとこのひとが いいました。

「 ひょっとして、 あんたは まほうつかいかい? じあ、 ひとつ おねがいが あるんだ。 わたしに 1けん うちを たてておくれよ。 」

すると、 こうえんの かたすみに あおい やねの おうちがあらわれました。

「 ありがとう おばあさん。 こんなのが ほしかったんだ。 」

よろこんで おとこのひとは、 あおい やねの おうちに かけこんでいきました。

「 わたしにも ください。 ピンクの ドレスがいいわ。 」

しらない おんなのひとが いいました。 すると たちまち、 おんなのひとは ピンクの ドレスを まとって たっていました。

「 わあ、すてき! ありがとう、 おばあさん! 」

こんどは おとこのこが おばあさんに いいました。

「 ねえ おばあさん! ぼくに とうきょうタワーを だしてください。 」

すると、 こうえんの まんなかに、 それは それは せのたかい とうきょうタワーが そびえたちました。 こんどは みんなが いっせいに おばあさんを とりかこんで、 くちぐちに さけびました。

「 おばあさん、 わたしたちに いっそ おかねを だしてください。 それが いちばん ほしいんです。 おかねが あれば なんでも かえるし、 いっしょう らくができるから! 」

すると、 きゅうに おばあさんは きれの つつみを かたずけだして てに さげると、 こうえんの でぐちに きえていきました。 あおい やねの おうちも、 あかい ドレスも、 とうきょうタワーも きえて、 もとの こうえんに もどっていました。 こいぬが いっぴきと、 ことりが 1わ、 たわむれている だけでした。

「 なんだ、ばかばかしい・・・ 」

あつまった ひとたちも ちりぢりに きえていき、 よしこちゃんだけが ベンチに すわって、 こいぬと ことりが あそぶのを ながめながら いいました。

「 おねがいだから、あんたたちは いつまでも きえないでいてね! 」

 

第45回 アリさん

 

なつの ゆうがた、 にんげんの おとうさんが かいしゃから かえってきました。おふろに はいって さっぱりしたので、 えんがわに パンツ ひとつで どっかりと すわりこみました。

そこへ アリさんが 1ぴき にわから あががってきて、 おとうさんの あしを のぼっていきます。 きの ねっこの ような あしの スネの ところの ホクロを みつけて、

「 こんばんの おかずに もってかえろう。 」

アリさんが ホクロを かかえこもうと しましたが それが なかなか もちあがりません。 しかたなく くちの ハで けずりとることに しました。

「 いたい! 」

おとうさんが さけびました。 そして アリを みつけました。

「 コンチクショウ! かあさん、 アリだ アリだ! なまいきにも アリが おれの あしに かみついたぞ。 」

そして、 アリさんが にげるより はやく、 ジャンボ ひこうきのような てのひらで ビシャッと じぶんの スネを たたきました。 アリさんは ペシャンコに つぶされて しんでしまいました。

また、 もう 1ぴき アリさんが やってきました。 こんどは おとうさんの おへその ところまで あがってきました。 おへその ゴマを みつけて、

「 こんばんの おかずに もってかえろう! 」

アリさんは ゴマを 1つぶ かかえて いそいで かえりじたくに かかりました。 そこへ ちょうど カが 1ぴき ぶーんと とんできて、 おとうさんの おなかに とまりました。

「 なんか チクチクするぞ・・・? あれ、 また アリの やつが こんどは おれの おヘソまで あがってきている。 なまいきな! 」

また ジャンボの ような てのひらで ぴしゃりと じぶんの おなかを たたきました。 カは はねが あるので、 チを すうだけ すって くるくるっと とんで にげていきましたが、 アリさんには はねが ないので、 またまた ぺしゃんこに つぶされて しんでしまいました。

「 おいおい かあさん! また こどもたちが ケーキの くずを こぼしたんじゃないの? しっかり しかって しつけなきゃあ。 ねえ 母さん。 」

と おとうさんが いいました。 それを きいて、 3びきめの アリが、 おとうさんの あしの さきに かみついて さっさと にげました。

「 いたい! ちくしょう! 」

 

第46回 おうさまの ばか

 

あるところに、ちいさな くにが ありました。 そこの おうさまは

どうしたことか 「 おうさまの バカ 」 と よばれていました。 たとえば こんなふうに・・・

「 いましがた まちに かいものに でかけたら、 ばしゃが とおりかかって、 おうさまの バカが まどから てを ふってたよ。」

おうさまの へいたいは みんなで 20人 いました。 あるひ、へいたいが おうさまの まえを とおりかかり、 おうさまが 19、 20、 と かぞえていくと、 21、 22、 23・・・へいたいは 20にん でなくて 23にん だったので、 おどいて けらいに、
「 これは いったい どうしたんだ! 」

と どなりました。

「 みんな ひゃくしょうより へいたいの ほうが カッコいいから、3にんも へいたいに なったのです。 」

と だいじんが こたえました。

「 そんな バカな! 」 それでも 「 まあよかろう。 」

と おうさまが ゆるしました。

「 じあ、 そのうちの ふたりを モンバンにしろ。 それから もう ひとりを ミハリにして みはらせておけ。 じぁ わしは これから ひるねを するからな。 」

と おうさまは ねまに いきました。

そこへ、 うらぐちから こそこそ どろぼうネズミが やってきました。 どうして どろぼうネズミと わったか というと、 ミハリが それを みていたから です。

「 どろぼうだ、 もんを しめろ! 」

と もんばんに しらせました。

その さわぎに おうさまが おきだして きました。 ミハリは おうさまに ほうこくしました。

「 おうさま どろぼうネズミが しのびこみました!」

「 どこに? 」

「 ほれ、 だいどころの ろうそく おきばです。 」

なるほど そこに ネズミが ろうそくを かかえて たちすくんでいました。

「 さっさと つかまえろ! 」

と おうさまが ミハリに めいれいしました。

「 わたくしには つかまえられません。 だって わたくしは ミハリですから。みはっているのが わたくしの やくめ です。 」

「 なるほど。 」

と おうさまは なっとくしました。

「 それでは ネズミよ。 おまえが じぶんで つかまえられるがいい。  わたしの めいれいだぞ。 」

「 これは せけんの いう とおり バカな おうさまだ。 」 ネズミは ひとりごとを いい、 にやっと わらって 「 そんな ことを すれば おうさま、 ソンを しますよ。 わたしが どうして ろうそくを かかえて いるか きかないのですか? 」

「 それも そうだな。 じゃあ、 どうして ろうそく なんかを もちだそうと したんだ? 」

「 おうさま、 これは たべると おいしいんですよ。 」

そう いって ネズミが ろうそくを かじって みせました。

おうさまは もともと くいしんぼう だったので、 いかにも おいしそうに みえました。

「 でも、 ろうそく なぞ たべたら・・・ 」 と おうさまが たずねました。 「 ろうそくが なくなって よるに なると ふべん だろう。 」

「 いえいえ おうさま! 」 ネズミの チュースケが こたえました。 「 くらくなったら わたしは じぶんの しっぽに ひを つけます。 すると、 たべた ろうそくが しっぽに にじみでて、 ひるの ように あかるく てらすんです。 」

「 なるほど! 」 と おうさまは なっとく しました。 「 でも わたしには しっぽが ないんだが・・・ 」

「 ごしんぱい むようです。 そんな ときは おしりの あなに やなぎの かれえだを つっこめば、りっぱに しっぽの かわりに なりますよ。 」

おうさまが かんしんしている あいだに、 どろぼうネズミの チュースケは ろうそくを かかえて にげていきました。

 

くいしんぼうの おうさまは のこった ろうそくの 1ぽんを ネズミに おそわったように かじって みました。

「 なかなか うまいもんだ。 」

おうさまは あさに ばんに ろうそくを たべるように なりました。そのうち、 ろうそくが とぼしくなり、 よるに なって あかりに つかう ろうそくが なくなって きました。

おうさまは チューキチの ことばを おもいだして、 けらいに やなぎの かれえだを とってこさせ、 それを じぶんの おしりの あなに つっこみ、 けらいに ひを つけさせました。 しばらくは かれえだが もえて あたりが ひるの ように あかるく なりました。 それが やがて もえつきる ころ、 おうさまの おしりが こげだしました。

「 アチチチ! みずを かけてくれ! 」

けらいが あわてて だいどころの ヒシャクで みずを かけて、おうさまの おしりの ひを けしとめました。すると あたりが くらくなり、 おうさまの すすりなき だけが きこえてきました。 

 

ちかごろでは ネズミの せかいに まで 「 おうさまの バカ 」 という ことばが はやっています。 ・・・やれやれ

 

 

第47回 おさかなうりと どろぼう

  

おさかなを うっている おじさんが ひとりで すんでいました。おじさんは おさかなを うって くらしていたので すこしずつ おかねが たまってきたのです。 もう さいふから はみだしそうに なり、 あまった おかねを ジャムの あきびんに いれることにしました。 そのうち ジャムの あきびんが おかねで いっぱいに なりました。 それで、 こんどは マーマレードの あきびんに いれることにしました。 マーマレードのあきびんの つぎは のりの つくだにの あきびんに いれました。 その つぎは ふりかけの あきびん。おじいさんは まちに でかけて あきびんが すててあったら それを ひろつて かえってきました。 どんどん、おかねの つまった あきびんが たまってきました。

まちに どろぼうが おりました。 どろぼうは はいりやすい うちを さがして、 ひとの ものを ぬすんで くらしていました。 あるひ さかなうりの おじさんの うちが とっても はいりやすかったので、 おじさんが まちに さかなを うりに でかけている あいだに、 だまって はいり、 うちの なかを ひとわたり ながめて みました。 テレビも でんわも なく、 ちいさな ふるびた つくえと ぼろの たんすが ありました。 たんすの なかみは きたない うわぎと ズボンが ひとつずつ、 おしいれには ふとんが ひとりぶん はいっていました。

「 なんだ、けちな うちだなあ 」

たなに つかいふるしの あきびんが たくさん ならんでいました。 その なかみは 10円だまや ときどき 100円だまが いっぱい つまっていました。

「 とりあえず これを もらって かえろう。 」

どろぼうは あきびんを 10ばかり ポケットに しまって こっそり かえりました。

おさかなうりの おじさんは さかなを うって いえに かえり、  もうけた おかねを、 みちすがら ひろってきた あきびんに いれました。 とくに じぶんの あきびんが ぜんぶで いくつ あるか かぞえたことは なかったのです。

あきびんが あたらしく 10 たまったころ また どろぼうが やってきて 10 ぬすんで かえりました。 だから あきびんは たまりもしなかったけれど、 へりもしなかったのです。

おさかなうりの おじさんも やがて としをとって、 しだいに おさかなうりの おじいさんに なりました。 いままで  10の あきびんに おかねが たまったのが 5つしか たまらなくなりました。 

ところで、 どろぼうも おなじように としを とりました。 いちどに 10この おかねの つまった あきびんを ぬすんでかえるのが つらくなって 5つに へらしました。 だから あいかわらず あきびんは たまりもしなかったけれど、 へりもしなかったのです。

つぎの つぎの とし、 とうとう おさかなうりの おじいさんが びょうきに なり、 おさかなを うりに でかけられなくなりました。 おかねも たまらなくなりました。 そこで どろぼうが びんを ぬすんでいくと どんどん へってきて、 のこりが ひとつに なりました。 さかなうりの おじいさんは しょくじを つくるのも できなくなり、ふとんに くるまって ひとりで ねて くらしていました。

あるひ、 としとった どろぼうが いつもどおりに こっそり はいってきて、 おじいさんの まくらもとに おにぎりを ひとつ おいて かえりました。 

あくるひ、 どろぼうが また やってきて、 おじいさんの まくらもとを みると きのうの おにぎりは ありません。 どろぼうは ほっとして もってきた あたらしい おにぎりを また だまって おじいさんの まくらもとに おいてかえりました。

こんなことが ずっと つづきました。 たなには たった ひとつ あきびんが まだのこっていました。

あるひ、 どろぼうが いつものように こっそりきて、 おじいさんの まくらもとに おにぎりを おいて かえろうとすると、 おじいさんが どろぼうを みつめていました。 そして、 たなに のこった あきびんを ゆびさして、 「 うん、 うん 」 と うなずきました。

どろぼうは はじめて こえに だして 「 ありがとう 」 と いい、 なみだを ぽろりと ながしました。 おさかなうりの おじ゜いさんも また ふとんの なかで なみだを ぽろりと こぼしました。

どろぼうが さいごの あきびんを もらって かえったので もう たなには あきびんは なくなりました。

  

 

第48回 ピョンタの おつかい

  

ピョンタは やまの しょうがっこうの 1ねんせい です。 ことし はじめて がっこうに あがったばかりです。 でも、 とっても げんきで  ぼうけん だいすきな うさぎっこ です。 

だから むこうまちの おばあさんちに ひとりで おつかいに でかけるのは わくわくするほど うれしかったのです。 おかあさん おてせいの くさもちを もって でかけました。 でしなに おかあさんが うしろから、

「 すこし とおまわりでも くねくねみちを とおって いくのですよ。 」

と ちゅういしました。

「 はーい! 」

でも ピョンタは おかあさんが みえなくなると すぐまっすぐに かけだしました。

のっぱらを すすんでいくと くさはらに あおい しまへびと あかい しまへびが おてんとうさまに てらされて うとうと ひるねを している ところに でくわしました。 いたずらずきの ピョンタは あかい しまへびの ほうに かがみこんで こう いいました。

「 あかへびくん。 あかへびくん。 あおへびくんが いま きみを のみこむ ゆめを みているよ。 」

あかい しまへびが びっくりして あかい かまくびを もちあげました。 こんどは あおい しまへびに かがみこんで、

「 あおへびくん あおへびくん! あかへびくんが きみを のみこもうと かまくびを もちあげているよ! 」

あおへびは めを さまして あたりを みわたしました。 すると めのまえに あかへびが かまくびを もたげて いまにも のみこもうと かまえています。 2ひきは とっくみあいに なって おたがいが おおきな くちを あけて かみあいを はじめました。 2ひきが 1ぽんの ながい つなのように なりました。 ピョンタは あかい しっぽと あおい しっぽを りょうてに もって なわとびを はじめました。 ピョンタは なわとびしながら のはらを かけぬけました。 

かわの ほとりで へびたちを はなしてやり、 さて かわを わたろうと しましたが、 はしが みあたりません。 かわぎしに キリンが くびを たれて みずを のんでいました。

「 キリンさん キリンさん、 むこうぎしに おいしそうな くさが 

いっぱい はえてるのが みえないの? 」

キリンは くびを むこうぎしに まで のばして、

「 なるほど、 しらなかった! ピョンタ ありがとう。 」

と くさを むさぼりはじめました。

「 おれいは いらないよ。 そのかわり ちょいと この ながい くびを わたらしてね。 」

キリンの くびを つたって ピョンタは かわを むこうぎしまで わたりました。

とつぜん あめが ふってきました。 ピョンタは ちいさな きの したに あまやどり しました。 ひどい あめです。 ちいさな きの わずかな はっぱでは あまつぶは ふせげません。 その きのえだに おおこおもりが 1ぴき さかさに ぶらさがって いました。 

「 おおこうもりさん。 この おおあめに かさも ささずに ぬれねずみ かい? 」

「 なにか いい かんがえでも あるのかね。 」

「 あるある。 いつも さかさに ぶらさがってばかりいずに ぼくの あたまの うえに まっすぐ たってごらんよ。 そして ちょっと その りっぱな はねを ひろげるんだよ。 」

「 なんだって できるさあ! 」

おおこうもりは ぷりぷりしながら ピョンタのあたまの うえに すっくと たち、 そのうえで おおきな りっぱな はねを ひろげて みせました。 

「 すごい すごい! それで いいんだよ。 」

ピョンタは おおこうもりの かさを かぶって どうくつまで あめに ぬれずに いきつきました。 

「 さよなら! おおこうもりさん。 きみの おうちも ここだろう。 」

「そうだよ。 ここで よるまで ぐっすり ねるんだ。 ピョンタ、 2どと おこさないでくれよ。 」

その どうくつを はしりぬけると そこは あめが やみ、 おひさまが わらっていました。 そして おばあさんの おうちも めのまえ でした。

おばあさんと いっしょに、おかあさんの つくってくれた くさもちを たべ、 いえに かえることにしました。 おばあさんが ピョンタの うしろから いいました。

「 すこし とおまわりでも くねくねみちを とおって いくのだよ。 」

「 はーい! 」

はしりだしながら ピョンタが げんきな こえで へんじしました。 

 

第49回 のっぽの くぬぎのき

  

おかの どまんなかに とても せの たかい くぬぎのきが 1ぽん はえて おりました。 みるからに じょうぶそうで きの しるも たくさん でて、 かぶとむしや かなぶんが よく きて、 おなか いっぱい しるを すって いくのです。 

あるひ かぶとむしが ききました。

「 くぬぎさんは いつから ここに たってるの? 」

「おまえの おとうさんの おとうさんの おとうさんの その おじいさんの ことを しってるよ。 」

と くぬぎのきが こたえました。

「 へえー! 」

こんどは かなぶんが ききました。

「わたしの おかあさんの こと しってる? 」

「 しってるさ。 おまえの おかあさんの おかあさんの おかあさんの その おばあさんの ことだって よく おぼえているよ。 みんな わたしの みきから あまい しるを すって そだったのだ。 」

くぬぎのきが もうしました。

「 へえー! 」

かなぶんが びっくりぎょうてん しました。

 

この おかの すそに しょうがつこうが ありました。 その せいとたちも ときどき せんせいに つれられて えんそくに やってきます。 こどもたちは くぬぎのきの まわりを まわって あそびまわり、 ひるに なると ねっこに こしかけて おおきな こかげの したで おべんとうを ひろげました。 おべんとうの あとで おんなのこは くぬぎの おちばを あつめて あそびました。 おとこのこは おちた かれえだを かたなにして けんじゅつごっこを しました。 

あきに なると くぬぎのみが ぱらぱらと おちてきて、 それを せいとたちが ひろいあつめて ままごとの ごはんに したり つまようじを つきさして こまを つくつたり しました。

こんなことは このこたちの おとうさんも おかあさんも、 その おじいさんも おばあさんも おなじことを やった おもいでが あるのです。くぬぎのきも まいど くりかえされる あそびを あきもせずに ながめておりました。

 

そうして なんねんも たちました。 くぬぎのきは そこで いくつも としを とりました。  

いつもどおりに はるが すぎ なつが すぎ あきが すぎ、 そして ふゆが やってきました。 それは さむい ふゆ でした。 かぜが ふきました。 それは すごい おおかぜで、 くぬぎの はっぱは ぜんぶ ちってしまって えだ だけが のこりました。 とばされた はっぱたちは かぜに まいながら かなしがっておりました。 ゆきが たくさん ふりました。 こんなに たくさん ゆきが ふったのは ひさしぶりです。 のつぽの くぬぎのきの ひざの あたりまで ゆきで うまってしまいました。 10日も たつと かたの ところまで ゆきが つもって、 ほそい えだから ふとい えだまで ぼきぼきと おれて みきから もがれました。 

もう だれも やってきません。 かぶとむしも かなぶんも、 こどもたちも せんせいも こなくなりました。 くぬぎのきは じぶんが だんだん ほそく なっていくようで こころぼそく、 なみだを ながしました。 

つぎの ばんにも ゆきは ふりつづき、 あさに なっても ふっていました。 そらは ずっと ゆきぞらで おひさまは もうなんにちも かおを だしません。 

のっぽで としとった くぬぎのきは いっしょうけんめい こらえましたが、 どんどん ねむけが おそって きました。 そして あたりが ぼおーっと うすあかるく なってきました。

 

やっと おひさまが くもの あいだに かおを のぞけました。 ゆきが やみ、 かぜも おさまりました。 いちめんの ゆきも しだいに とけて きえて いきました。

のっぽの としおいた くぬぎのきは ほそぼそと おかの うえに たっていました。

あるひ、 きこりの おじさんが やってきて、 

「 かわいそうに。 とうとう だめだったか。 としには かてないなあ。 」

と いいました。 くぬぎのきを のこぎりで きりたおしました。

574さいで くぬぎのきは いのちを おえました。

おかの うえの じめんを よくよく みると、 ざっそうに まじって めが そだっていました。 そう! くぬぎのみが じめんに おちて めを だしたのです。

 

おかの ふもとの しょうがっこうにも あたらしい せいとたちが げんきに あつまって いました。

 

 

第50回 ラッパせんせい

 

びんぼうな おじいさんが ひとりで すんでいました。 おじいさんの うちは おんぼろです。

あるひ、 すごい おおあめが ふり かみなりが なりました。 おじいさんは ちいさくなり ふとんを かぶって ふるえていました。 ふるえながら いくつ かみなりが なったか ゆびを おって かぞえていました。 それは 10ぽんの ゆびよりも もっと なったのです。 というのが おじいさんは 10いじょうの かずは かぞえられなかったのです。 そして なんかいめかの なんかいめかに おじいさんの ぼろやの やねへ かみなりさんが おちてきました。 みあげると てんじょうに おおきな あなが あいていました。 おどろいたことに その てんじょういたから だれかが のぞいていました。 あおい かおの かみなりさん でした。 こしに ラッパをぶらさげ せなかに たいこを せおつていたので まちがいありません。 おじいさんは たたみに ひっくりかえって、

「 たすけてえ! 」

と さけびました。 

「 たすけて ほしいのは こちらだよ。 」

かみなりさんが あおい かおを して いいました。

「 どうすりゃ いいんだ? 」

「 はしごを ひとつ かしておくれ。 おねがいだ。 」

「 いいとも。 」

おじいさんは なやに たてかけてある はしごを かついできました。

「 ありがとう! これで くもの うえに かえれる。 」

かみなりさんは おじいさんから はしごを うけとって、 それを そらの くもに むかって たてかけました。

「 じゃあ バイバイ。 おれいに これを やろう。 」

と こしに ぶらさげていた ラッパを おじ゜いさんに むかって ほうりなげ、 「 どんどろっ・・・ 」と せなかを ゆすりながら はしごを そらに むかって のぼっていきました。

「 どん からん からん ごっとん! 」

たたみに  きんいろの らっぱが おちていました。  おそるおそる おじいさんが それを ひろいあげ くちに あてて ふくと、 なんと ラッパの さきから おかねが 「 ぷっ! 」 と でてきました。

「 ぷっ、 ぷっ 」 と ふくと おかねが ぷっ ぷっ と でてきました。 びっくりぎょうてんした おじいさんは いそいで おかねを あつめて かぞえてみました。 せんえんさつが 10まいいじょう ありました。 ほんとうは 30まいも あったのです。

でも おじいさんは かなしかっさたのです。 あかちゃんの ときから おじいさんは ずっと びんぼうだったので がっこうにも いけなかったのです。 

「 わしは いちども べんきょうしたことが ないので よみかきが できない。 ゆびの かずより たくさん かぞえることも できない。 」

そう いいながら  おもわず ラッパを ふくと、 「 ぷっぷるぷー 」 なんと! つくえと いすが でてきました。

「 でも きょうかしょが ないなあ・・・ ぷっぷるぷー 」

すると さんすうと こくごの きょうかしょが つくえの うえに のっていました。

「 でも せんせいが いない こまった・・・ぷっぷるぷー 」

すると、 わかい おとこの せんせいが にこにこと めのまえに たっていました。

そこで おじいさんは べんきょうを はじめることに しました。

「 ひらかな 」 「 カタカナ 」 「 かんじ 」 も おぼえました。

「 たしざん 」 「 ひきざん 」 「 かけざん 」 「 わりざん 」 も おそわりました。

なんねんか たつと おじいさんは もっと おじいさんに なりましたが、 すっかり あたまが よくなり かしこく なりました。 

「 むらじゅうの ひとが もっと あたまが よくなり かしこくならなくっちゃ! 」

おじいさんは いっしょうけんめい ラッパを ふきました。 すると がっこうが でてきました。 ランドセルも でてきました。 えんぴつも けしごむも こくばんも せんせいも でてきました。 

それで おじいさんは こうちょうせんせいに なりました。 むらの ひとたちは おじいさんの ことを、 「 ラッパせんせい 」と よびました。

 

あるひ。 かみなりさんが なりました。 

「 かみなりさん! これで じゅうぶんだ。 もう なにも いらないから ラッパを かえします。 ありがとう。 」

すると らっぱが、 「 ぱっぱかぱー  ぱっぱかぱー! 」 と なりながら そらの かみなりさんにむかって かけあがって いきました。

おしまい・・・